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2008年11月5日水曜日

『俺は、変わらなければ』

 昨夜、長松寺の御総講で、若い清翔との会話。
 お前は、自立した人間だと思ってる。知識も豊富だし、頑固さもあるくらいだから。ただ、もっともっと、人間の機微を感じたり、自分の中にある自分だけで生きているのではなく、人の中に生きるお前を意識して、成長してもらいたい。自分の中で完結しているのでは、成長ができないものだ。
 人間は、「あぁ、俺はダメだ」という苦しい壁に当たって、「俺は、このままではダメだ。変わらなければ」と思えるもんだ。スポーツでもいい、恋愛でもいい。負けて、失恋して、傷ついて、そんなことを経験して、人間は成長する。でも、今の環境では、その「あぁ、俺はダメだ」という状況になりにくいんじゃないか。それは仕方ないとしても、だからこそ、自分で、本気で、「あぁ、俺は変わらなければならないんだ。成長しなきゃいけないんだ」と思って欲しい。
 俺も、18才の時、スポーツを始めて、その最初のレース、たしか江ノ島の東海岸だったが、東日本選手権のノービスクラスの初戦で、本当に情けない経験をした。友だちがいっぱい見に来ていて。そのレースまで、一生懸命練習して、その時もみんなの前で格好つけて、レースに挑んだんだ。でも、スタートしてからすぐ、海岸を埋め尽くす観客の前で、エンジンが止まった。ほんの数十メートルしか走ってない。プカプカ、プカプカ、浮いてた。その情けなさ、悔しさ、俺が止まってもレースは続いているんだから、誰も何も出来ない。ただ、プカプカ、浮いてた。情けなくて、涙が出て、海岸に打ち上げられてからも、江ノ島の橋の下に入って、悔しくて泣いた。
 自分が悪い。メンテナンスが出来ていなかったんだろう。でも、自分のタイミングの悪さ、格好つけていた自分の格好わるさ、チャンスをものに出来ない自分、良いところで失敗する自分、もう、こんなんじゃダメだと思って、「あぁ、俺はダメだ。変わらなければ」と思った。
 それから、単なるスポーツといったら仕方ないけど、死にものぐるいで練習して、そしてプロにまでなることができた。ワールドカップにも出れたし、映画にも出れたのは、そんな情けない経験があったからこそだと思ってる。そんな、悔しい思い、情けない思いを繰り返してきたよ。今でも繰り返してる。お前も、そんなことを繰り返して、どんどん成長してもらいたいんだ。
 お前の、人間性からにじみ出る言葉、声を聞きたい。俺は、「良い話」をしろと言っていない。頭の良さそうな、いくら勉強してきっちりした原稿が出来ていても、人には通じないんだ。読み上げる文章も、お前の、人間性すべてから出てくる要素の一つでしかない。お前の、苦い、つらい、いろいろな経験を通じて、伝えて欲しい。若いから経験がないんじゃない。いくらでも、こちらの思いで、構えで、人間の勉強はできるからな。
 ガンバレよ、清翔。

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