この開導会、今日は私の夢の一つが叶いました。 今まで、世界中を飛び回っていたのは、こういう日のためだったのだなぁ、という実感、喜びがあります。
イタリア系ブラジル人であるマルコス・コレイア・教伯師に、この日本の、妙深寺の開導会をお勤めいただく。これは本門佛立宗に限らず、日本の仏教界全体を考えても、全く画期的なこと、史上初のことです。「あぁ、この日のために、今まで海外でご奉公の勉強をさせていただいてきたのかなぁ」というくらい、感激しています。はるか50年前から海外弘通に注力されてきた妙深寺初代ご住職・日博上人、その日博上人と深い親交を暖められた、100年前にブラジルに渡り、まさにご弘通のお手本を示してくださった日水上人、両先師上人に対して、心から御礼を申し上げたい気持ちです。
先日、NHKでも放送していましたが、ブラジルの日本人移民は水野龍さんという本門佛立宗のご信者さんがはじめられた。わずか九百名弱の方々の移民が最初でした。今や150万人、世界最大の海外日系人社会の創始者が、本門佛立宗のご信者ということだけでも大変なことです。
6月18日、笠戸丸がはじめてサントス港に到着した日を記念して、皇太子殿下もブラジルに行かれました。こだけでも大変栄誉なことですが、さらに特筆すべきことは、この第一回移民の中に、一人の本門佛立宗の教務さん、若き22才の僧侶が乗っておられたということ。水野さんが開拓に正しい信仰、仏教が欠かせないと派遣を御願いしたのでした。
この茨木現樹、後の日水上人が、艱難辛苦を乗り越えて、御題目のご信心をお伝えになった。最高の栄誉は、本門佛立宗が、南米大陸にはじめて仏教を伝えたということです。
今や、本門佛立宗のお寺はブラジルに11ヶ寺を数えます。その教えは、日系人の日系人のための「仏教」ではなく、日系人という枠を超えて、すでに人種の坩堝といわれるブラジルのあらゆる人々に浸透しつつある。その代表者、先駆者、先導者が、今回の開導会でお迎えするコレイア御導師です。
私は、常々、多くの日本人が仏教を誤解していると言っています。日本文化の一つということで、生活の外に置いてしまっている。それは灯台もと暗し、宝の持ち腐れだと。
それは、仏教に携わるお坊さんやお寺も悪い。お坊さんたちが一番「仏教」を分かっていない、ある意味でフォーカスアウトしている、怠けてるとも言える。
京都には、観光客の外人さんがたくさんお寺を訪れます。庭を見たり、仏像を見たり、それはそれは感動される。しかし、それが「仏教」じゃない。
仏像を持ち出して世界で展覧会をしても意味がない。仏教を日本文化の一つとして、日本文化を海外に輸出して満足しても意味がない。生きた仏教を日本に逆輸入する。それが私の一つの夢でした。
コレイア御導師は、イタリア系ブラジル人。100年前に始まったブラジルでのご弘通が生んだ奇跡的な存在です。今年の10月、コレイア御導師は文能昇進といって僧侶として大変な御導師としての資格を認められました。日本人ではない、能化のお坊さんはいません。それはそれはすごいことです。
京都のお寺などで「外国人の出家・得度式」など放送されることがありますが、あれは「一日出家」のようなもので、観光の一つです。仏教をビジネスにしてしまっているところがほとんどです。
そんな中で、ここまで、本当に偉い日系人以外の僧侶は仏教界にいない。だから、奇跡です。
生きた仏教の逆輸入。スリランカやイタリアのご信者さんをお迎えして、それを実現しようとしてきましたが、このコレイア御導師の登場が1つの結論です。28年前、私はコレイア御導師にはじめて出会いました。御導師は13才、私は11才だった。本当に不思議な御縁でした。
本当の仏教は、日本人のイメージとは違う。法事や葬式や、観光や古くさくて、難しくて、生活とかけ離れたものでも、格好悪いものでもない。海外で、本気でご奉公をし、本当に日本人以外の方々がしている信心の姿から、私たちは学ばないといけない。
本来、とても身近で、心や身体、家族にとって必要なものであることを実感していただく。今回の開導会が、そうした機会になればと思っています。
御教歌 平成二十年度 開導会 第一座
「いよゝ猶つたなくならん人の世を 漏さずすくふ妙法の五字」
佛立開導日扇聖人お示しの御教歌です。
誰もが世の平和を願う。人々の幸福を願う。政治家も教育者もそうして努力しているのに、逆に悪化する。これはどういうことか。これこそ、御仏の説かれた末法の姿。
