戦争地域を車で走りながら、何度か検問を抜けて、道路のアスファルトも剥げてくると、両側にテントが見えてきた。行けども行けども、テントが立ち並ぶ。そして、鉄条網に洗濯物を干す人や、子どもたちが遊んでいる姿も見えてきた。
現在、287000人が暮らす難民キャンプ。世界でも最大規模ではなかろうか。渡航前は「セクター2」と行っていたキャンプの正式名は「セッティクラム(Settikulam)」というエリアらしい。今日、ドクター・ゴタムネに聞いてみたら、このようなキャンプが大きく分けて3ヶ所があるらしい。ゴタムネは永くスリランカ軍で働いているドクター。実態に詳しかった。
実際、これらの難民キャンプに外国人が入るのは極めて難しい。海外からの義援金(Donation)はコロンボの事務所に一括してまとめられる。それを、救済事業ということでコロンボの政府主導で行っているとのこと。私たちは、アマル氏やその他の協力を得て、こうした直接的な支援活動を行えることになった。とにかく、深い御縁のあるスリランカで、本門佛立宗として、まごころのご奉公をさせていただきたいという主旨で、日本全国の多くの方々から志をお預かりし、お届けするミッション、プログラムが組まれた。
なぜ、外国人を難民キャンプに入れないのか。そこには重要な理由があるという。海外の支援団体が難民キャンプの解放を求めていて、そのNGOやNPOがLTTEの「マハーウィル」側に「支援物資」と言いながらトランシーバーや携帯電話などを持ち込んでいたという。そのマハーウィルは、キャンプ内で活発に活動しており、先日も「シンハラ人の血でプラバカラン議長の銅像を造りましょう」とポスターを貼っていた。
外国人のあるグループは、積極的にLTTEを支援している。これは極めて難しい問題で、「人道的支援」がこの状況下でどこまで当てはまるのか考えねばならない。30年ちかく、教育も受けられず、学校にも行かせてもらえず、極端な思想だけを植え付けられた子どもたちや青年たちがいる。この人たちに、どう接していくことが妥当であり、効果的なのか。彼らの人道を、本当の意味で守る道は、どのようなものか。
スリランカ政府は、出来る限りのサポートをしているという。コロンボでも貧困にあえいでいる人もいる。このタミル人の地域だけ苦しんでいるわけではない。それなのに、こうして難民キャンプを設けて、彼らに一般的な教育の機会を与えることなどに努力している。そのことを理解して欲しいという。
このキャンプにテラワダの僧侶はいない。「なぜいないのか」と聞いた。「いや、いないのだ」という答え。タミルには仏教は説けなくても、シンハラの兵士たちには説いたらどうか?いや、タミルにこそ仏教を説くべきではないか。仏教国で起きている内戦なのだから、その僧侶には責任があると思う。しかし、彼らはそれをしない。上座部仏教だからである。日本で、上座部仏教に興味を持っている人は、こういう現実を知った方がいい。限界がある。越えられない。口当たり、耳当たりの良いことを並べても、結局は真新しいだけで、真実や普遍性がないということになる。そこに耐えるのが、本門佛立宗の、真実の仏教だと思う。テラワダとマハヤナ、上座部仏教と大乗仏教の違いを思い知る。やはり、本門佛立宗だ。
タミルの言葉では、「こんにちわ」を「ワナッカム」と言う。一生懸命に覚えて、最初は2歳~5歳までの子どもたちが待ってくれている場所に向かった。ここで、今回のおまけのように購入させていただいたおもちゃを、お渡しすることになっている。それぞれ、ご主人が、この難民キャンプを抜け出すために、志願して職業訓練のプログラムに申し込んだ人たちである。奥さまも前向きなのだろう。子どもたちを見ていると、何とも言えない気持ちになり、涙が溢れてくる。
その後、会場を移して、その職業訓練校で学んでいる人たちのクラスを廻った。黒板にローマ字で御題目を書き、それをタミル語にしてもらった。少しだけ練習すると、みんなで御題目をお唱えできるようになった。メモを取ってくれている人もたくさんいた。スピーチでは、いろいろなことをお話ししたが、それも次回に譲る。
本当に、ありがたかった。
0 件のコメント:
コメントを投稿