2025年8月22日金曜日

日蓮聖人千年御遠諱に向けて

 


















アバヤギリ大塔とブッダガヤ大塔。発掘と復興の歴史的シンフォニー。


アヌラーダプラのアバヤギリ大塔は、紀元前1世紀に建立され、高さ百メートル近くに及ぶアジア最大のストゥーパとして、悠久の歴史にそびえ立ちました。


その規模はエジプトのクフ王のピラミッドに並ぶほどで、スリランカにおける仏教文明の力と精神の結晶と言えます。今のスリランカ仏教からすれば想像できないと思いますが、ここは大乗仏教の本山、五千人に及ぶ僧が集った学問所、修行の場でした。5世紀初頭、中国の僧・法顕がスリランカを訪れた際にも、アバヤギリは仏舎利を安置し、国際的な信仰の焦点としてその威光を放っていたと記されています。


しかし、この大塔もまた歴史の荒波に翻弄されました。王朝の交替、宗派の対立、そして流血の抗争のなかで僧院は破壊され、多くの僧が命を落としました。仏教の国、僧侶同士で血なまぐさい権力闘争、殺し合いにまで発展したことは、スリランカの歴史の暗部です。アバヤギリ大塔は完全に破壊され、やがてジャングルに呑み込まれ、土砂に埋もれ、かつての隆盛は忘却の彼方に沈んでゆきました。


これはインド・ブッダガヤの大塔の運命とも重なります。仏陀が覚りを開いた場所として信仰を集め、隆盛を極めたブッダガヤのマハーボーディー寺院の大塔は、グプタ朝時代に建立されました。


しかし12世紀以降、トルコ系イスラーム勢力が侵入し、特にバクティヤール・キルジーによるビハール侵攻によって仏教寺院が襲われ、僧侶たちが惨殺されてゆきます。玄奘三蔵も学んだラージギルのナーランダー大学では数千人の学僧が殺され、ブッダガヤのマハーボーディー寺院も壊滅しました。これ以降、インドにおける仏教は衰退の一途をたどります。ブッダガヤの大塔も19世紀まで基壇は土砂に埋まり、塔身は樹木に覆われ、廃墟となっていたのです。


しかし、19世紀の末から20世紀にかけて両者は発見され、発掘と修復の手が差し伸べられました。


アバヤギリ大塔はユネスコの協力のもとに修復され、ブッダガヤは世界遺産として人々の巡礼を受け入れる聖地として蘇りました。


アバヤギリ大塔がスリランカにおける宗派の対立と破壊の記憶を刻んでいるように、ブッダガヤ大塔もインドにおける仏教衰退の証人でもあります。同時にその復興の歴史は人間の愚かさと仏教再生の希望を伝えていると思います。


写真のように、私が初めてアヌラーダプラを訪れた2007年、アバヤギリ大塔はまだ塔の上部はまだ鬱蒼とした木々が生えていて、その姿は映画「天空の城・ラピュタ」に出てくる忘れられた都市や要塞のようでした。


2015年、スリランカ中央文化基金(Central Cultural Fund)とUNESCOによる本格的な修復プロジェクトが完了しました。個人的にはストゥーパに少し木々が生えている頃の方が歴史の重みを感じられて、ありがたく思いました。


人類の歴史。今に続く歴史。興隆。伝承。腐敗。衰退。対立。復興。再生。人間や組織のパターンほど興味深いものはありません。


高祖日蓮大士750回御遠諱が6年後にあるのですが、私にとっての6年間は日蓮聖人千年御遠諱に向けた準備ご奉公としての期間。またゆっくり書きます。


キャンディに着きました。

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