釈尊が私たちのために妙法をのこしてくださった。その妙法、御題目のご信心をいただき、本当のご信心をさせていただいて、末法の世を生きていきなさい。菩薩行に励みなさい、とお示しの御教歌。
御教歌を再拝いたします。「いよゝ猶つたなくならん人の世を 漏さずすくふ妙法の五字」
本門佛立宗とは、南無妙法蓮華経宗です。御題目宗です。佛立宗は、「仏の立てた宗」ですから、「人の立てた宗」ではありません。「佛立宗」ですから、その他は「人の立てた宗」と言えます。「人立宗」には仏さま以外(あるいは、仏さま以上だと思って教えを立てた)の教祖や開祖がおられますが、佛立宗は御仏が創始者であり、開祖。ですから、佛立宗は、同じ仏教でも、他の宗派とは天地水火の違いがある。
佛立宗は仏の立てた宗。御仏は法華経の中で、ある「法」の存在を明らかにされた。お祖師さまは、その法華経に説かれたとおり上行菩薩としてに末法に御出現になられ、「南無妙法蓮華経」という御題目、「御法」が御仏になることの出来た一大因縁の「法」の正体であることをお示しくだされた。つまり、佛立宗は、突き詰めれば「南無妙法蓮華経宗」です。
つくづく、このご信心に出会えた人は、本当に幸せです。
これほど不安定な、これほど迷いの多い世界にあって、ご信心をいただけた。それが、何ものにも代え難い、幸せなことだということ。この実感です。真実です。
世の中は、圧倒的に「無常」です。私たちの身体は一瞬たりとも止まってはいません。身体の外側は同じように見えますが、細胞は毎日毎日生まれ変わって、めまぐるしく交代し、変わっていきます。永遠にそこにある、ずっと同じものはありません。
愛する人が出来ても、永遠には一緒にいられない。身体も、若い頃のままではいられない。衰えていく。老いていく。疲れて、壊れてもいきます。
心や気持ちもそうです。「こうだ!」と思っても、その気持ちはずっと同じではいられない。変わっていく。
これは、考えれば考えるほど恐ろしいことです。これを、御仏は「無常」と仰った。聞き流して生きていると、最後の最後にあわてふためくことになります。むちゃくちゃな生き方、もったいない生き方をしてしまう。
ですから、仏さまは「世は皆牢固ならざること、水沫泡焔の如し」と仰った。この世界は、水や泡のように、はかなくもろく、移ろいやすい。そのままいただけば、本当に恐ろしいことです。
その「無常」の世界、そこに生きる人間に、それを乗り越えて、「永遠」を実現するための教えが仏教。ご信心です。
衰えていく自分、病気になる自分が、本当に元気に生きていく方法。変わっていく人の心、恋人でも家族でも友人でも、水や泡のような人の心、人間関係を確かなものにするのが信心です。
必ず一人で死を迎える人間が、永遠の時間と空間、永遠の命を手にするのが信心です。
こんなに幸せなことはありません。もし、ご信心がなかったら、無常の世の中では結局ネガティブなことの連続で終わってしまう。何も残らない。はい、さよなら。それで終わりです。
だから、信心をしていない人は、自分をごまかして、他人をごまかして、目を逸らして、目を閉じて、酒をあおって、遊んで、無駄をたくさんたくさん積み上げて、生きるしかない。
でも、これは「生きる」「生きている」とはいえません。本当に「生きる」ということが出来るのが、そういう自分に生まれ変われるのが「ご信心」です。
だから、幸せ。私たち、仏教に出会った者、ご信心できている者、御題目をお唱えできるようになった者は、本当に幸せなのです。
いま、仏教でいえば世界は末法という時代です。この時代は1万年続く。これから1万年も人類や地球がもつか分かりませんが、とにかく仏さまは現代を「末法」という時代だと仰った。
御仏の教えでは、この時代は、人間の「心」が原因で、すべてがバランスを失っていく。すべて、です。
まず、「心」に起因して、自分がバランスを失う、自分の身体がバランスを失う。一人の「心」に起因して、家族がバランスを失う。人間関係がバランスを失う。経済がバランスを失う。自然界がバランスを失う。まさに、今は、そうした時代、末法です。
いろいろな人が「なんで事件が増えるのだろう」「なんで病気が増えるんだろう」「なんで災害が増えるのだろう」と、その原因を探します。ある人は「教育が問題だ」と言い、ある人は「政治家が悪い」と言う。「Co2が原因だ」「石油の埋蔵量が問題だ」「新興国が、先進国が問題だ」などと言いますが、それは上辺の原因であって、根本は「人の心」に問題があります。
いま、子どもたちの病気、青年たちの病気が増えている。アトピーが増え、ぜんそくはこの10年で倍、幼児虐待はこの6年で2.5倍。
