2008年12月13日土曜日

昨今の社会状況に思う

 あっという間に週末。日曜日は、午前中はJICA横浜でシンポジウムに参加し、在日ブラジル人の方々と交流する。午後は御講席が二席。今夜は本年最後となる布教区参与会がある。時間があるので、ブログの更新をしたいと思って。長い文章、嫌われているけど。

 それにしても、私たちの暮らしに直結して、非常に厳しい状況が続いている。先日も書いたが、金融危機が圧倒的な破壊力で身近に迫ってくるのはこれからだ。このブログでは、さまざまな形で社会の在り方や行く末などについて書いてきた。こうして現実恐ろしいまでに社会不安が広がり、ご信心をされている方にまで影響が拡大していることが哀しい。

 原油価格が1バレル150ドルに迫った頃、70ドル前後が適正で、現在の投機的な暴騰は極めて異常であると書いてきた。最近30ドル代まで下落したのだから予想を超えている。3分の1にまで高下したということだから、その衝撃は大きい。1ドルは80円台という。その影響は、年始から春、あるいは初夏まで、雇用や暮らしに決定的な影響を与えていくことは疑いない。「備えあれば憂いなし」と書いてきたが、現実に100年に一度の危機が訪れているのだろうか。

 おかしいなぁ。おかしいことだらけだと思う。あれだけ、原油高騰で航空券のサーチャージ【航路各社が課する割り増し料。燃料代の上昇や為替相場変動に伴う追加補填料】が上がりに上がってきた。先月より今月、今月より来月と、現有価格に連動して、あれだけ敏感に上がってきたのに、逆に下落していったら全く下がらない。イタリア団参もスリランカ団参でも、格安チケットを買っても、サーチャージが団参費用を押し上げていたのに。

 誰か何か言わないのだろうか?しかも、円高。輸出産業は極めて厳しいだろうが、この円高を悪だとばかりも言えないはず。円高が進み、原油価格が下がっているということは、一体輸入している物品がどのくらい下がっているか分からないではないか。国内の産業の半数が輸出に頼っているとはいえ、輸入産業は原材料高と円安の中で経営を進めてきたはず。そのバランスシートも検証できていない。

 なんと、あれだけ高騰に敏感だったのに、航空各社は来年の1月までサーチャージについて触らずにいた。本当に、おかしい。おそろしいなぁ。ほんと、サーチャージは税金を二度払っているようなものだから。こうして、社会のシステムやマネジメントが、すべて壊れているようにも思ってしまう。独立した学術機関もジャーナリズムもないのかな?頑張って欲しいと思うが。

 連日、小泉政権は終わっていないと、歯がみする思いでニュースを見ている。よく暴動が起きないものだ。小泉氏が掲げた矮小化されたテーマで衆議院選挙が行われ、ホリエモンの出馬や女性の刺客などで盛り上がり、圧倒的多数で自民党や公明党の与党が過半数を得て以来、これほどの世界的な問題と情勢の変化、紆余曲折があっても、そのまま圧倒的過半数で法案が通過している。ジャブジャブとお金が使われている。本当に、このまま国民不在の政治が行われていたら日本はどうなるのだろう。森元首相は以前の選挙前に「有権者は寝ていてもらった方がいい」という内容のことを言ったが、それが日本の政治。宗教団体など、ある目的を持った人たちは万難を排して選挙に行く。それ以外の人たちは政治に関心がない、黙っていて選挙に行かないでいてくれた方がやりやすい、ということか。本当に、このままでは日本はアメリカの衝撃吸収パットの役割を果たし続けるしかないのではないか。

 年末、仕事を失い、収入が途絶え、住む家まで失うかもしれない方々がいるかもしれないのに。全く信頼できない政府に緊急対策をしてもらっても、23兆円規模を拠出するといわれても、何も感じない。野党が埋蔵金を指摘していた時には「そんなものはない」と言っていて、今や政府の出す政策のほとんどが埋蔵金であるということなど、なぜ誰もなにも言ってくれないのだろう。おかしくないか?

 少しだけ 困っている人がいて、それを助けてもらいたい。緊急対策もありがたい。しかし、それも政局を睨んだ政治的邪心から出ているとしか思えない。根本的に国の在り方を問うチャンスがあったのに、それをしない。私はブッシュ氏に盲目的に追従するしかなかった小泉元首相を忌避しているが、まだ彼のやったはちゃめちゃな政治に振り回されているとしか思えない。小泉氏は期待はずれで、今や単なるお調子者としか思えない。いま、危機的な国民の暮らしや世界情勢の中、自分の得た議席を振り回して政府や与党が無理に無理を重ねて選択をしてしまっていることについても無関心を装っている。そして、引退らしいのも、何とも口惜しく、情けない。

