その夕、はじめてミルトの家を訪問した。いつも親会場でお会いしていたので、自宅に伺ったことはなかった。
ミルトといえば、神奈川布教区のグランデ・ファミリアで、イタリアを代表してご紹介した人である。私の2度目のイタリアご奉公の時、彼は私のインタビューに応えてくれた。彼が妻のエンリカといただいた御利益、何度か子供を流産して諦めようとしたが、良誓師からのご指導をいただいてお参詣を開始した。そこにイタリアのご信者さんたちが代わる代わるお助行してくださるようになり、エンリカは無事に妊娠することができたのだ、という感動的なお話だった。
あれから一年半。無事に誕生したのは元気な男の子。名前は、御法さまのお陰で生まれてきてくれた子どもということで福岡御導師が日本名を授けられて、「悠樹・フィリッポ」となった。インタビューの時、ミルトが言っていた。「このご信心は、他の人の為に祈ることが大事なのですね。ずっとそうするべきだと思っていたけれど、本当にそのことが分かりました。私も、HBSのグランデ・ファミリアです」と。ありがたい。
それにしても、この悠樹・フィリッポ。まぁ~、今回で二度目だったのだが、ヤンチャで元気で、うちの次男坊と同じくらいモンスターだった。僕の前で犬とずっとボクシングをしていたし、お看経の前に小さな犬用の出口に身体を突っ込んで抜けられなくなっていた(笑)。いや~、元気なのだから、有難いなぁ。
二人が出会った当時、エンリカはミルトの信仰を知らなかったという。彼女のインタビューで語られているのだが、二人で最初に旅行に行った時のこと。朝、ミルトが「僕には欠かせないお祈りがあるんだ」とエンリカに断って、それから20分ほど懐中御本尊でお看経をはじめたという。エンリカは最初は戸惑ったというが、それでもミルトの御題目の声を聞いているうちに彼の声に「安らぎ」を覚え始めたのだというのだ。本当にすごいお話、素晴らしいお話。ミルトのご信心の強さ、そしてエンリカの愛。
「御題目をお唱えする」ということは、こんなに身近で、大切なことなのだ。ミルトの姿勢から教えられる。だって、みんな、愛する彼女との、最初のお泊まり旅行で、朝のお看経をしっかりできる?そのくらい、ご信心が本物、本当だということだ。これはすごいよ。
今や、エンリカは素晴らしいご信者さんになられた。彼女の御題目口唱は誰より思いが込められていると感じる。そのくらい彼女のお看経の姿勢は素晴らしい。
ミルトは保険関係の仕事をされているが、ここ一年ほど仕事の状況がよくなかったという。ただでさえ、今のイタリアは経済状況が厳しい。一人の収入で家族を支えていくことは容易なことではないと聞いた。そんな状況にもかかわらず、彼は持ち前のご信心で毎日欠かさず親会場へお参詣をされ、お参詣をされるたびに御有志をされ、事務の役務ご奉公にも励まれてきた。こうして功徳を積んでいる人が必ずいただくように、厳しい状況だった彼も、最近になって仕事の量が倍に増えたという。今借りている仕事場のオフィスを購入することが視野に入ってきた、とこのお話を翻訳してくれた麻樹ちゃんから教えていただいた。
そのミルトとエンリカの御宝前、御戒壇。思いが込められている。お祖師さまの「古色」の御尊像もしっかりと護持されており、「おかとう」も「御綿」も、しっかりとお掛けしてお給仕しておられた。まず、リビングの壁一面、中央にご奉安されていたことが嬉しかったし、感動した。こんな風に素敵に、御本尊を奉安しておられる。水塔婆という小さな御塔婆まで、綺麗に配置されていて、毎日思いを込めてご回向をされているのだそうだ。
日本の若い人たちに教えてあげたーい。なんか、邪魔そーに、格好わるそーに、端っこに追いやられる雰囲気があるからなぁ、日本。それって、結局はご信心が自分のものではないということだ。押しつけではなく、自分で、精一杯の思いを込めて、「御本尊さまを自宅に迎える」という気持ちが大事。御宝前が自宅にあるのと、無いのとでは、天地雲泥の違いだ。無くても良いと思って生きていることこそ、幸せへ遠回りしていることなのに。
ミルトのお宅でティッツィアーノと待ち合わせをして、ティナを一旦宿泊場所に案内。私と良誓師、ミルトとエンリーカでお看経。気持ちの良いお看経だった。私から、1年前に撮影し大きく引き延ばした悠樹・フィリッポ・フリッツィの写真(御法門で使わせていただいていた)をプレゼントしたのだが、御宝前あるリビングの茶箪笥に飾ってくれていた。「この写真は額を買って飾るんだ」と言っていた。
ありがたい。
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