2025年4月19日土曜日

「情報のカルマ」の時代に生きる






世界は分断というか、分裂の勢いを増してる。それは遠くで起きていることではなくて、それぞれ一人ひとりの身近な人生の中で毎日のように起こり、進行している。


「分断(division)」が何かを境に「別れている」状態であるのに対して「分裂(fragmentation)」は元々一体だったものが内側から崩れてバラバラになっていくイメージ。どんどんバラバラになっている。まさに「分裂の時代」だ。


一つの事件や事象が立場や視点によって真逆の評価を受ける。


・同じ出来事をめぐってまったく逆の評価がされる。


・科学、歴史、倫理、宗教でさえ、合意形成の土台そのものが失われている。


・インターネットによって「情報」ではなく「認知の現実(perceived reality)」が分岐してしまった。


情報の量が増えたことによって「知識」が深まるのではなく、世界の「解釈の座標軸」そのものがズレていっている状況。


本来、科学や宗教は物事を統一的に理解する「真理」への「アプローチ」だった。しかし、現代では「真理」の座は揺らぎ、多くが自分に都合の良い「物語」を信じるようになった。これは「知」の構造が「普遍性」から「相対性」へと大きく移ったことを示す。そして、それが合意なき時代、分裂する世界を生み出している。


世界情勢、気候変動、ウイルス&ワクチン問題、様々な政治や政策など、あらゆる「イシュー(問題・課題・論点)」が、大きく分裂した状態。なぜなら、人びとは同じ世界に住んでいるように見えて、まったく異なるメディア空間で生きているからだ。そして、現代では「事実」そのものではなく、「事実をどう読むか(ナラティブ)」が争点になってしまっている。


かつて存在した権威や研究や解釈すら信用を失い、「この専門家の意見は尊重すべき」「この歴史的事実は否定できない」という「共有された前提(common ground)」すら崩れつつある。こうして合意形成は困難さを増し、粘り強い議論は除外され、分断と対立が顕著になった。


今や人びとは毎日情報の洪水を浴びている。そればかりか進化したアルゴリズムは個々の嗜好や志向にあった都合のいい情報を流すように設計されている。結果、人びとは「事実」ではなく、自分の「認知」を強化してくれる「情報(confirmation bias:確証バイアス)」だけを浴び続けることとなる。


こうして生まれるのが「フィルターバブル(filter bubble)」=「自分と同じ意見の人ばかりの世界」であり、「エコーチェンバー(echo chamber)」=「同じ主張が繰り返されて「事実化」されていく空間」だ。この環境の中に置かれてしまうと、もう同じ現実を見ていても、それぞれがまったく異なる「認知の世界(perceived reality)」を生きることになる。


実に、恐ろしい。現在進行中の、世界を、日本を、私たちを、私を、巻き込んでいる、社会現象。新型コロナウイルスよりも恐ろしい心の健康を蝕むウイルス、環境、状況にある。


御教歌

「おなじよに すむと見ゆれど 信不信 心のすみか 常にことなり」


同じ世界に生きていると思っていても、実際には違うという事実。次元が変わってゆく、次元が違ってゆく。同じ世界に生きているように見えて、生きていない、生きていけない、ということがある。


人間は「縁」によって生まれ、「執着」によって迷い、「分別」によって対立し、「謗法」によって苦を重ねる。


人類は「情報のカルマ」の時代に生きている。今、この瞬間も、地球上のあらゆる人びとが、無限の情報の海の中で呼吸し、何を信じ、何を疑い、何を選ぶべきか、毎日問われ続けている。あらゆるイシューにおいて、「信と不信」、「情報と感情」、「権威と自由」、「真実と物語」のせめぎ合いが行われている。


分裂と対立の中で、「人類の進むべき方向性」そのものが見失われていると感じる。しかし、これまでそうであったように、時に取り返しがつかないほど失敗し、時に恐ろしいほどの代償を払いながらも前進してきたように、近い将来、今回の地球の人類が、価値観をアップデートすると信じたい。

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