それは父の絶筆で、混濁する意識の中、これから始まる息子の生き様を、想像し、想定し、必死に筆を走らせた、小さな、小さな、紙片でした。
誤字も、文字の乱れすらも、全てが父の愛情で、息子の胸をえぐります。
これから始まる人生は、「困難」ではなく「苦難」だと、父は教えてくれました。
自分が世を去り、息子が泣いて、次の一歩を踏み出す時、必ず開ける引き出しに、この紙切れはありました。小さな紙片に写真を添えて、小さな箱の一番上に、それは置かれてありました。
見つけた私は声を上げて、父のすごさを思い知り、自分の愚かさを思い知り、夜を徹して泣きました。
二度と会えない父ですが、最後の最後まで越えられぬ、深くて高い愛情を、馬鹿な息子にくれました。父は命の恩人で、哀しい別れを最終の、御法門にしていなくなり、独り残されて、さみしくて、震える夜はあるけれど、そんな時には我が父の、遺した紙をたぐりよせ、不屈の誓いを思い出す。
命を賭けて報いたい。父の愛情に報いたい。馬鹿な息子で、仕方ない。でも、今も、忘れず、父の教えを守ります。
いつか会えたらいいけれど、中途半端に生きたなら、それは叶わず、本当に、さみしさだけが募るから、だから、身命を惜しまずに、為すべきことを為せるよう、前に進んでまいります。
父の遺言、絶筆の、小さな一枚の紙切れを、忘れることなく読み返し、何が変わろうが、ずれようが、離れようが、曲がらず、驕らず、流されず、為すべきことを為せるよう、努め、励んでまいります。
ありがとうございます。父。
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