拙著『仏教徒 坂本龍馬』は、龍馬存命中に海援隊が発行した『閑愁録』の要旨から坂本龍馬の思想の核心に迫ったものです。
『閑愁録』は長岡謙吉が執筆したものです。しかし、執筆したことだけを重視するのであれば「船中八策」も長岡の書いたものです。その経緯、背景を、しっかり解かなければ、坂本龍馬の思想の核心や、彼が率いた海援隊の存在意義は正確に理解できないはずです。
幕末に活躍した人物の中で、長岡ほど不幸な人はいません。岩崎弥太郎によって不当に逮捕され、その後はキリスト教に親炙したという誤った紹介をされてきました。NHKの龍馬伝ではキャスティングすらされませんでした。
今日から明日にかけて、小林信翠師が『仏教徒 坂本龍馬』の応援を呼びかけてくれました。明日は、坂本龍馬の誕生日であり、命日でもあります。少しでも、彼の真意を彼を慕う人々に伝えたいです。そして、坂本龍馬を知らない人にも、日本国の本当の誇りについてお伝えしたいと思います。
来年、京都佛立ミュージアムで『坂本龍馬と仏教展 〜龍馬が目指した本当の明治維新〜(仮題)』という展示会を開催する予定です。シナリオライターの美香さんが、そのイントロダクションを書いてくださいました。素晴らしい文章です。ご本人の許可を得ましたので、ここに紹介させていただきます。
「坂本龍馬—————。
時代を駆け抜けた男。希代の風雲児。新しい日本を切り開いた維新の立役者。幕末最大のヒーロー。誰もが知っている、歴史上最も有名な人物。
彼を形容する言葉はたくさんあり、今や、彼を題材とする書籍は数限りなく存在します。そして、ありとあらゆる類の逸話、寓話が語られています。代表的なものを挙げてみましょう。
まずは軍神説。自由主義者。北辰一刀流免許皆伝者。姉/乙女宛の書簡に見る豊かな人間性。背中にタテガミがあった。日本で初のカンパニー設立。なぜか女性にもてた。日本初の新婚旅行をした。驚異的な人脈ネットワーク。フリーメイソンのメンバー説。単なるメッセンジャーボーイ説。そして誰に暗殺されたのか等々。挙げればキリがありません。
事実と嘘が混同されたまま、今もってなお、龍馬のイメージはふくれる一方であり、後に創り上げられた龍馬像が、ひとり歩きするほどになっています。ひとつ確かなことは、現在定説とされる龍馬の人物像は、明治の世に都合良くアジャストされたものであり、実際の坂本龍馬という人間が、真実どんな思想を持っていたのかということは、恐らく、未だ解き明かされていないということです。
幕末という、ほんの数十年の間に、日本の歴史は大きな転換を遂げました。その短い期間の中で、さらに、龍馬が活躍したのは、たった数年のことです。しかし、その数年間に起こった出来事が、後の日本に多大なる影響を与えました。そして、その間の出来事の多くは、龍馬を中心に動いていたのです。
なぜ、たったひとりの男に、一国を動かすことができたのでしょうか。
なぜ彼は、これほどの光を放ち、二十一世紀に生きる私たちをこんなにも魅了するのでしょうか。
その謎に迫るために私たちに与えられたものは、彼に関する文献のみです。それらをひも解く以外に、彼を知る術はありません。ただし、これまで意図的に語られたもの、語られなかったものを、当時の環境や状況をふまえた上で、正確に見極めてゆくことができれば、今まで誰にも見えなかった、実物の坂本龍馬が姿を現すかも知れません。
ほんとうの坂本龍馬が、何を見つめ、考え、どのような希望を持ち、どんな恐れを抱いていたのか。龍馬が描いた日本の未来図とは、いったいどんなものだったのか。
彼の残したもののどこかに、必ず答えはあるはずです。
さあ、探しに行きましょう。」
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