2008年6月26日木曜日

ローマでの御講

 ローマのホテルに到着したのは22時を過ぎていたと思う。日本からイタリアへのフライトは非常に長い時間を要するので、参加者一同疲れもピークに達していたはずだが、空港からホテルに向かうバスの中で今回の団参の目的をあらためてお話させていただいた。バスの窓には美しい真ん丸の月が浮かんでいて、参加者を歓迎してくれているようにも思えた。
 今回の団参は、イタリアという海外弘通の最前線のご奉公、そこに生きる海外の佛立信者の姿、ご信心前から学ばせていただこうというもの。何度耳で聞いてもなかなか分からなかったことを、実際に自分の眼で見ていただきたい。耳で聞いていただきたい。そして、その新鮮な感動によって、自分の信行ご奉公の改良、ご弘通ご奉公の意欲に変えさせていただければ有難い。同時に、ここで得たことを日本に帰って大いにご披露していただきたいということを申し上げた。
 ローマに到着した翌日、マッシーと麻樹ちゃんのお宅で御講を奉修させていただいた。玄関まで御導師も出てきてくださり、温かく迎え入れてくださった。このローマでの御講、マッシーさんのお宅には二回目の訪問という参加者も多く、それぞれに再会を喜んでおられた。広い庭と美しい芝生。「ローマの住宅事情を考えると、こんなに素晴らしいお宅は珍しいのですよ」と、お参詣してくださったローマ在住のミホさんが教えてくださった。こうして御講が勤められるのが有難い。
 2月、ローマのご奉公に来させていただいた際に、ヴァレリオ君のお宅を訪問した。ヴァレリオ君は事故で身体の自由を失った青年。以前から日本文化に興味を持っていたらしいのだが、特に身体に障害を負ってから仏教を学ぶようになった。最初は同じ日蓮系でも違う宗派に属していた。しかし、その教え方に非常なストレスを感じて、「ナムミョウホウレンゲキョウ」と唱えるようになったが、身体も精神的にも以前より悪くなったという。そして、その宗派を退会した。
 しかし、ヴァレリオ君は日蓮聖人の教えは本来彼らのようなものではないはず、御題目を有難いと思う気持ちは変わらず、一人インターネットなどで本物の御題目の教えを伝える宗派を探した。そして、本門佛立宗と出会った。福岡御導師と面会し、決定して、あらためてご信心をはじめるようになった。
 その後、マッシーや麻樹ちゃん、時にはフィレンツェから良誓師も彼の家にお助行に通うようになり、ヴァレリオ君は見事に元気を取り戻していった。もちろん、彼の身体は首から下は動かず、実は言葉もなかなか声にならない。会話はすべてコンピューターに映る文字で行う。それでも、一生懸命に口を動かし、鼻で息をしながら、「ナムミョウホウレンゲキョウ」と声に出そうとしてくれる。
 私がお助行に行かせていただいた時には、マッシーと麻樹ちゃんに加えて、ゆりさんとアンナマリアが一緒にご奉公してくださった。私の言葉を真剣に、柔らかい笑顔を作りながら聞いてくれるヴァレリオ君。私も彼がパソコンに書く文字を追いながら、彼がどれほどご信心に出会えて喜んでいるかが分かった。これから、このご信心をたくさんの人に伝えるために自分なりに努力したい、自分のような身体でもご奉公をさがしている、広報係のように新聞などを作ってご奉公したいのだ、ということを話してくれた。
 そうした地道なご奉公、心と心のご奉公、お助行をしてくれているのがローマの皆さんである。日本の皆さんも当たり前のように日々にお助行してくださっていると思うが、ローマという大都会で、距離も離れ、お寺もない中でのご奉公は本当に大変だ。フィレンツェの御講ですら、日本の感覚でいえば数百キロ離れたところからバスや電車を乗り継いで毎月御講にお参詣しているのだから。その中でのお助行、ご奉公、そしてヴァレリオ君の身体の状態。絶望の中から希望を与え、見事に育成している姿に、「あぁ、ありがたいなぁ」と思う。事故で突然身体の自由を失うということ。それはどれだけの苦しみだろう。ヴァレリオ君の笑顔は、本当に素晴らしかった。
 ローマの御講では、まず私がご挨拶をさせていただき、続いて昨年学徒となって「良風」の名を拝受したマッシーさんからお参詣者にご挨拶をいただいた。そして、福岡御導師の御法門を聴聞させていただき、参詣者一同大いに感動させていただいた。今年はスリランカ開教10周年、御導師が体験されたシンガポールでの出来事、とにかく前向きに、ひたむきに前に進んでいくことの大事、その中で御法さまが必ずサポートをしてくれるということを、スリランカ・イタリア弘通での実体験を交えながらお話してくださった。
 その後、毎回のことながら麻樹ちゃんから手作りのご供養をふるまっていただいた。これだけの量を作るのは大変なことだったと思う。麻樹ちゃんはお料理学校で学んだプロ顔負けの腕前で、麻樹ちゃんから日本料理を学ぼうとする人たちもいる。今回はイタリア到着2日目ということで、「まだ日本料理は恋しくないですね」と気づかってくださり、美味しいイタリア料理でのご馳走となった。
 広い庭を散策する人たちもいて、涼やかな風の通るテラスでのご供養は気持ちの良い時間だった。ご供養の途中でローマのゆりさんも合流して、楽しい会話。ゆりさんも、毎日のお看経も欠かさずされていて、麻樹ちゃんとのご信心がとても有難いことを物語っていた。それにしても、ゆりさんの活躍を聞いていると数年前が嘘のように感じる。これも、ゆりさんがご両親のご回向をしっかりとはじめられて、日々にお看経を欠かさずにきたお計らいだと思う。
 ご供養の中で、直子さんからショートスピーチをいただいた。ご主人の病気、そこから学んだこと、感じたこと、いまのお寺のお助行の輪、人と人とのつながり、一人息子である進之介くんのことなど、楽しく、それでいて何か聞いていて涙が出そうになった。続いて、堀田さんのご主人もお話をしてくださった。ご信心は短期的に燃えるようなものではなく、とにかくずっと続けてさせていただくことが大事であると思っています、と。有難い、温かいお話だった。
 ご供養の前に、みんなで庭に出て記念写真を撮った。ローマの照りつける太陽の下、少し日焼けするのを我慢して「はい、チーズ」。撮ってくださったのは添乗員の小川さん。今回の楽しい旅はこの方によるところが大きい。添乗員の方のキャラクターでこれほど旅が楽しくなり、安全になるのかと、本当に頭が下がった。ありがたい。
 御導師はじめ、マッシー、麻樹ちゃん、ゆりさん、ミホさんのお見送りをいただきながら、御講席を後にした。バスは一路ローマ市内へ。既に夕方になっていたが、駆け足でローマを散策する方々もおられ、充実した時間を過ごしていた。

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