触れようとすると、逃げます。
わたしが知らん振りをしていると
きちんと心臓のあたりにきて、
わたしの一部始終の動作を見ています。
心臓は躰で一番大事なところだから、
そこに塊が居座っているときは、
わたしは、何をしていても安心していられます。
この塊を造りだしたのはもちろんわたしです。
だから、矛盾していますが、とても孤独でした。
皆が、口にする淋しさではありません。
でも、あなたにあってから、この塊が完全に姿をくらましたのです。
わたしは、でも探すつもりはありません。
ユリ
1953・6
小説「記憶のなかの部屋」の第一章より。ユリからポールへの手紙です。
この部分だけ読んでも、素晴らしい。
是非とも、買って、読んでいただきたいです。
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