仏教徒である私が、何故キング牧師に共感を覚えるかといえば、それはキング牧師がキリスト教的な価値観を超えて、東洋的な価値観、仏教的ともいえる思想で行動したと思えることからです。彼は「兄弟愛」を説いて、聖書によって人種差別を正当化しようとする勢力、暴力によって白人と対決しようとする勢力を説き伏せてきました。彼の伝記には、その両勢力から強い批判や中傷を受け、傷つきながら公民権運動のリーダーとして立ち続けていくキングが見えてきます。キリスト教の「牧師」ではなく、「宗教者」として素晴らしい、学ぶべき点がある、と思うのです。
宗教者が、その宗教を「表現する人」「体現すべき人」であるとすれば、その人の生き方、理想も迷いも全て含めて、宗教者の一生は、全て大きな意味を持っているでしょう。ある意味でキングは、誤解されていた、間違ってきた宗教解釈も、その一身をもって正し、改めよと説いた。その生き様に、やはり強く惹かれます。
私たちには「法は人によって弘まる」という教えがあります。どれだけ素晴らしい「教え」「法」でも、それは「人」を介して伝わり、弘まっていきます。どこまで行っても、この人間界でブッダの法を弘めるのは「人」だと教えられている。だから、御法を手にする「人」は、佛法を体現する者として生きられるように努めなければならないのだ、と。間違った教え、法を信じていても、それに関係する「人」が様々な要因から魅力的であれば広まってしまう可能性があります。逆に、正しい教え、法を信じていても、そこにいる者が教えを体現せずにいればどうか。私は、このキング牧師の生き方を見ていると、真実の仏教・本門佛立宗の僧侶として、「何をしている」「もっと精進せよ」と思えるのでした。
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