2009年10月19日月曜日

お袈裟について

 昨日は、照隆寺でのご奉公から戻ると、あるご家族が待ってくださっていた。なんと、7時間もかけて関西からお参詣くださったとのこと。本当に、有難かった。もちろん、お話しした内容はご信心のこと、いま置かれている状況から抜け出すための方法などについて。「感謝」と「いつか、恩返しを」という2つにフォーカスしてみよう、とお伝えした。

 東名高速で、往復14時間もかけて、日帰りで横浜の妙深寺までお参詣してくださったことに、計り知れない思いが込められていて、それにお応えできたか、どうか。笑顔で帰途につかれたことが嬉しかった。

 さて、先日来、ブログにコメントをいただいており、なかなかご返事を書かせていただくことが出来なかった。コメント欄に小さく返事する内容でもないので、ここで、あらためてご返事して、ご披露したいと思う。スリランカでの難民キャンプについての記事に対してコメントをいただいた。書き込んでいただいたコメントは下記の通り。
「最近長松お導師が以前スリランカの御奉公の際に規定から外れた型(色)のお袈裟を着ておられたという話を耳に挟みました。お袈裟の事はあまり詳しくないのですが、もしよろしければ事の真相を教えていただけないでしょうか?」
 以上のような内容だった。なかなかご返事できなかったのは、読んでみて、「?????」と思ったのも半分。そのようなことが話題になっているんだ。「耳に挟んだ」と書かれているので、話題になっているのだろう。そういうことに詳しい方もいて、スリランカご奉公などをご覧になっているのだろう。お袈裟の色についての話題は、ついぞ聞いたことがないので驚いた。「規定から外れた型(色)のお袈裟を着ておられたという話を耳に挟みました」とあるから、よく思っておられない方なのだと思うが。情けなく思いつつ、あまり気にしていなかったが、心外なのでご返事したいと思う。
 結論からお答えすれば、規定外のお袈裟など着けてご奉公したことはない。どこで、どういう話になっているのやら分からない。「耳に挟んだ方」は困惑して当然だが、どこで、どうしたら、そんな話になるのか分からない。
 国内の自坊でも、先住ご遷化後からずっと同じお袈裟、お衣も同じものを着けさせていただいている。先住ご遷化後、弟子の一人に加えていただいた相模原妙現寺の鈴江日原上人から9年前に頂戴したお袈裟を、大切に、大切に着けさせていただいて、当時の僧階に合わせて、私は余り詳しくないが二等講師としての五条と略五条とのこと。5年前に僧階が上がったが、お師匠さまにいただいたお袈裟を着けさせていただいてご奉公させていただいている。これでも、分不相応に、綺麗に、特別にお作りいただいた。この9年間、妙深寺の全てのご奉公で着けさせていただいたので、生涯私にとって特別なお袈裟であると思う。
 インド開教のご奉公は、福岡御導師に随行して若い御講師方と一緒にご奉公させていただいた。この時は、福岡御導師のみ本衣をお着けいただいて、私たち一同は開百法衣で統一させていただいた。インドでは、過去3回のご弘通ご奉公があったが、ダライ・ラマ氏との結縁口唱のご奉公でも、チベット自治区でのご奉公でも、私たち一同は開百法衣でご奉公をさせていただいた。
 その後、一人でご奉公をさせていただくようになって、私が導師役を勤めることになってからも自坊で着けさせていただいている白い紗の本衣とお師匠さまからいただいたお袈裟を着けてご奉公させていただいている。過去も、今でも。それ以外のお袈裟などを着けたことはない。ご質問の、「お袈裟」については、ここに書いたとおり。
 御衣も、それ以外になにがあるの?と考え込んでしまう。「黒?」「赤?」?????。といっても、赤い御衣など、先住も持っておられない。残念ながら、あれほどご弘通されたのに権僧正に上がられることなく先住はご遷化されてしまったので、お寺にも庫裡にも、そんな赤い御衣など無い。あったとしても、私が着たらチンドン屋さんになる(笑)。
 改良服は、写真を見ていただくと分かるが青い色のものを着けさせていただいている。気にする方がいて驚いたが、これは福岡御導師のご指示によってインドとスリランカに限定して着けさせていただいている。インドとスリランカでは、黒い改良服はキリスト教の宣教師と間違えられて、多くの村民が拒否反応を起こす。そこで、随行師は別として、導師役を勤める者は青い改良服を着用させていただくことになった。これも、先住はお持ちだったがサイズが違うので、福岡御導師からご指示をいただいてからあらためて最も安いものを求めさせていただいた。
 ここまで書いてご理解いただけただろうか。つまり、お袈裟でご心配をいただくことはない。こんなことが話題になっているとは、本当に、平和だ。
