2008年5月28日水曜日

立正安国論 上奏750年

 夏を思わせるような穏やかな日。

 ニュースでは連日恐ろしい事件ばかりが報道されてる。あるいは、四川大地震の被害状況や救援活動、ミャンマーのサイクロンの被災者と救援活動について報じられている。すぐにでも飛んでいきたいところだが、いまは義援金をお願いするほか術がない。本来、救援にかけつける術を持っていなければならないし、持つべきだと思うのだが。

 ブラジルの御導師が「日本は怖いですね」と言っていた。「なんで?」と問い返す。ブラジルは非常に犯罪の多い、連日殺人事件や強盗が起きているのに。「いや、ブラジルの犯罪には理由があります。金が欲しい、女を取られた、復讐してやるとか、日本は理由がないのに人を殺すんですよね?人を殺したいから殺す、誰でもよかったって言って駅のプラットフォームから人を突き飛ばして殺すんでしょ。本当に怖いですよ」と。そうだ、そういう見方があるのか。

 日本は、これほど豊かで、犯罪も少ないと自負していたのだが、犯罪大国だと思っていたブラジルの方にこのように思われているのか。確かに、ここに何度も書いたように、大地震の横死者に匹敵するほどの方々が自ら命を絶っている日本。昨日、やはり昨年も自殺者は3万人を超していたと発表があったばかりだ。大地震もなく、テロも戦争もないのに、これほどの自殺者を擁する日本。しかも、四川大地震の救援にかけつける人々、そこで救い、救われしている報道の陰で、陰湿な殺人事件、それも一昔前なら世紀の猟奇的殺人事件とされても不思議ではないような凶悪な殺人事件が立て続けに起こっている。これをどのように考えたらいいのか。

 心の鬼に呑み込まれている人が余りにも多い。お祖師さまが、今の世をご覧になれば、あまりの状態に再び立正安国論を上奏されるに違いない。

 「旅客来りて嘆いて曰く、近年より近日に至るまで、天変地夭、飢饉疫癘遍く天下に満ち広く地上に迸り、牛馬巷に斃れ骸骨路に充てり。死を招くの輩既に大半に超え、悲まざるの族敢て一人も無し。然る間或は利剣即是の文を専らにして西土教主の名を唱へ、或は衆病悉除の願を恃みて東方如来之経を誦し、或は病即消滅不老不死の詞を仰ぎて法華真実の妙文を崇め、或は七難即滅七福即生の句を信じて百座百講の儀を調へ、有は秘密真言の教に因りて五瓶の水を灑ぎ、有は坐禅入定の儀を全うして空観の月を澄し、若くは七鬼神の号を書して千門に押し、若くは五大力の形を図して万戸に懸け、若くは天神、地祇を拝して四角、四堺の祭祀を企て、若くは万民百姓を哀みて国主、国宰の徳政を行ふ。然りと雖も唯肝胆を摧くのみにして弥飢疫に逼り、乞客目に溢れ死人眼に満てり。屍を臥して観と為し尸を並べて橋と作す。観れば夫れ二離璧を合せ五緯珠を連ぬ。三宝世に在し百王未だ窮らず、此世早く衰へ其法何ぞ廃れたるや。是何なる禍に依り、是何なる誤りに由るや。主人の曰く、独此事を愁へて胸臆に憤?す。客来りて共に嘆く、屡談話を致さん。夫れ出家して道に入る者は法に依つて佛を期する也。今神術も協はず佛威も験なし。具に当世の体を覿るに愚にして後生の疑を発す。然れば則ち円覆を仰ぎて恨を呑み、方載に俯して慮を深くす。倩微管を傾け聊か経文を披きたるに、世皆正に背き人悉く邪に帰す。故に善神国を捨てゝ去り、聖人所を辞して還らず、是を以て魔来り鬼来り、災難並び起る。言はずんばある可からず、恐れずんばある可からず。客の曰く、天下の災、国中の難余独り嘆くに非ず、衆皆悲しむ。今蘭室に入て初めて芳詞を承はる、神聖去り辞し災難並び起るとは何の経に出でたる哉、其の証拠を聞かん。」

 立正安国論の冒頭。来年は立正安国論の上奏から750年。今一度、拝読させていただかなければならない時が来ていると思う。

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