原発事故が制御不能に陥り、人類では退治できない怪物の姿が浮き彫りになった今、ただ驚き、慌て、憤るのも正しい反応かもしれません。怒りも方向さえ間違わなければ次の時代の扉を開ける原動力になり得ます。
放射性物質の影響は、目に見えず、すぐには判明せず、人々の健康を蝕み、自然界の秩序を乱します。
ここで、何度も書いてきたように、外部被爆と内部被爆は圧倒的にその後の影響が異なります。体内に摂りこまれた放射性物質が実際にどれだけ人体の部位に悪影響を与え、どれだけ恐ろしい病気を誘発するか、その因果関係は明確に実証されていません。隠蔽されているというよりも、それこそがむしろ見えない悪魔と呼ばれる放射能の恐ろしさの本質であり、常にデータは微量で、結果は曖昧で、因果関係を見失わせます。
チェルノブイリ原発事故と、その後の調査や治療によって、放射性物質の内部被爆と甲状腺癌、白血病の因果関係は解明されつつあります。しかし、近年圧倒的に増加傾向にあった乳がんとの因果関係は、指摘されつつも曖昧にされてきた病気の一つです。ですから、今回これほど放射性物質が飛散や流出している中、真剣に、その恐ろしさを自覚し、今後数十年にわたって若い人たちを中心に注意を促し、何とか、その悪影響を低減させるように努めなければなりません。
原発事故以来、飲料水のことを含めて過大に注意を呼びかけてきましたが、今からでも遅くはないので、ある程度の収束が約束されるまで、事故現場に近い地域の方々、下記に引用する資料では160キロ(100マイル)圏内は特に注意する必要があります。
米国の統計学者、J・M・グールドは乳がん患者数と放射性物質の因果関係を指摘しています。甲状腺や骨や造血幹細胞だけではなく、母乳に放射性物質の反応が出やすいというように、乳腺などに悪影響が出て、放射性物質の内部被爆によって乳がんが増えているという数値データです。残念ながら、明確な学説を聞きませんが、下記の論文は一読に値するはずです。
「内部被曝の脅威(肥田舜太郎/鎌仲ひとみ)」P.114〜120
上記の本やリンクを読むと、現在まで無関心だった一人一人に戦慄が走り、さらに原発事故の早期収束を願い、原発政策やエネルギー政策を含めた日本や世界、つまり私たち人間の生き方の転換が必要であることに気づきます。
鎌仲ひとみ監督の地道な活動には敬服します。乳がんに苦しむ方々とのご奉公を思い返すと、今こそ、今までの無知を恥じて、未来の人たちにまで放射性物質の処理を押し付けるような考え方を改めるために、行動しなければならない時が来ているのかもしれません。
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