 本来、私にとって海外でのご奉公は、修行の場であった。「動機が不純で申し訳ない」と香風寺でもご披露させていただいたが、福岡御導師は海外の方々のためにご弘通を為されてきたが、当初、私はご信心の原点を海外から学び、海外の現場から日本に逆輸入させてもらおうと随行させていただいた。そして、私自身の信心を、弘通「開拓」のご奉公の中から改良させていただこうと思ったのである。
 それは、まさにそうだった。私の名前も知らない、どこそこの住職の息子だとか、お寺はどこだとか、そのお寺が大きいとか、小さいとか、そんなことは一切関係ない場所。私の名前も、プロフィールも、そして、お袈裟の色も僧階も知らない、初対面の人との対話、ご弘通ご奉公は、虚飾を削りに削って磨き出される自分自身の「信心」が明らかになるような思いがした。その中で、それを重ねていくことによって、自分がどれほど様々な守られてきたか、守られているか、思い知る。そして、もちろん、改良服も、御衣も失礼がないように着けさせていただくが、それでも、ご信心のみ、裸でいるようなつもりで、上行所伝の御題目、その尊さ、有難さを伝える。ここで、本当にいろいろなことを学ばせていただくことができた。ここで、三祖のご奉公や開導聖人の御指南の真意を、思い知るような気持ちにならせていただいた。
 私の海外での服装が話題になっていると聞いて驚いたが、妙深寺は、伝統的にそうしたことに疎い、というかローカルルールがある。妙深寺の住職以外の僧侶は現在では12名いるが、全員が一等講師のままでいる。これを読んでも分からない方もおられるだろう。しかし、実はとても重要なことだと思っている。妙深寺の、一糸乱れぬ教務諸師のご奉公は、まさに無私で、徹底している。それが、強制的でもなく、そういうアイデンティティで住職を守り、住職にお給仕してくださっている。先住時代の兄弟子などもおられるが、全員住職の下で「所化」に徹っしておられ、朝参詣のお看経では、住職と執事長以外は全員黒い衣に沙弥袈裟。徹底している。
 歴史の中でシステムが生まれてきた。そのルールを守ることは大切で、守らなければルール違反になる。ただし、お袈裟や御衣で御利益はいただけない。そこにこだわっていたら本質を見失う。そうしたことを嫌われ、戒められたのが開導聖人であり、佛立のアイデンティティ、イズムだと思う。
 いろいろなことを語るのは大切だと思う。テクノロジーが進化して、コミュニケーションの方法も増えた。しかし、私のことは私に聞いてくだされば、余程の犯罪者でなければ間違いはない、答えられるのではなかろうか。勝手に虚実織り交ぜて、面白おかしく話しているだけでは仕方ない。話す方も罪障を積み、聞く方も罪障を積んでしまう。そんなの損だ。
 お祖師さまは「権実雑乱の砌なり」と如説修行抄でお諭しになられた。「権」とは、簡単に言えば「仮」とか「偽」という意味で、「実」とは言うまでもなく「真実」である。真実ではないことと真実を織り交ぜて、それがゴチャゴチャに混ざって乱れていくのが末法、つまり現代だというのだから気をつけなければならないと思う。
 仏教の十悪の中の4つは、「口」についての戒め。「妄語(もうご)」=「嘘をつくこと」、「綺語(きご)」=「奇麗事を言って誤魔化すこと」、「両舌(りょうぜつ)」=「二枚舌を使うこと」、「悪口(あっく)=「他人の悪口を言うこと」とある。正義感が歪んだり臆病になって行動が制限されると、上記のような4つの戒めを平然と破ってしまう。これではつまらない、残念なことだ。もっと、きっと他に方法がある。
 御法門ですら、「己の遺恨を差しはさむ法門は謗法に同ず」とお戒めになられている。教務が、「嫌いなあの人に説いてやる」などと思ったら謗法なだとお戒めだ。人は、それが真実か、真実ではないか、ちょっとは躊躇しながら、気づかいながら、口を開き、文字を綴る。面と向かって気づかうのと同じくらい、テクノロジーが進化したために生まれた匿名の世界でも注意が必要だ。言論の自由、あるいは「折伏」と言っても、何でも言って良い、書いて良いわけなどない。まして、人の傷つくことや、真実ではないことなど。
 今回、本当に、ここに書いてくださってよかった。そんなことが語られているとは、とても心外で、元不良としては腹も立つ。目を見て、話を聞いてみたい。しかし、腹を立てていいはずがない。そうしたことなど相手にせず、淡々とご弘通ご奉公に励めと教えていただいている。宇宙誕生以来、真実は負けたことがないのだから、堂々と貫いてゆくしかない。
 ご奉公は、本当に有難い。今回のスリランカのご奉公でも、御法さまがおられればこそ、佛立ならばこそ、と感激しながらご奉公させていただいた。こうして、勉強させていただき、信心を改良させていただけることが嬉しい。本当に、感謝させていただいている。
 いずれにしても、いろいろなことが語られる世の中、関心を持ってくださっているのだろう。本当に、今回は教えてくださって、ありがとうございました。

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