 吉田茂氏以来、現在の麻生首相もカトリックの信徒らしいが、それと西欧追従の考え方は何らかの因果関係は無いのだろうか。戦後、進駐軍はキリスト教徒を手厚く保護し、ビジネスチャンスを広げていったとも言われている。ピウス12世がマッカーサーに依頼して進めた日本のキリスト教化は失敗した(韓国では成功を収めた)が、経済分野では多くがキリスト教徒となり、経済活動拡大のために経営者がキリストとして各国と信頼関係の構築に努めた。まるでローマ帝国の政策のようだが、社会のリーダーの信仰を西欧化することと、日本の優秀な人材をアメリカで教育することを大きな戦後政策としたことも事実だろう。海外で通用する優秀な人材を日本が輩出することは大切だと思うが、せめて信仰は…と思う。

 話が脱線して、書かなくてもいいことまで書いている。脈絡が繋がらず、申し訳ないが、これほど暮らしが厳しくなっているにもかかわらず、納得できないことがあまりにも多いので、書いてしまった。また、ゆっくり書こう。ピウス12世のこと。吉田氏のことなど。

 来年、立正安国論上奏750年の御正当年。お祖師さまは39才で立正安国論を当時の最高権力者に上奏された。それは、政治活動ではない。苦しむ人々、民を救おうと、そのためには、正しく信仰を立てる、正しい信仰を立てることが欠かせないとお諭しになった。立正安国論とは、御一生を通じて果たされた菩薩行の全世界への表明だったと思う。

 仏教は「ハルマゲドン」などの世紀末思想のようなものを説いているのではない。確かに、仏典には様々な末法の様相が説かれており、お祖師さまもそれらを立正安国論に引用されている。しかし、あくまでも仏教では、「人の心が曲がってゆけば、社会が間違った方向にゆく」というもの。「天罰」という概念ではないのだから。

「佛法やうやく転倒しければ世間も又濁乱せり。佛法は体のごとし、世間はかげ(影)のごとし。体曲れば影なゝめなり。」

とお祖師さまは富木さまというご信者にお諭しになられている。立正安国論には、確かに御経文から引かれた恐ろしい記述も続く。

「当時に虚空の中に大なる声ありて地を震ひ、一切皆遍動して猶し水上輪の如し、城壁破落し下ちて屋宇悉く破れさけ、樹林の根、枝、葉、華、葉、菓、薬尽ん。」

「諸有の井、泉、池、一切尽く枯れ涸き、土地悉く鹹鹵(かんろ)し、敵裂して丘澗(くけん)と成らん。(すべての井戸も泉も池も涸れ果てて、土地は塩気を含んだ不毛の地となり、ひび割れて丘や谷となるであろう)」

「諸山も皆焦然として天龍も雨を降らじ、苗稼(みょうけ)も皆枯死(こし)し、生者は皆死(か)れ尽きて、余草更に生ぜず。土を雨(ふら)し皆昏(こん)闇(あん)にして日月も明(めい)を現ぜず。四方皆亢旱(こうかん)し、数々(しばしば)諸の悪瑞を現ぜん。十不善の業道、貪・瞋・痴倍増し、衆生の父母に於ける、之を観ること獐(しょう)鹿(ろく)の如くならん。衆生及び寿命、色力(しきりき)威(い)楽(らく)減じ、人天の楽を遠離し、皆悉く悪道に堕せん。是の如き不善業の悪王、悪比丘、我正法を毀壞(きえ)し、天人の道を損減せん。諸天善神、王の衆生を悲愍する者、此の濁悪の国を棄てゝ、皆悉く余方に向はん」

「国土乱れん時は先づ鬼神乱る、鬼神乱るゝが故に万民乱る。賊来って国を劫(おびや)かし、百姓亡喪し、臣君、太子、王子、百官共に是非を生す。天地怪異し、二十八宿、星道、日月、時を失ひ度を失ひ、多く賊起ること有らん」

「若し刹帝利潅頂王等の災難起らん時、所謂人衆疾(にんしゅうしつ)疫(えき)の難、他国侵逼の難、自界叛逆の難、星宿変怪の難、日月薄蝕の難、非時風雨の難、過時風雨の難あらん」

「日月度を失ひ、時節返逆し、或は赤日出で、黒日出でる」「金星、彗星、輪星、鬼星、火星、水星、乃至、是の如き諸の星、各々に変現せる」「大火国を焼き万姓焼尽せん。」「大水百姓を漂没し、時節返逆して冬雨ふり、夏雪ふり」「四方の賊来りて国を侵し、内外の賊起らん」「其の王教令すとも人随従せじ」「内外の親戚其れ共に謀叛せん。」「王久しからずして当に重病に遇ふ」

「世皆正に背き人悉く悪に帰す、故に善神は国を捨てゝ相ひ去り、聖人所を辞して還らず。」

 とにかく、来年度は、立正安国論の上奏から750年の記念の年。お祖師さまが明らかにされた御意の一分でもいただいて、正しい信心を立てる、信心の立て直しを主眼としなければ。困難な社会の中で生きてゆかなければならないと思う。「立正信行」をテーマにして、来年度のご奉公を進めようと思っている。

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