何度も申し上げるが、この神奈川県だけで考えても、養護学校の在籍児童数は毎年2校分に匹敵する200~300名のペースで増え続けている。小・中学校の特殊学級はさらにハイペースで、その学級の在籍児数は10年前に比べて2倍近く増加している。
これが、末法の現実。薬も増えたが、病気も増えた。特に、子どもたち、若い人たちの病気が増えている。
公害、汚染、抗生剤、食べ物、その原因は様々に思うかも知れないが、問題の根本は「人の心」に違いない。
しかし、これほどの問題が目の前にあるのに、環境問題や地球温暖化と同じように、危機感が湧いてこない。行動に移せる人も少ない。それも末法。
身体の病気は心の病気に比べてまだマシ。心の病気に罹った人なら分かるが、身体の病気の方がどれだけ楽だろうかと思う。身体の病気なら「希望」が持てるが、心の病気になると、その「希望」がなくなってしまう。
暗闇。永遠に抜け出せないかのような不安。自殺者が年間3万人以上いる日本。みんな、自分ではどうしようもない苦しみを心に抱えてしまって、不安で不安で仕方ない夜を過ごしている。そこから抜け出すためには、抗うつ剤や睡眠薬を飲むよりも、「心」に直接処方できる薬を打つしかない。それが「ご信心」、南無妙法蓮華経の御題目、南無妙法蓮華経宗の教えだ。
私たちが抱える末法の問題の、根本に、「心」がある。一人一人の心が原因で、すべてのバランスが崩れてきている。七四九年前、お祖師さまはそのことを指摘された。立正安国論という幕府に献上した有名な書物で。
心の中に御仏の正しい教え、薬、御題目を入れる。それだけでいい。ご信心を心の柱にする。南無妙法蓮華経を心の真ん中に置く。それだけ。それが出来れば、バランスを取り戻せる。1人から2人へ、2人から3人へ。御題目を唱えるだけでいい。御題目は、末法という恐ろしい世界に届けられた人間世界のワクチンです。だから、そうしてワクチンを1人から2人、2人から3人、5人、10人、100人、1000人、10000人、50000人、100000、1000000、10000000と届けていけば、必ず心の病、心を原因にした問題は解決していく。
ご信心が本当に心に入った人を見ていただきたい。どれだけ自由になるか。無常の中で永遠を楽しめるか。自分が変われる。変われた。変わったんだ。風景が変わる、身体が変わる、人間関係が変わる。サインをいただいて自由自在、夢のように感謝できて、充実して、有難いと言える。生きていること、生かされていることの、使命に気づく。気づけるようになる。生まれ変われるんです。
こんなに幸せなことはない。ご信心が、本当の本当にできるようになったら、こわいこわい世の中、どんどん「つたなく」なる世の中でも、安心して生きていける。不安がなくなる。
だから、本当のご信者さんは幸せです。幸せだと言うのです。
「いよゝ猶つたなくならん人の世を 漏さずすくふ妙法の五字」
今回の開導会は、夢が叶った。その、素晴らしいご信心の逆輸入です。本家本元の日本人が忘れてしまったことを、海外の方が教えてくれる。「ザ、仏教」です。本当の仏教です。
今の世の中、希望は仏教しかない。不安定な人生、人間生活。希望はご信心しかない。正しい仏教、真実の仏教、南無妙法蓮華経しかない。
御題目をいただけたら、誰でも、そのまま、生まれ変われる。それを教えていただける。
御教歌に、「漏さずすくふ妙法の五字」とある。
誰も、誰一人、置いていきません。この人は救えて、あの人は救えない、ということがない。「漏らさず」です。だから、この「南無妙法蓮華経」の御題目、このご信心で、漏れる人はいない。救えない人はいない。それは心の処方箋だからです。
これが「ザ、仏教」です。この人は救える、あの人はダメ、ということじゃない。「救える」ということすら言わない宗教団体、仏教の宗派ばかりです。本門佛立宗、南無妙法蓮華経宗は違う。
私たち日本人は、大丈夫でしょうか。益々悪くなる世の中に、耐えられるでしょうか。不安です。
御題目を真剣に唱えるということは、仏さまの心と直接交信する、仏さまの心と結びつくということです。それが、出来ているかどうか。
そういう「ザ、仏教」の心を、分かっているでしょうか。
豊かさに誤魔化されて生きていると、その大切さが実感できなくなります。自分にとって一番怖い病気でも、西欧医学の発明した薬に頼って、何度も何度も病院に通い、何錠も何錠も薬を飲んで、薬漬けになってそれで良いと思ってしまう。仏さまの心との交信なんて、頭にも浮かばない。お寺と言えば観光寺院、桜を見に行くか、あじさいを見に行くか、程度。そんなものは仏教ではない。
