台風一過。深夜、横浜を巨大な台風が通過した。ものすごい轟音が鳴り響いていた。朝、境内地には木々が散乱していて、それは大変な強風が吹き荒れたことを物語っていた。
「大風は一度吹いても家がとぶ
つねの風では 百度吹いても」
開導聖人の御教歌。改良の大事を教えてくださっている。これほどの台風が来れば、人間の弱さを誰もが痛感し、恐ろしくも思い、何らかの対策が必要であったり、災害に対する準備をするもの。日頃の生活についても考え直すことを迫られる。日頃、何とも思わない「風」であっても、今回のような台風が一度来ただけで何かに気づかされるということがある。その「気づき」の大事をお示しなのであろうか。
まだ台風は日本を縦断中であるから予断を許さない。特に、東北地方や北海道で農業を営まれている方にとっては気が気ではないだろう。被害が最小限になることを心から祈念して止まない。
この台風通過について、あるいは災害についての捉え方だが、Yaccoさんのブログに非常に感銘したので、是非ご覧いただきたいと思う。
妙深寺には、93才になる小礒妙清師という尼さんがおられる。日博上人の御弟子であり、私などは幼い頃から養育していただいて、おしめまで替えていただいていたという。申し訳ない限り。
その妙清師は、26才の頃、生きることに絶望していたという。そのような様子を見て、妙深寺のご信者さんがご信心をお勧めになった。何の希望も持てなかった小礒女史は、言われるままに岡野町にあった妙深寺を訪れた。
お参詣の後、妙深寺の玄関を出た時に気づいたこと。それは「空が青い」ということだったとお話ししてくださった。それまで、死のう死のうと考えてきたので、ずっと下ばかりを見て歩いてきた。しかし、妙深寺の本堂で御法さまにはじめてお目にかかり、顔が上がったのだ。そのことだけ、それだけ、他人から見ればそうかもしれないが、絶望の果てに行き着いたお寺で、小礒女史は「空って青いんだなぁ」と感じた。感じたことを60年近く経っても忘れていない。御法さまが助けてくださった、と。
妙深寺は地下鉄に看板を出したのだが、それは妙深寺の建物の写真を飾るのではなく、妙深寺の本堂から見た「青空」をモチーフとした。それはこの小礒女史、妙清師のエピソードによる。この厳しい世の中で、声に出せない悲鳴を上げながら生きている誰かに、妙深寺にお参詣して「青空」が見えるようになっていただきたいという思いからである。
その後、妙清師は得度され、日博上人にお給仕を尽くされた。また、死刑囚との交流を続けられて、多くの死刑囚の方々の心の支えとなった。故人となった野村秋介氏が敬愛していたのも妙清師であった。刑務所で教化され、生涯妙清師へ教えを請うておられた。妙深寺の玄関に掛けられている大きな絵は、その野村氏が妙清師を通じて妙深寺に贈呈したものであった。
ブラジルからメールが来た。コレイア御導師がまた送って下さった。斉藤御導師とコレイア御導師は、今年の春、妙深寺にお参詣してくださった。その時、ブラジルにとって御縁の深い日博上人について様々に物語りした。特に、日博上人亡き後、そのご奉公の詳細を知っておられるのは妙清師である。その妙清師とお二人は、手を握り合いながらお話をされていた。感動的な場面であった。
コレイア御導師は、ブラジルに於いてポルトガル語の機関誌「Lotus」を発行されている。その表紙に妙清師と握り合った「手」が飾られていた。もちろん、記事の内容についても日博上人のご奉公や、妙清師が語られたことについても掲載してくださったのであった。
妙清師。昨夜、久しぶりにお話をした。ブラジルからのメールについても、「Lotus」についてもお話しした。高齢のために、眼と耳が非常に悪くなっているのだが、ご信心とその魂は全く衰えていない。世間でいう「尼さん」とは全く違う。本物である。
「何時に 死ぬやらしれぬ からだして 覚悟なきをば 凡夫とぞいふ」
昨日、妙清師から私にいただいた開導聖人の御教歌。また「覚悟」とある。そう、「覚悟」がない凡夫のままではいかん。高齢の妙清師から教えていただく御法門は、何より尊い。いつまで経っても、佛立教務としての誇り、自覚、覚悟を忘れていない。もちろん、身体は高齢で衰えてはいる、気力も自分の身体を考えれば衰えるだろう。しかし、「ご信心」だけは全く衰えていない。これが佛立教務道である。
ブラジルからのメールには、続いてインドでのセッションの写真も表紙を飾っていた。ポルトガル語でコレイア師が開設しているウェブサイト「Budhismo Primordial」についてもご覧いただきたい。現在、HBSの中では最も充実している。
それにしても、有難い。実は、9月の予定の中で、公式なご奉公、つまり御講席などが無いのは、この6日と7日しかなかった。明日、8日からは御講席もはじまり、週末には敬老松風大会がある。
こうして、気候の悪い中での御講席にならなくて、本当によかったと胸をなで下ろしているところなのだ。このタイミングが、いつもいつも有難い。
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