2014年2月12日水曜日

『私たちには夢がある』 妙深寺報2月号

『私たちには夢がある』

世界はより良く変わる。絶対によく変わる。未来は僕たちの手の中にある。僕たち次第なのだ。

現実を見るとイヤなことも多く、理不尽なこと、相変わらずの癒着、権威主義、縁故主義、門閥主義、遅々として進まないことばかりで、嫌気が指すこともあります。

しかし、そうではない。今だけ見ているとそう思ってしまうかもしれませんが、そのままで終わるはずはありません。自分さえ諦めなければ未来は確実に変わります。

脅されても、笑われても、夢を捨てず、希望を離さず、信念を曲げず、行動し続けた人が、世界をより良く変えてきました。忘れるわけにはいきません。

だから、言い聞かせるのです。未来は僕たち次第。何を怯えてる。何を恥ずかしがっている。なんで身体が動かない。どうして一言が出ない。未来は僕たちの手の中にある。世界はより良く変えられる。

悪世末法という恐ろしい時代は一万年以上続くと言われています。恐ろしさも危うさも増すばかりで、挑戦する者にとっては苦しく辛いことも多くなるでしょう。

しかし、それでも宇宙の真理は脈々と息づいて、人類は真実への発展を遂げてきました。

忌まわしい奴隷制度は廃止され、植民地支配は終焉を迎え、愚かな核開発と核実験の狂躁は影を潜め、アメリカの人種隔離政策も南アフリカのアパルトヘイトも廃止され、解消されてきました。

奴隷制は、巨万の富を生み出すビジネスで、その労働力の確保は強力な国家権力や宗教とすら結びついていました。ですから、当時の大多数の人たちは奴隷制が悪いとも思わなかったはずです。「奴隷制反対」と主張しても「なんで?」「あいつ、どうかしちゃったの?」と笑ったり、迫害したりしました。それも当然の反応でした。

南アフリカを支配していたアパルトヘイト。白人と黒人を差別し、分離する法律は、反対しただけで多くの人が撃ち殺されたり、投獄されたりしていました。マンデラ元大統領は数十年間の投獄の後に民衆の希望となり、このアパルトヘイトを終わらせたのでした。

アメリカにも人種差別があり、多くの人びとを苦しめていました。特に南部の差別はひどいもので、市営バスも白人席と黒人用に分けられ、満席になると黒人は白人の座席に座ることは許されませんが、白人には黒人が席を譲らなければならないと決められていました。明らかな、人種隔離、人種差別が行われていました。

一九五五年十二月一日、モントゴメリーという南部の小さな街で、四十二才のローザ・パークスさんは白人のためにバスの座席を譲るように命令されましたが、それに従わず逮捕されました。

この彼女の勇気ある行動は全米に伝わり、人々を立ち上がらせ、ワシントン大行進、ケネディ大統領の歴史的演説、一九六四年七月二日の公民権法の制定に至ります。

いつか差別の無くなる日が来る。「私には夢がある」。公民権運動の指導者の一人、キング牧師がそう演説してから半世紀を待たずして、アメリカ合衆国は黒人の大統領を生み出しました。当時の誰が想像できたでしょう。

二〇一二年十月九日、イスラム原理主義組織のパキスタン・タリバン運動(TTP)は、十六才のマララちゃんを襲撃し、彼女は頭を打たれて意識不明の重体となりました。マララちゃんは英国に搬送され、一命を取り留めました。

マララちゃんが求めていたのは「女の子にも勉強させてください。男の子と同じように教育の権利を与えて欲しい」というものでした。この当然と思われる主張が、タリバンの原理主義的なイスラム法に反しているとされ、殺害の標的となったのです。

奇跡的に回復したマララちゃん。恐怖の体験を強さと勇気に変えて、国連をはじめ世界中で女性の権利や平和を訴える活動を始めました。今や最も若いノーベル平和賞候補と言われています。

残念ながらイスラムやタリバンだけが悪い偏見を持っているのではありません。世界各地で女性に対する差別は残っていましたし、日本にも女性差別があったのです。今や当然のように女性の政治家やリーダーがいますが、これも数十年前まで考えられないことでした。

永年にわたって人々を支配してきた理不尽な法律や制度、偏狭な文化や差別的な風習を変えることは、並大抵のことではありません。今は「許されない」「けしからん」と思うことも、当時は当然のこととしてみんなが行ってきたのです。それが世論であり、風潮であり、大半の人が認めていることでした。実現するためには、おびただしい数の人びとが迫害され、蹂躙され、脅され、笑われ、辱められてきたはずです。

しかし、これに立ち向かった人々は、夢を捨てませんでした。いつか、きっと今より良い世界になると信じて、不屈の精神で行動を続け、世界を変えてきたのです。

この世の中を見渡すと、やはり理不尽なことが増え、貧富の格差も広がって、大きく後退しているように、感じることがあります。そんな時は、後ろ向きになったり、希望を失ってしまいそうにもなりますが、それではいけないのです。

人類の前進。進める人もあれば、後退させる人もいます。三歩進み、四歩下がり、必死に五歩進んで、また三歩下がる。そんな繰り返しかもしれませんが、前に進める人がいなくなれば、後ろに下がってゆくままになってしまいます。

八割以上の人たちは、傍観しているだけかもしれません。しかし、この世界の中で、末法が続く限り、法華経の教えをいただく私たちが傍観者でいいはずがありません。法華経は、真の平等と平和を説き、私たちを何歩も前進させようと、教えてくださっているのです。

私は、仏教による全人類の精神的な次元上昇を夢に見ています。神さま比べも、仏さま比べもない、普遍の仏法・南無妙法蓮華経への理解や信仰を通じて、民族や宗教の壁を超え、偏見や差別、暴力の連鎖や欲望の暴走を乗り越えて、万物の霊鳥たる人類が真の平和や共生に目覚め、まさに地球が一つになる日が来ると信じています。そのために生きたいし、死にたいと思うのです。

法華経の思想、久遠の仏陀の、お祖師さまのご奉公の中に生きる幸せは、譬えようもありません。マララちゃんの活躍を祈りながら、私たち佛立教講の夢をもう一度思い返して、何としても前に進みたいのです。

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