スリランカの街には仏像が溢れています。いたるところに仏像がある。
しかし、仏像にブッダの魂があるか。スリランカで法華経本門の教え、佛立信心に目覚めた人は、この問いの答えを見つけた。ブッダの存在、ブッダの魂はどこにおられるか。どこにおられるとブッダご自身が説いておられたか。仏像の中におられるというと、「そうではない」と仏さまご自身が仰っている。いくら綺麗な顔の仏像を刻んでも、床の間に仏画を飾っても、そこに御仏はおられません。御仏の心はない。
スリランカで本門佛立宗、南無妙法蓮華経宗のご信心をされている方々は、御仏の心がどこにあるか知った。仏像ではなく、南無妙法蓮華経とお唱えする声の中に、御本尊の中に、御仏がいらっしゃることを見た。だから、ご信心しておられる。実際に体感しておられる。街に、仏像が溢れている中で、漢字の御本尊の中に御仏を見ておられる。
そこで、その中で、南無妙法蓮華経とお唱えする中で、実際に生きた御仏に出会い、生まれ変わった。だから、御利益を次から次へといただく人たちで溢れている。
心筋梗塞で倒れたスリランカのラーニ・シルバさんも、癌で二度の手術を受けなければならないイタリアのマウロ・ラミさんも、御題目のご信心で大御利益をいただかれている。コレイア御導師も、そうしたたくさんの方々の御利益をブラジルから持ってきてくださっている。
さて、日本の私たち。遠回りをしていて、ご信心ができなくて、感覚がずれていたら、末法の世の中に翻弄されるだけです。意味がない。生きていながら死んでいることになります。無常そのまま。何にも残らない。ずーっと続く苦しみ、焦り、苛立ち、不安だけが残ります。
それではダメだ。本当にご信心をしなさい。南無妙法蓮華経宗です。難しいことは何一つない。御題目だけ。その薬を入れたらいい。心に入れたらいい。心の柱に据えたらいい。それだけで、生まれ変われる。
もちろん、簡単だからこそ難しい面もある。しかし、基本は、「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」と真剣に お唱えするだけです。真剣か、そういうワクチンを心にしっかりと入れられるようなお看経が出来ているかが 勝負です。
御題目がワクチンであることを知った人は、さらに真剣にご信心をし、お教化にも気張ろうと思うでしょう。職業にしているお坊さんは、そのことを感じられなくて苦しんでいる人が多い。中途半端じゃダメです。
仏教は哲学だとか、難しいことだと言っているのも違う。仏教の真髄はシンプルです。仏教のエッセンシャル、エッセンスにフォーカスしなければならない。それ以外は、同じ仏教と呼称を用いても、フォーカス・アウトしているということになる。仏教とは「南無妙法蓮華経」です。
この度は開導聖人の祥月ご命日に併せた御会式、開導会ですが、その開導聖人の御指南を拝見しますと、
「上行所伝の題目宗は人間に持たしめて人間を助くる宗旨なり」
「日本国の柱 題目宗の事」
「今日本国に清風なかりせば上行所伝の題目宗は日々月々年々に、かくれ給ふべし。今日本国に佛立講なくば、みな習い損じの余門流と同じくなるべし。御開山御滅後四百三十余年の、今の門流のすがた、実に口惜し。信者なく、当家の学者なし。乃至。あぁ、なげかはし、なげかはし」
心の中では、ウイルスが繁殖しやすい。社会にも、インフルエンザのように爆発的に広がってしまう。いま本当にワクチンが必要です。
心の中に御仏の正しい教え、薬、御題目を入れる。それだけでいい。ご信心を心の柱にする。南無妙法蓮華経を心の真ん中に置く。そうすれば、バランスを取り戻せます。一人から二人へ、二人から三人へ。末法の時代、人間世界のワクチンを、自分はもちろん、一人でも多くの人にお渡しすることが大事。必ず心の病、心を原因にした問題は解決します。
ワクチンの服用法は、御題目を口に唱えること。お寺、御講席、ご宝前に足を運び、唱える。朝夕、忘れずにお唱えする。
時々、たまに、ではダメ。コンスタントに、欠かすことなく、心の柱になるように、唱える。
一層、本気のご信心に、菩薩行に気張りましょう。生まれ変わることが大事です。
さあ、心にワクチンをいただくような、そう体感できるようなお看経をさせていただきましょう。
故に御教歌に、「いよゝ猶つたなくならん人の世を 漏さずすくふ妙法の五字」
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