2018年2月14日水曜日

「仏教の再生」 中外日報




幕末、江戸で流行した狂歌がある。


「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たつた四杯で夜も寝られず」


宇治茶のブランド名と黒船をかけた落首は痛烈に幕府の狼狽ぶりを皮肉った。事実このペリー来航で国内は騒然となり、ついに二六五年間続いた社会体制は崩壊した。自己改革では追いつかず外圧による変革。口惜しく思うが歴史を紐解くとその事例は多々あるようだ。幕府と同様、仏教諸宗も自ら変革できず明治維新を迎えた。果たして現代ではどうか。


拙僧は海外で布教活動を行っているが、外国人信徒の持つ純粋な信仰や彼らの感動こそ仏教再生の希望になると感じている。


仏教はインドで生まれ、そこで醸成され、伝播の中で発酵し、極東の日本で見事に蒸留された。当然ながら日本の仏教は日本民族に限られたものではなく人類共通の普遍性を持っている。ところが国際的な活動は特殊な場所に置かれ、それを行う者も特殊な人と思われがちだ。これは大変もったいないことで、海外で獲得した普遍性を国内に還元すれば国民の仏教に対する閉塞感も変化すると考えている。


移民と共に始まった海外布教。第二期はグローバル化や経済力、政治力を背景に行われた。現在インターネットによって在留日本人信徒の介在しない国や信徒が爆発的に増えている。彼らは玉石混淆の情報の中から様々な定規を当てて生きた仏教を選び取ろうとしている。これに応えて出張を重ねているが、逆に励まされて帰国することも多い。特に各国のネイティブな僧侶たちは私たちの眠りを覚ますほど信心が強く行動力も凄まじい。ブラジルのコレイア教伯師、イタリアのダニエレ良誓師、スリランカのディリーパ良潤師の教学理解や教化力は日本人僧侶に勝るとも劣らない。すでに日本仏教を輸出するというよりも、彼らから見習うべきこと、彼らに学ぶことが山のようにある。


時代が変わっても人びとの苦悩が変わることはない。生きる道標に仏教がある。次代を担う若者が檀家ではなく信仰者として生きてゆけるように力を尽くしたい。そのためには私たち自身の変革が欠かせない。外国人に説くように日本人に説く。若い世代にも日本に息づく仏教の価値を再発見してもらいたい。


仏教の再生は海外からもたらされるように思う。

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