朝の9時1分、突然侵入してきたトラックが連邦ビルの下で爆発。9時3分にその惨禍はビルの片側を大きくえぐった。ニューヨークの9・11テロの時のように、朝の出勤直後の人々、朝一番から申請などをしようと庁舎に集まった人など、子供を含む168人の方が尊い命を落とされた。
この記念式典は、当時半壊したビルの跡地に造られたモニュメントで行われました。薄い水面の池。この池は亡くなった方を偲ぶ人が、鏡のような池水を覗き込むと、そこに失った愛する人の顔が浮かんでいればいい、という思いから造られたそうです。墓標がイスに似た形であることも、亡くなった方がゆっくり休めるようにという考えからと聞きました。それぞれの思いが、この場所に込められているのだと思います。
街頭には、犠牲者一人一人の名前が読み上げられていきます。交代で、きっと遺族や友人が名前を呼んでいるのですが、その声も時折涙で詰まってしまいます。私は、このテロの被害者に想いを馳せながらも、何より今目の前にいる「家族」の苦しみを目の当たりにして、心が痛くなる思いがしました。
こうした場所は、確かに誰もが、いつでも訪れられます。想像力があれば、事件当時の惨禍から現在までの苦悩、突然命を奪われ、幸福を踏みにじられる人々のことを考えられるでしょう。しかし、こうした記念の瞬間でなければ、そこには建造物だけがあって、人の顔は見えないものなのです。ところが、私たちは幸福なことに、彼らと言葉を交わし、彼らの顔、ご家族の顔を見ながら、お祈りをすることもできる。これは、大変なことでした。御法さまのお導きを感じました。
そして、その場所での御祈願、ご回向を終えて帰ろうとした時、女性から声を掛けられました。彼女の名前は「ナオミ」さん。アメリカ空軍のユニフォームを着けておられる女性兵士の方で、お母様が日系であるということ。
「日本の方ですか?私は仏教徒なのです。この近くにお寺はあるのですか?」と。
「いや、私たちは日本から来た仏教徒です。この近くにお寺があるかは分かりません。ただ、今日は犠牲者のためにと、お参りしたのです」と答えました。
彼女は、心から感動してくれている様子で、「そうですか。私もそうです。犠牲者のために来ました。私は、これから嘉手納に配置されるので、日本に行きます。私の家は仏教なのです。日蓮宗で南無妙法蓮華経と唱えます」と。
日系の顔立ちに、綺麗な薄みどり色をした瞳の真摯な言葉に、本当に有難く思えました。
彼女は、「私は4年前にニューヨークに住んでいました。9・11では、私の友人や家族が犠牲になって、亡くなったたくさんいて。そのために、私はアメリカのミリタリーに入りたくて。やっぱり私は6才から仏教を勉強して、南無妙法蓮華経を毎日お母さんとお唱えした。やっぱり、私はみんなに教えたいんです。私たちは仏教で、みんなにサポートをあげたいんです。私は、別にユダヤ教でも、クリスチャンでも構わないんです」
と。「今日、ここに来てどうですか」というディレクターの質問に、
「やっぱり4年前と同じ。生き残った家族と出会って。本当に。私たちはみんなのために来たけれど、みんが私たちに有難うって言う。やっぱり、私たちはもっと強くなって、みんなのために、私たちはこういうことが二度と起こらないように、一生懸命に毎日働いて。私の生活に仏教があるように、もっと強く、ユニホームと御数珠を持っていて、もっと何か出来ると思う」
と答えられました。彼女と出会えたことも素晴らしいお導きでした。素晴らしいことでした。もっと考え直さなければならないこと、教えられることがあります。そして、彼女は本当に純粋で、素敵な笑顔、暖かい笑顔をしてくれていました。「御数珠とユニホーム(軍隊の制服)」という言葉。よく考えなければなりません。とにかく、こういう視点から世界の平和や戦争やテロを考えてくれている人がいてくれる、仏教徒がここにいることを知ることが出来て、本当に嬉しかった。私は、この場所で出会った二人の耳に向かって、「南無妙法蓮華経、、、、」とお唱えしました。
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