本日は本山宥清寺の門祖会です。あわせて14時から京都佛立ミュージアムで坂本家十代目・坂本匡弘さんによる講演会が開催されます。
すでに予約で満席となっていますが、立ち見であれば参加可能です。テレビ局の取材も入る予定です。大変にありがたいです。
よろしくお願いいたします。
「真説・坂本龍馬展」オープニング映像
2017年1月、龍馬が京都で暗殺される5日前、慶応3年(1867)11月10日に書いた書簡が発見されました。この書簡には龍馬自身の直筆で初めて「新国家」という言葉が記されていました。歴史的に極めて重要な意味を持つ書簡です。
なぜか。
今の時代がそうであるように、誰もが幕府の老朽化した政治システムの刷新を求めていました。有名無実の役職、機能不全の官僚主義、硬直化した序列、長く続いたヒエラルキーに国家としての活力が奪われ、大衆の不満は頂点に達しようとしていました。同時に、覇権主義の列強諸国は政治的、経済的、軍事的圧力を強め、人びとは幕府の政権担当能力に決定的な不信を募らせました。類推や憶測による陰謀論や流言蜚語が飛び交い、血で血を洗う幕末の大混乱が訪れました。
佐幕と勤王、開国と攘夷。多くの若者が立ち上がり、それぞれが対立し、激突してゆきます。「天誅」と呼ばれた暗殺も横行し、生麦事件に端を発した薩英戦争、長州と列強四国との間に起きた下関戦争、二度にわたる幕府の長州征討戦争もありました。
多くの血を流しながら、ついに幕府は政権を朝廷に返上、日本は新しい国として歩み始める時を迎えたのです。
しかし、この時、大半の志士はもとより、革命勢力の中心にある西南雄藩、薩長土肥のリーダーたちでさえ、新しい国・日本をどのような国にすべきか、具体的なビジョンは持っていませんでした。彼らは、藩という枠の中から幕府と対峙し、腐敗した幕府を倒すことに没頭し、権力闘争のみに腐心していました。新国家の構想よりも先に、権力奪取とその掌握のみが目的化していたのです。
今の政治や経済や社会に問題があることは分かる。
それを指摘することも出来る。批判することもできるし、憤慨することも罵ることもできる。
しかし、では、どういう国にするのか。いったいどういう世界にしたいのか。
龍馬は全く違う風景を見ていました。
彼の心の中には鮮明な「新国家」がありました。
新しく生まれる国は、国民一人ひとりが主役で、差別なく平等、誰もが自由に、人生を選べる、望んだように生きられる、笑って暮らせる国。これこそ龍馬の理想でした。
多くの友の血が流れ、若き命を代償として生まれた「新国家」が、藩閥政治や縁故主義を踏襲し、一部の勢力が権力を独占し、専制政治を行い、汚職が横行し、賄賂に耽溺する国家となったなら、ただ腐敗した政治が別の腐敗した政治に取って代わっただけとなります。
新しく誕生する国をそうさせるわけにはいかない。
人びとが謀計をめぐらせていたその時、龍馬は国づくりに全力を傾けていました。
「真説・坂本龍馬展」
書簡の「新国家」という言葉に込められた深い信念と具体的なビジョン。
龍馬が説きたかった「坂本龍馬の真説」です。
龍馬は議会制民主主義国家をの樹立を目指していました。実は、山内容堂の「大政奉還に関する建白書」も寺内左膳や後藤象二郎による「別紙(副署)」も龍馬の文官・海援隊隊士・長岡謙吉によって起草されたものです。ここには上下両院からなる議会の設置が謳われており、龍馬の「新政府綱領八策」と合致します。龍馬の政体論は彼の死後に刊行された『藩論』に見ることができます。
また、龍馬は国際社会の中で活躍する日本人の姿を求めていました。幕末の日本にはおよそ二百七十の藩があり、それぞれが「国」としての側面も有していました。藩ごとの主従関係や帰属意識もあり、日本人としての意識を持つ人は多くありませんでした。それぞれが会津人、薩摩人、長州人などでした。藩を捨てた脱藩浪士による海援隊は、幕末期にあって独特の国際感覚を持つ日本人たちでした。同時に彼らは「世界の海援隊」として国際社会に打って出る覚悟を持っていました。彼らに続く日本人のために海援隊は初歩的英語教科書も出版しました。
さらに、龍馬存命中の慶応3年5月に刊行された海援隊蔵版『閑愁録』には、仏教によって国民の心を安んずるべきであるという「新国家」の国体論、宗教政策が説かれています。これは仏教が生きとし生けるものへの慈悲や平等思想を抱いていることに由ると考えられます。
慶応3年11月15日、坂本龍馬は暗殺されます。日本史上、これほどまでに鮮烈な登場と活躍と退場をした人がいたでしょうか。龍馬は、人びとの夢や理想、そしてその時の政治の情勢や人情に従って復活を繰り返しました。だからこそ、逆に近年は龍馬の偉業を疑問視するような言説が世に流布されています。
様々な資料が坂本龍馬の果たした役割の重要性を示しています。新発見の書簡もその一つでありこの「新国家」の一言にどれだけ重要な意味が含まれているか解題しなければなりません。
京都佛立ミュージアム「真説・坂本龍馬展」
今回、坂本家十代目・坂本匡弘氏の全面的な協力を得て、一次資料から坂本龍馬の真意を読み解き、憶測や類推ではない坂本龍馬の「真説」をご紹介します。
ファクトとフェイクが交錯する世界は数百年に一度の大変革期を迎えています。ここに展示する龍馬の生き様やメッセージが、未来へ向かう私たちの灯火になることを期待しています。
ありがとうございます。
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