午前10時から、スリランカの法務大臣兼仏教大臣のウィジェヤダサ・ラジャパクサ氏やナヴィン氏をお連れして全日本仏教会にお伺いしました。
いま、新幹線で京都に向かっています。
全日本仏教会(全日仏)では、WFB(世界仏教徒連盟)の小林副会長さま、全日仏の久喜事務総長さま、国際部の掬池部長をはじめ、皆さまにお時間を頂戴することが出来ました。
ラジャパクサ大臣から、表敬訪問の主旨、仏教国・スリランカの歴史や日本との深いつながり、国連の後援によるウェサック祭りについて、ナヴィン氏からは「シャーキャ(釈迦)王国テーマパーク・国際仏教センター」の設立と開催についてお話をいただきました。
大臣のお話を聞きながら、あらためて緊迫する世界情勢の中で、彼らが目指していることを理解しました。
最初は、並み居る先生方を前にして、大臣がまさに「釈迦に説法」のような仏教講話を始めてしまったのではないかと心配していました。
しかし、全て聞き終わると、彼が希求する世界平和と仏教の可能性をあらためて思い返すこととなり、胸が熱くなりました。
すべて、今の世界にとって、仏教の中に流れる教え、仏教を受け容れた人びとの心の変容が必要だということであり、今こそ人びとはここから学ぶべきだと訴えておられました。
アショーカ王のことも、その息子・マヒンダのことも、スリランカに渡った菩提樹のことも、舎利のことも、仏歯のことも、アングリマーラのことも、サンフランシスコ講和会議におけるジャヤワルダナ氏の演説も、すべてご存知のことだと思うのですが、皆さんじっくりと聞いてくださっていました。
仏教に出会う前、アショーカ王は殺戮の王として君臨し、それによって帝国を築いたのでした。
そのアショーカ王が仏教と出会い、これまでの悪業に気づき、これを心から懺悔して善業に生きるようになった。
彼は仏教を庇護し、その尊い教えを平和と繁栄の礎としました。
そして、仏教のエッセンスを、広く近隣の国にまで伝えようと努力しました。
実際、彼は息子のマヒンダを出家させて、その教えをスリランカに伝えました。
数千年後の今、アショーカ王のことを殺戮や破壊の王として記憶している人はいません。
アショーカ王といえば歴史上最も仏教を庇護した比類なき名君として記憶されています。
現在、恐ろしい政治を行う君主が隣国にもいますし、偏った思想や愚かな人間性の政治家も台頭する風潮にありますが、仏教によって心が昇華し、慈悲に溢れてゆくことを伝えたいと言います。
アングリマーラは当時のインドで最も優秀といわれた師匠の弟子として学んでいました。
しかし、その師は狂っていた。
あろうことか、彼はその最も尊敬を受けていた先生から「1000人を殺して、その指を一本ずつ集めてこい」という恐ろしい教示を受けます。
これによって彼は殺人鬼となってしまうのでした。
仏陀は森の中で彼を殺そうとするアングリマーラと出会いました。
この時のやりとりが、大変な示唆に富んでいるというのです。
「止まれ!」と叫ぶアングリマーラ、「私はすでに止まっている。お前こそ止まりなさい。」という仏陀。
こうした仏陀の教えを受けて、アングリマーラは生まれ変わります。
今までの愚かで酷い生き方を改め、彼は仏陀の弟子となって清貧の中に慈悲をもって生きるようになりました。
いま、残忍なテロが横行する世界の中で、それを行う人びとが何によってそうなってしまったかを問うているのです。
狂った師のもとにいれば、自爆テロをも厭わない人間にすらなってしまう。
しかし、正しい教えに出会うことが出来たなら、アングリマーラのように過ちに気づき、生き方を変えることができるかもしれない。
政治家から殺人鬼に至るまで、仏陀の教えの中に現代にも通じる様々な救いがあります。
戦争、空爆、テロ、飢餓、貧困、差別。
しかし、一人の心が変われば世界は変わってゆくということを、仏教徒として伝えてゆきましょう、と。
とても有意義な時間でした。
ウィキペディアでラジャパクサ大臣の経歴を拝見し、本当に叩き上げの方と思っていましたが、さすがでした。
京都駅で現薫師と待ち合わせをして、そのまま本山、京都佛立ミュージアムに向かいます。
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