2010年2月19日金曜日

源平咲き ~世にも珍しい梅の花~

 今日、準備ご奉公中の、妙深寺の境内地で撮影しました。素晴らしいでしょう。咲き始めました、妙深寺自慢の梅です。

 この梅の名前は聞いていません。ただ、以前も書いたように、妙深寺のご信者さんで有名な植木職人であった山忠さんのおじさんから、「住職、この梅はすごい梅だから、絶対に切っちゃなんねぇよ。大事にすんだよ」と言われたことがあります。

 私は知識もあまりないので、品種も正確な名前も分からないのですが、今朝この写真を撮ってから自分なりに花びらの形状などを見比べてみました。

 「蓮久」かなぁ。「八重松島」かなぁ。分かりません。でも、みなさんもアップで見てください。まだ、満開にはほど遠いのですが、素晴らしく可憐で美しい。「五色梅」とか「思いのまま」「巻立山」「楠玉」という梅もあり、少し似ています。

 いずれにしても、こうした咲き方は、『源平咲(げんぺいざ)き』と言うそうです。昔から日本では大きく二つに分かれて戦う時、「紅白戦」とか「紅白対抗」と言いますが、もともと源氏の旗が「白」、平氏の旗が「赤」だったことからそう呼ばれるようになったそうです。つまり、『源平合戦』なのですね。

 品種改良や接ぎ木を重ねて、こうした咲き方をさせることもできますが、本当に素晴らしいのは、自然に育つ中で、こうした『源平咲き』をする梅の木だそうです。だから、山忠さんは「大事にしろよ」と教えてくれたのですね。

 こうした源平咲きは、梅に限ることではありません。桃やツバキ、皐月や白粉花などにもあるようです。少し調べてみると、当たり前のことですが、一本の木は遺伝子が一種類。ですから、一つの木(株)に形も色も同じ花が付くのが普通です。

 しかし、「源平咲き」は赤やピンクの花の木に突然変異で色の違う細胞が混ざって、一本の木に2色の花や斑入りの花が咲きます。一本の植物に、2種類以上の遺伝子のある物を、植物学では「キメラ (chimera)」と呼ぶそうです(「接ぎ木」の雑種も「キメラ」というそうですが、ただの「接ぎ木」を「キメラ」とは呼ばないそうです)。

 キメラ植物は、一代限りで、出来た種を植えても、2種類の色や実がなることは無く、元の色が出るそうです。増やす時は、挿し木や、株分けで苗を作らなければなりません。ですから、妙深寺にあるこの『源平咲きの梅』も、本当に貴重なのですね。

 ちなみに、この「キメラ」という語源は、ギリシャ神話に出てくる怪物の名前にちなみます。頭がライオンで胴がヤギ、尾がヘビという「キマイラ(Χίμαιρα, Chimaira)」から取っているそうです。少し怖い。ギリシャ神話とは、そうしたものですが。

 また、『源平咲き』の梅が、法華経本門の教えをいただく妙深寺の境内地に咲いていることにも感激です。法華経の教えというのは、「右か左か」という二元論を超越した教えです。法華経本門の教えの前では、実は「小乗仏教」も「大乗仏教」もなくなってしまいます。仏教という枠も超えて、世界を、いや宇宙を、一つに結ぶ教えが説き明かされているのが「法華経」の教えです。

 つまり、「源平」も「紅白」も、宇宙法界のDharma(法)、上行所伝の御題目の下で、互いに共生し、見事に、美しく、生まれ、咲き、実れる。源平咲き、本当に見事です。

 とにかく、明日、明後日の妙深寺の門祖会にお参詣していただき、三ツ沢の丘の上に咲く、世にも珍しい梅の花を見ていただきたいと思います。池の近く、池を見て左側にある背の高い梅です。本当に、不思議な気持ちになります。青空であれば、もっともっと気持ちが良くなります。

 もしかすると、満開になるのは、今月末くらいになるかもしれません。百日参詣をはじめて、梅の咲くのを楽しみにしても良いですよね。毎年毎年、あっという間に過ぎてしまいますが、花の成長や開花までの日々を楽しみにして過ごす春なんて、素敵でしょう。

 昔、日本人は、この季節に着物を新調したと言います。そして、新しい着物が来たら、その着物を梅の木に掛けておいたり、わざわざ新しい着物を着て梅の花を見に行ったりしたといいます。そうすると、新しい着物に梅の薫りが移って、それを楽しみにしたのだそうです。すごい感性ですね。「昔の人は鼻がよかったのかもしれません」と正教師も仰っていました。それにしても、日本人の豊かな感性、文化性は、やはりすごいです。

 この春、僕たちも、少しは感性を磨いてみましょう。妙深寺の『源平咲きの梅』で。

1 件のコメント:

MHATN さんのコメント...

源平咲 接木なのか 自然なのかいつも見るたびに自然の不思議を感じておりました。先日 近くの花屋で源平咲をするだろうと見られる小さな梅の木を見かけたので購入し庭に植えてみたのですが・・・ 仏教の世界で考えるとは 互いに共生し、見事に、美しく、生まれ、咲き、お互いに実れる。御ブログを読んで改めて仏世界の素晴らしさを感じることができました。一方で排他主義・2元論を振り回すキリスト・イスラム中心の世界では永遠に 平和で安心して暮らせる共生社会は創れないのでは・・然らば3大宗教が源平咲の梅の如く互いに歩み寄り 共生し 互いに実れる社会を創り出すよう努力すべき時 今こそ仏教のリーダーが中心となってキリスト・イスラムのリーダー達に源平の呼びかけを行う必要があるのではと思います。

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