ウクライナの西の街でも毎日空襲警報が鳴っている。ヘラクレイトスは「戦いは万物の父である」と言ったが、それだけが人間の性質であればサバンナの動物たちと大差ない。
残念ながら国は滅びる。しかし、文明はそう簡単には滅びない。文明は様々な国の中で生き延びる。そこに生きる人間が伝承するからだ。
拙著『仏教徒 坂本龍馬』を通じて書いたことは、日本の文明と日本という国のことだった。
日本という国は明治維新という革命によって急仕立てで船出した。新しい日本国には様々な選択肢があったが、にわか仕立ての国家観は「中華思想」の日本版のような思想を中心に築かれた。
坂本龍馬や海援隊の公式出版物『閑愁録』には日本文明の根底に流れる「仏教」の普遍的な思想によって国づくりをすべきという主張があったがそうはならなかったし、日本は日本文明というよりは中華思想(ここが中心の国という意)の持つ帝国主義思想の変形を選んだ。
人間は実験の途上にある。人類は数限りない政体を生み出し、試みてきたし、発展と衰退を繰り返してきたし、戦争も続けてきた。進歩し、後退し、それでも進化し、はたまた滅びてきた。
宇宙の巨大さに比べれば取るに足りないと思われるほど小さな存在だが、限られた極微の命の時間を使い、その経験を後世の者に繋ぎつつ今がある。
ありとあらゆる人生が、今の自分の中に生きている。せめて時置かず終わりを迎える人生の雫が、次の世に生きる人びとの遺産となるように努めたい。
人生を意味あるものにしてほしい。死後も大切なものとして残る何かを成し遂げてほしい。
子どもたちには、この大いなる実験を受け継ぎ、その成功を夢見て生きてほしい。
いい著書に出会えた日は清々しく、かすかな希望が胸に湧く。
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