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2015年5月23日土曜日

「土器を捨てて宝器に替るが如くなるべし」

心臓に針を刺すような気持ちで、御講を勤めさせていただいたこと。

永遠に、忘れません。

彼女とはじめて会ったのは、2年前のことでした。

すい臓がんのステージ4。

手術が出来ない部位で、お医者さまからその年いっぱいの命と宣告されたとのこと。

自ら抗がん剤治療をしないと決断し、そんな時に、お会いしました。

あれから約2年。

本当にお元気に過ごしておられて、食欲もあり、またお会いすることが楽しみで。

2年間、濃厚な、濃密な時間でした。

今年の門祖会にお参りくださった時、病気が進行していることをお聞きし、腹水の溜まったお腹をさすり、いつものように抱き合って励まし合いながら、お別れしました。

5月5日、住職を迎えて教区御講の席主としてご奉公する。

病状の進行を考えると、それまで体力がもつのか、誰もが心配していました。

お助行にお伺いした時も、

「教区御講まで、生きていたい」

とお聞きしました。

そのような、想いを持たれた、教区御講です。

彼女の想いを受け止め、心臓に針を刺すように、その日を迎えました。

3時間ちかく、彼女は見事に席主としてのご奉公を果たし、家族全員の協力も得て、導師座の脇に座っていてくれました。

御法門終了後、30名を超えるお参詣の方々の前で、お礼とも、お懺悔とも、お別れのご挨拶とも受け止められる、涙なしではお聞きすることのできないお話をなさいました。

特に、それはご家族への、メッセージでもありました。

「世世恒聞法華経 恒修不退菩薩行」

「願わくば生々世々菩薩の道を行じ、無辺の衆生を度して永く退転なからんことをおもふものなり」

いきかはり死にかはりつゝ法華経に 仕へん人を菩薩とぞいふ」

数日前、お助行にお伺いしました。

手を握り、今生のお別れをいたしました。

寂光参拝について、お話をしました。

私が、祖父や祖母から教えていただいてきたこと、先住や、妙清師に、見せていただいたこと。

それらの現証を。

「近き現証を引て遠き信を取べし」法蓮抄

今朝、結びの言上の最中、本堂の導師座にて、彼女が寂光へと帰られたことを、聞きました。

ご宝前に、言上させていただきました。

同じく生命を得て、同じく死を迎える中で、彼女は、あるべきお手本を示されたと確信します。

「諸行無常 是生滅法」

「生滅滅已 寂滅為楽」

「土器を捨てて宝器に替るが如くなるべし」法蓮抄

これから、久しぶりに妙深寺へお参詣くださるのを、待ちます。

境内には、様々な色の紫陽花が咲いています。

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