2007年9月23日日曜日

『お葬式、0円』

 先日、13日の月始総講で御宝前に言上させていただいたのだが、妙深寺の古くからのご信者さんから大きな御有志をお預かりした。私は何と言葉にしていいか分からなかった。金額の大小ではない。その「志」に心から随喜させていただいた。
 14年前、先住のお怪我と現証の御利益。それは、妙深寺がいただいた御宝前からの最高のサインであり、目の前で御題目の御力を見せていただいた「現証の御利益」に違いないと痛感した。
 2年後の1995年、私はその出来事をまとめ、「佛立魂」という本を出版させていただいた。この本は、今でも多くの方にお問い合わせをいただいている。多くの方の傍らで信行ご奉公の一助としていただいていると勝手に想像している。本当に有難いことだと思っている。
 その「佛立魂」の執筆と出版に至った経緯。それが、実は先に書いた方の奥さまからお受けした御有志だった。当時、私は臨港教区という地域の受持講師だった。その臨港教区の中でご奉公させていただいていた寒参詣の折、本堂の地下から上がる階段の途中で、その奥さまからお声を掛けられたのだった。
「御講師、先住の事故。私たちはすぐ忘れちゃうでしょ。だから、書いてください。本にして出してください」
 手に握らされたのは、本のような厚さの半紙に包まれたものだった。奥さまのお話を聞くと、数千冊の本を簡単に出版できるほどの金額、御有志。私は、階段の途中で呆然としながら、今まで持ったこともないお札の束を握りながら立ちつくした。
 私は知っていた。受持講師として、いつもお宅に伺い、御講やお助行をさせていただいていたので、その方のお宅の佇まい、お暮らしぶりをしっていた。質素というか、小さな家の中で大切に暮らしておられるご主人と奥さま。当時、奥さまは63才、ご主人は66才だったと思う。ご長男とご長女は独立されてそれぞれ遠くに住んでおられ、随分前からお二人で暮らしておられた。本当に質素だったが、とても暖かく、優しく、幸せそうで、教区の方々を集めて楽しいお食事会をしたり、私も何度も呼んでいただいてみんなで楽しく過ごさせていただいていた。
 その奥さまからの御有志をお預かりしなかったら、あの「佛立魂」は執筆も出版もできなかったと思う。結果、私たち妙深寺の教講がいただいた現証の御利益は、記憶の底に埋もれてしまっていたかも知れない。大広間から上がる奥の階段で立ちすくんでから、「何とか御志を形にしなければ」と奮起することができた。
 当時、私は文章力など全くなかった。何度もブログに書いてきたが、スポーツばっかりしてきて頭の回転もすごぶる悪かった。そんな私が、御志を受けた以上どうしてもさせていただかなければならないと思った、思えたのである。
 ワープロを使いながら、見よう見まねで文字を打ち込み始めた。遅々として進まず、頭を抱えて何日間も何週間も過ぎてしまうこともあった。しかし、いずれにしても、その奥さまのお声、お心、御有志がなかったら、私は自分が動いていたかどうか自信がない。きっと、出来ていないと思う。私にとって、私を成長させてくれた、かけがえの無い出来事だった。私を外護し、育ててくださったことを、私は一生忘れない、と自分の心に決めて今まできた。
 そのご主人、既に80歳を前にした方から、妙深寺に建財ご有志として200万円、これから始まるエレベーターの設置のためのご有志として100万円をお預かりしたのだった。ご夫妻の質素なご生活を知っているから、この「ご有志」がどれだけの「思い」がひしひしと感じる。いや、先住時代から「御法さまへのご有志は、1円でも何千万円でも同じ心でお預かりするものだ」と教えていただいているから、金額の大小ではないのは充分に承知している。ただ、このご有志が、どれほど私にとって重たかったか分かっていただけるだろうか。このご夫妻がいなければ「佛立魂」という本はなかったし、今の私はなかったと言ってもいいほどなのだ。今でも文章力はないが、それでも書けるようにはなった。ご夫妻の思いがなかったら、スポーツばかりしていた私には、思いを深く掘り下げて、文字にする術など身につかなかっただろう。
 13日の朝、お祖師さまの御総講に於いて御宝前に言上させていただいた。万感、胸に迫る。御法さま、どうかこの方々の気持ちをお受けください、と。妙深寺の本堂や様々な建物、イスや境内地にある木々や石ころも、何かを売って建てたり、購入したりしたものではない。全てご信者さまの思い、ご有志、み仏の教えによるもの。そしてまた、こうして質素な生活を送るご夫妻から、妙深寺という法城を護るための「思い」をお預かりした。本当に、何とも言葉にできない。
 いくら包んだら何のサービスがあるとか、御利益があるとかという新興宗教が言うようなものはない。仏道修行に於ける「布施行」「喜捨」は、全て「志」なのだ。真実の仏教、本門佛立宗であるから、「葬式代」「戒名料」などと、その時だけの功徳を求め、それで「良し」とするものではない。日々に信行し、功徳を積む。ご信心の発露として、功徳を積ませていただき、御法さまをお守りし、自分が少しでもお役に立とうとする「心」が「ご有志」なのだ。
 そうしたことを形にして、いつか「お葬式、0円」を実現したい。ソフトバンクの携帯電話の宣伝や生命保険のようにはなりたくないが、日々にこれだけの功徳を積んでおられる方は、お葬式で何か特別なご有志をしていただかなくとも良いと思える。本門佛立宗のご信心、本当の仏教は、葬式で金をかければ良いというものではないのだから。
 大邸宅に住みながら孤独の中で悶々としている人々もいる。質素で小さなお宅ながら、喜びと感謝の中で暮らされている方々もいる。その違いは、やはり「ご信心」だと思う。老夫妻の息子さんは、今や事務局の中でご奉公くだされており、ご長女も部の中でお参詣やご奉公に気張ってくださっている。何よりの幸せ、ありがたいことだと思う。
 まとまりがないが、書かせていただいた。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

雪菜です*
清潤お導師!文才ありますよ~素晴らしいですよ※ 5年前に頂いた、励ましの文は今も心にしっかりと残っています※本当にあの時もお世話になりました※
私の頭では難しいかった 「宗教と政治 ラフプーチン」 ・・でも引き込まれるように読みました!! 「佛立魂」の本読みたいです! 私は日本に居るときほとんど本を読まなかったのですが、(毎日の生活でいっぱいいっぱいだったのも理由)ブラジルでボランティアをさせて頂けるようになって(*海外ぐずうの出来る人材になれますように*と開門参詣時の御祈願をしてからレールを惹かれたようにご利益を頂ココまで来れました!) 今までにないぐらい快適な暮らし(読書も出来る)充実した生活しています*  
今までまともに勉強した事なかった分、横浜訓練(語学漬け)の日々は毎日泣きそうでしたが私の足りない部分をしっかり身につけさせていただきました* 書き出したら止まらなくなって来たのでこの辺で。
私も「志」を高く持って!それに向かって御信心に励みますよ!! 今niltonは家で1日30分お題目あげているそうですv! 彼も素晴らしいです☆ 

Seijun Nagamatsu さんのコメント...

雪菜さま、

遠くブラジルからの書き込み、ありがとう。
ニルトンも元気そうで、お看経をしてくれていると聞き、とても嬉しいです。
御利益をたくさんたくさん感じて、そして遠くブラジルで若い青少年のために尽力している雪菜ちゃんは素晴らしい道を選び、実践していると思う。
その雪菜ちゃんの思いや行動は、世界中の人に伝わって、いつか全人類の平和や繁栄を実現してくれると思う。ありがたーい。

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