京都から横浜に帰ってきて、清顕師が新横浜駅まで迎えに来てくれた。彼は、誰あろうアメリカを一緒に横断した「隆二くん」である。その隆二くんは、青山学院を卒業して就職も引く手あまたであっただろうに得度(出家。僧侶になること)を決意したのであった。青山学院はクリスチャンの学校。その学校で彼が書いた卒業論文のテーマは「聖地エルサレム」。僧侶になることを前提に、仏教的にエルサレムに集約されている旧約聖書から派生したユダヤ教、キリスト教、イスラム教を分析した。いや、私が聞いていて青学の教授が怒るのではないかと思うほど、しっかりと宗教的な問題の本質を仏教的に突いていた。そして、2年前の夏、鈴江御導師にご剃髪をいただいて、本門佛立宗の僧侶となった。アメリカを横断した時に明らかになった彼のおっちょこちょいな性格は変わらないが、私も頭が下がるほど真っ直ぐにご信心に向かい、ご信者さんと向き合い、ご奉公してくれている。本当に有難いと思う。
妙深寺には素晴らしいご信者さんがたくさんいる。そして、何より素晴らしい教務(一般的には「僧侶」のことを本門佛立宗では「お講師」「教務」という)が揃っていると私は胸を張れる。それぞれ一騎当千の教務であると確信している。
開導聖人は「寺の大小、比ぶるはアホ」と仰った。では、何が大事かと言えば、「どこに出しても恥ずかしくない本物のご信者さんが何人おられるかです」と名古屋建国寺の石川御導師は私に教えてくださった。本当にその通りだと思う。今までこの言葉を忘れたことがない。では、「本物のご信者」とはどのような方かといえば、心からご信心させていただいていることに随喜し、御題目を唱え重ねることはもちろん、他の人に御題目口唱、ご信心をお勧めしようと実践されている方。そうした方を一人一人丁寧に生み出す、お育てする、御法の筋をお伝えするのが「教務さん」である。当然ながら、世間でも「デモ坊主」とか「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」「布施泥棒」などの言葉があるように、「本物の教務」であることは絶対条件。そういう意味でも、妙深寺には一騎当千の、素晴らしい教務さんがいてくれると思う。
今日、帰山後の報告を受けていても、それぞれの担当教務さんのご奉公に随喜した。
大変な病で苦しんでおられる方へのお助行、その中でのご家族との話、お怪我をされた方のお宅に急いで伺ったとか、手術のお助行をさせていだいて、その経過は○○です、、、とか。「手を握りお話をし、○○とお伝えし、、、」、「どうか、ここで家族が一つになって、、、、」と。信仰師にしても、涙ぐんでこういう話をしてくれる。有難くて有難くて涙が出る。
世間では子どもが母親を殺して首を切り、別の事件では親が1才の赤ちゃんを殺したと報道されているのに。二人乗りが出来ないからと赤ちゃんをバイクのヘルメットを入れるボックスに放り込んでパチンコをしていたという。パチンコが終わって帰ってきて、ボックスを開けたら死んでた、と。心が締め付けられる。痛くなる。
しかし、ご信心をさせていただいて、これほどの有難いご奉公をし続けてくれる教務に見守られていることは何という有難さだろう。住職だから言っているのではなく、心からそう思う。
先代のご住職は、コンビニエンスショップが24時間営業を始めた頃に、「お寺はいつだって24時間営業だ」と仰った。その当時から妙深寺の教務は24時間、ご奉公体制を崩さない。家庭内で問題があったと電話が来たら夜中でもお助行に伺う。ご信者さんからSOSの電話やメールが入ったら、即座に動く。亡くなられた方から連絡が入れば真夜中でも明け方でも枕経に行く。さらに、開導聖人の御指南の通り、ご信者の死は帰寂であり、晴れて寂光に帰るのであるから寝巻きのままではかわいそうだと言い、出来る限りその方のキチンとした服装をしていただく。そのお着替えまで教務が手伝う。
家族と共に御題目をお唱えし、語り合い、忙しい合間を縫いながらでも、心と心でご奉公してくれている。本門佛立宗が真実の仏教であることを、まず「行動」で示すのが私たち教務なのだから、身が引き締まる。
24時間。妙深寺の教務部では、今この時間でも会議をしてくれている。寺報やインターネットのご奉公があると徹夜をすることもある。もちろん、朝の弱い教務もいるが怠けて寝ている教務は一人もいないと断言できる。朝だけ起きて、勤行が終わったら昼まで寝ているのとは訳が違う。ご信者さんは朝参詣した後で会社や勤めに行くのだから、寝ている場合でないことは至極当たり前のことだが。
とにかく、今日は教務さんの有難さを感じつつ、明日の御講の準備を終えて寝ようと思う。(とは言いつつも、いっつも若い教務さんに怒っているご住職でした)
2007年5月18日金曜日
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