2008年6月27日金曜日

不景気を前にして

 先日の朝、淳慧師の御法門で引用された御指南は、まさに現在の社会と人々にとって必要な御指南だと、有難く拝聴させていただいた。
 近頃、本当に良いニュースが少ない。社会不安は増す一方。世界的な経済には陰りというか作為的な原材料高、一握りの富裕層からの投機的な資金の動きが、世界中の人々の暮らしに影を落としているように感じられる。ヘビが自分の尾を食べているような開発ラッシュ。圧倒的に地球環境が人間界の影響によって破壊され、温暖化や天候不順、水不足によって人類存続の危機も見えてきているというのに。投資先から投資先へ。ヘビが自分の尾を食べてる。客観的に見ていると世界経済のシステムそのものが破綻していることに気づく。恐ろしいことだ。
 残忍な事件が後を絶たない。その背景にも政治の無責任さを感じる。しかし、それも結局は国民全員の選択ということだろう。新・個人主義、グローバリズムの中であえいでいる人たち、腐敗した国家システム、人間の欲望の強さの前に、人間のあるべき暮らしが壊れていく。今朝もまた、家族の間で殺し合い。「子どもを育てることが怖い。自信がない」とは親の声。恐ろしい世である。
 圧倒的な不景気も、ガソリン1リットル200円(本来はあり得ない。原油価格は80ドル前後が妥当なはず。投機的な資金が流入して原油高を煽っている。過去に金融が人々の暮らしをこんなにも変えたことはない。必ず何かが起こる)というのも見えてきてしまった。政治も役には立っていない。本物の政治家がいない。情けない状態だと思う。
 希望とは世界の状態ではなく心の状態である。そういう一文を眼にした時、「あぁ、そうだなぁ」と思った。不安が広がっている社会、一人一人厳しい生活を強いられている中だけれども、「希望」を捨ててはいけない。愚癡を言っている場合ではないのだから。それは本当の仏教徒ではないのだから。
 お祖師さまの御書、門祖聖人の御聖教、開導聖人の御指南を拝して、世を見て、世に棲む。
 開導聖人の御教歌から学ばせていただく。
「世の中をうらむはおろかかひもなし 苦楽はおのが報ひ也けり」
「世の中をうらやむ事は更になし 御法に値ひし我をよろこぶ」
 下に挙げさせていただくものが御法門で引用されていた御指南。まさに、今の社会に生きる私たちが拝読すべき御指南だと思う。ゆっくりと、我が身、我が心、我が生活に当てて、拝見していただきたい。
「宗祖大士の御弟子旦那となりて、あるにまかせて営めば、今日も面白おかしうくらすべし。酒も酔わぬ程にのみ、欲も信心をわすれぬ程にして、御法のためには布施・供養、それがでけねば身を労し、世間の欲と仏法の算盤(そろばん)はさかさまに持つが、第一の徳用なりと思しめすべし。長い浮世に短い命、一日の日も御奉公の日数に候。必ず必ず人はしらぬとて、すこい事して徳したとは思しめすなよ。善悪因果、むくひはのがるる道なし。正直程よきものはなし。正直にさへくらせば、世の中の不けいき(不景気)は苦にならぬものに候。却つて信行の秋入(とりいれ)どきに候。故に、一に信心、二に商法、三に正直。所願成就」
 あぁ、ありがたい。
 希望は信心である。
 未来への希望は人間にとっては「信」であり、人類にとっては「仏教」であろう。

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