2013年9月14日土曜日

『あまちゃんの笑顔』 妙深寺報 平成25年9月号

NHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」。久しぶりに全国的な大人気ドラマとなりました。

お母さんと一緒に初めて北三陸にやってきたアキちゃん。現役の海女として東北の厳しい海に潜るお祖母ちゃんと出会い、大感激。東京では都会のスピードに付いてゆくことができず引きこもりがちだったアキちゃんは、この三陸の田舎町で生き生きと輝き出します。

「おら、この海が好きだ!」

「海女になりたい!」

ワクワクする、愉快なドラマが始まり、半年間にわたって全国が東北に注目することになりました。あまちゃんは、ドラマの中だけではなく、本当の世界でも町おこしをしてくれました。このドラマを観ていた方々にとって東北や三陸地方はとっても身近な街となり、そこに暮らす人たちに対しても、親近感でいっぱいだと思います。本当にすてきなドラマでした。

東北で暮らしておられる方々には申し訳ないことですが、東日本大震災の前までは、とても遠い場所のように思っていました。青森も岩手も宮城も福島も、それぞれ何度も訪れていたのですが、観光のために通過するだけだったのです。地域や場所は分かっても、そこに暮らす人びととの出会いが薄かったのですね。

そこに暮らす人たち、その方々との出会い、その方々と私たちの人生が交差して、血が通うのですよね。「あまちゃん」が、悲喜こもごものストーリーを見せてくれたから、東北や三陸が身近になり、みんなの心が温かくなったのです。

東日本大震災を通じて出会えた、たくさんの素晴らしい出会いから、私たちも数え切れないことを学びました。遠く離れていた人たちと、かけがえのない縁が生まれました。

私たちのような遠方の者たちが、あまちゃんの舞台に暮らす方々と出会い、これほど深いご縁を築くことが出来ました。あの大震災は、忌まわしい出来事でした。しかし、私たちはここから学び、ここから変わりました。本当に大切なこと、人間にとっての本当のしあわせを、学び、感じることが出来ました。

気候も、風土も、文化すら違う場所。戸惑いもあり、迷いもありました。ただ、三月十一日のあの日から、走り出しました。

自分たちに出来ることを探して、被災地と連絡を取り合いながら、往復を始めました。秋山ご住職は東北を駆け巡り、切迫した被災地の現状について教えてくれました。その情報に従って、私たちもまた駆け出しました。

あの日から今月で二年半が経ちます。何も知らなかった私たちに、今はかけがえのない友人がいます。

今や、私たちにとって陸前高田や大船渡は、とっても身近な町になりました。しかし、振り返ると最初はどれだけ手探りで、怯えていたか分かりません。

私たちの行動が、被災した方々にとって本当に喜ばれるものか、自問自答しました。時に慈善活動は押しつけになり、自己満足にも陥ります。妙深寺は、すぐに支援活動のルールを決めました。

被災地でガソリンや燃料を給油しない。三月から四月中旬までは携行缶にガソリン、ポリタンクに軽油や灯油を持って走りました。同じように、数日分の食事も全て持ってゆき、ゴミも現地に一つも残さず持って返ることにしました。

四月二十九日、バス二台に分乗して妙深寺から約一〇〇名が陸前高田に入り、一〇〇〇名分の炊き出しを行いました。バスを下りる直前、支援者全員に心得が伝えられました。

「被災した方々に御礼を言われるのではなく、支援する私たちが、『ありがとうございます』と言い、私たちの支援は『させていただく』という気持ちで、黙々と頑張ろう」

この時も妙深寺ルールを大切にして、避難者のための仮設トイレを使わない、スタッフが使う簡易のトイレを横浜から運び、汚物も持ち帰るようにして炊き出しを行いました。

こうした模様は当時の妙深寺報に掲載されていますので、お読みいただければと思います。

今や妙深寺のみなさんと、東北は岩手県陸前高田市のみなさんのご縁は、太く、大きくなりました。私たちにとって陸前高田が身近で大切な場所になっただけではなく、高田のみなさんが私たちのことを身近に受け入れてくださっていることが、心から嬉しく有難いです。

本門佛立宗は、真っ直ぐに仏の道を歩み、生きた仏教を実践する者の集まりです。ですから、一人ひとりの仏教徒としての真面目な自覚を大切にしています。どんな神さまも仏さまも一緒と言って、手を合わすようなことはしません。

地神から水神までを敬いながらも、別々に信仰することは仏教と違います。ですから、子どもの頃からこうしたことに気をつけるように教えられているのです。

本当の仏教徒は神社が執り行うお祭りに参加することをしません。それが本来の信仰だと思います。

たとえば、「瓜田に履(かでんにくつ)、李下に冠(りかにかんむり)」という言葉があります。

李(すもも)の下で冠を直せば李を盗もうとしていたと疑われ、瓜畑で靴をはき直せば瓜泥棒だと疑われる。同じように、神社や仏閣の前で靴紐を直すことも信仰を不純にし、誤解を与えるものとして慎むのでした。

仏教は森羅万象を一つの真理として捉え、バラバラになるのを戒めるのです。

普通であればお祭りに参加することのない私たちですが、「うごく七夕まつり」だけは特別でした。

まず、このお祭りはお盆のご回向のために開催されており、しかも復興に向けて被災者の方々が夢と希望を託したお祭りで、さらには大切な山車に法華経本門の御本尊をご奉安させていただけることになったのです。ここまでの経緯が、東日本大震災から積み重ねてきた手さぐりのご奉公のかけがえのない成果のように思えました。

昨年に引き続き、今年は妙深寺の子どもたちを連れてゆきました。

住職として強い覚悟を抱きました。「相似の謗法」を恐れながらも、皆帰妙法を担う佛立教講の責務を想いました。ここで、この高田の地で、荒涼とした被災地の野原で、積み上げられた瓦礫の山や轟音を立てて被災地を走るトラックを見ながら、私たちが何をしてきたのかを見せ、この地に住むみなさんと一緒になって、汗だくになりながら、子どもたちの心に芽生える、ご信心の誇りや喜びを思いました。

神主さんが運行前の法要をした地区もありました。それぞれの地区がそれぞれのやり方で無事運行を願います。そして、長砂地区の皆さんは、私たちに無事運行の法要を託してくださり、山車に御本尊を奉安させていただき、みんなで一緒に御題目を唱え、無事運行のご祈願とお盆のご回向、東日本大震災で亡くなられた方々のご回向をさせていただきました。

廃墟の野原を、山車を引きながら子どもたちと歩きました。御題目をお唱えしながら、歩きました。本当に、忘れられない夏となりました。歩きながら、涙が溢れました。本当に、ありがとうございました。

いつか、子どもたちが、こうしたご弘通の経験を思い出して、佛立信者の誇りと喜びを抱き、あまちゃんが笑顔でみんなを元気にしてゆくように、強く、明るく、正しく育ち、苦しむ方々の間に入り、飛び込んで、みんなを元気にできる菩薩となりますように。

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