2023年2月1日水曜日

AIの作る夢幻の世の中で


今生の毀誉褒貶は夢や幻のようなもの。囚われていたらきっと真っ直ぐには生きられない。


せっかくの命、妄想と幻想の中で生きてどうする。仏教は説き続ける。


chatGPT。昨年末、NY大生で話題と聞き、OpenAIが発表したチャットボットをいち早く体験しました。恐ろしく感じました。


まだまだ未熟ではあるものの、短いテーマでつらつらと文章を書き連ねてゆく凄さ。内容の正確さではなく、言語化能力とその進化の可能性に驚きました。


これにAI音声合成技術が重なることは間違いありません。すでにニュースの読み上げに使用されている人間の声。日進月歩、不自然さは無くなり、人工音声と気づかないレベルに達しています。


さらに時おかずこれに人工知能を使った画像・映像合成技術「ディープフェイク」が加わるでしょう。本当に恐ろしい。


皆さんは、どれだけ恐ろしい時代や社会が迫っているか、分かるでしょうか?


ディープフェイクではすでにトランプやサッカーバーグ、プーチン、ゼレンスキー、習近平らの合成動画が制作され、拡散しています。まだパロディのレベルですがさらに進化し悪用されてゆきます。


本人が意図しない、実際やってもいない言動が、まことしやかに動画として拡散される。それで政治が動いたり、株価が左右されたりする。


AIによる精緻で高速な人工文章作成、AIによる本人に極めて近い音声合成と読み上げ技術、そしてFakeAPPZAOに磨きをかけたプロ仕様の本人模倣映像制作技術。


当人が行なっていないことを行なっているように見せ、やっていないことをやったように見せる技術が作る世界。実際これらを用いた詐欺事件や風評被害も起こり、皆さんの生活の直近に迫ってきています。


フェイク動画で戦争が始まったり、AIによる世論操作で政治が行われたりする時代が到来しようとしているのです。


こうした技術が開発され、用いられるようになった以上、すでに権力の座にいる人たちは永遠に権力の座にいるだろうし、操られる民衆は永遠に操られてしまう可能性もあるでしょう。そんな憂鬱な未来が見えています。


なにが本当で、なにが嘘なのか。とっくに分からなくなっていた人間界でしたが、さらに分からなくなる。


宗教家は、この科学技術の進化をどう見るか。これからの社会をどう読むか。


私は、情報科学技術が賢くなれば賢くなるほど、人間は愚かになるか、残酷になるか、ズルくなるように感じています。技術を新しい武器として認識するからでしょうか。結局人間の欲望が増長するのです。


これらの技術を、この世の中を、見守っていきたいです。しかし、そんな余裕が残されるものかは、分かりません。社会的にというよりは、政治的に。人びとの苦悩や迷惑は増してしまうでしょうか。


人類が新しい民主主義を確立しないかぎり、自由で開かれた社会とは真逆の方向に向かうはずです。


人間は、これまでも妄想と幻想の中に生きてきましたが、さらにこれから偽りを信じ込まされて、妄想や幻想のままに生きてゆかなければならないかもしれません。


仏教、お寺は、いよいよ人びとを、その心を、守る城であるべきだと思います。

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