2007年11月26日月曜日

歴史に残る七五三

 今年の七五三は、大盛況だった。少子高齢化?どこ吹く風。大勢の子どもたち、ご家族と一緒に、御礼の言上とお祝いのお看経をさせていただいた。
 総勢25組の子どもたちとご家族だったという。これは七五三祝参詣としては最高の参詣数だったと聞いた。スゴイ、ありがたーい。実は、今回の七五三は私の長男も5才で御礼の言上をさせていただいた。さらに、ありがたーい。
 記念日というのは、思い新たに感謝する時だと思う。それが誕生日であれ、年末年始であれ、七五三であれ、それを「節目」することが大切だ。人間の場合、自然と「節」を作って高く伸びていく竹とは違う。精神的に「節目」を付けていかなければならない。もし「節」がなかったら、竹であってもあそこまでは伸びることが出来ないし、風や雪で簡単に倒れてしまうだろう。節があるからこそ、強く、高く伸びられる。
 人間は、その「節」を精神的に作らなければならない。その一つが七五三。普段の忙しい生活の中では感じられないというか忘れてしまっていることを、今日は思い出すのだ。「健康でいてくれてありがとう」「今日まで元気でいてくれてありがとう」「これからも元気でいてください」「これからも、この子をお守りください」と。その節目の数だけ、親も子も強くなれる。
 そういうお話をお祝いの言葉に代えてご家族にお話しした。子どもたちが我慢できないので(それでも今年は優秀で、よく我慢して座っていたが)、手短にお話をした。しかし、本当はもっともっとお伝えしたいことがあったのだ。
 実は、子どもたちの健康や成長を祈り、祝ってさせていただく七五三だが、実際に私たちを取り巻く環境は悪化の一途を辿っている。特に、子どもたちの健康や未来に対する不安、実際の危機は背筋が寒くなるほどだ。
 この十年来、日本では学校での障害児の増加が著しい。妙深寺のある神奈川県の場合、養護学校の在籍児童数は毎年2校分に匹敵する200~300人のペースで増え続けている。小中学校の特殊学級はさらにハイペースで、その学級の在籍児数は十年前に比べて二倍近く増加している。その多くが自閉症、学習障害、多動性、衝動性などの発達障害の特徴を盛る子どもたちだと報告されている。
 こうした子どもたちについての「障害」という考え方は、医学が進歩し、「説明」が細かく出来るようになったために出てきているだけだという見方があったが、現在の状況はそれでは説明が付かなくなった。そのために、環境省が重い腰を上げて来年度から十万人規模の疫学調査を行うことになった。どれだけ成果が上がるか疑問視する声もあるが、それでも近年の子どもの発育の「異変」と「発達障害」、いわゆる「障害児」の急増について社会的要因を探る手始めになる。これは個々では解決や説明がつかない異変の実態に国が重い腰を上げるということだ。
 ヒトの脳は血液脳関門に守られ、大人は血中に有害物質が入ってもすぐ脳には入らない。しかし、胎児や乳児は、この「血液脳関門」が非常に薄く、ごく微量の環境ホルモン(内分泌かく乱物質)や重金属が脳内に進入してしまう。だから、妊娠中や授乳中のアルコールやタバコの摂取を止めるように強く勧める。脳関門の薄い胎児や乳児が直接こうしたものに含まれる微量の有害物質の影響を受けてしまうからである。しかし、これは両親の問題ではなく、明らかに世界的な、社会的な問題であると考える。今までのように家族に問題を押しつけるのは酷だ。その姿勢を「国の重い腰」と言っている。責任の所在を追求せず、家族に押しつけてきたのも問題だと私は考える。
 ラットなどの動物実験では、有害物質の投与で「多動」などの発達障害の特徴をなす行動が見られたと報告がある。微量の環境ホルモン(内分泌かく乱物質)や重金属が体内に入り、自閉症やADHD(注意欠陥多動性障害)などが引き起こされる可能性は否定できない、との指摘も出た。つまり、国を上げて、これらの問題を引き起こす「有害物質」の特定をし、その物質を排除するための速やかな対策を講じなければならないということである。
 子どもたちを取り囲む環境は、一層厳しいものになっていると思う。温暖化から公害の問題に至るまで、それらが「進化」しているために顕在化するまでに時間がかかり、因果関係が掴みにくくなっている。分子レベルで子どもたちに迫る危機。しかし、その有害物質を作り出し、消費しているのも私たちなのだから、何とも形容しがたい矛盾に行き着く。
 こうしたことを考えつつ七五三のご奉公をさせていただくと、人類の未来や子どもたちに対する責任と親としての責任を再認識させられる。経済至上主義ではなく、仏教の教えに基づいた「新しいパラダイム」を社会の基軸にできないだろうかと考えたりする。そして、一番手前のところで、「どうか、いろいろな恐ろしい問題から、子どもたちをお守りください」という御法さまへの御祈願に行き着く。
 そう、どうか、子どもたちをお守りください。そして、同時に一人一人が能動的に行動しなければならない時が迫ってきているとも思う。

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