リトルロックでの私の最大の興味は、セントラル高校でした。ここで、壮絶な人種差別問題を語る顕著な一例が示された。その模様は全米に放映され、さらに公民権運動は大きく広がっていったのです。実は、この高校に寄る予定などはなかったのですが、道を間違えてしまいまして、3時間も遠回りをした果てにリトルロックの市街に入ることになったのです。せっかくリトルロックの市街に入るのであれば、「セントラル高校に行きたい」と急遽訪れることにしました。
この「リトルロック」という名前を全米の人々の心に刻んだのは、公民権運動の初期に起きた黒人生徒の公立高校編入をめぐる「リトルロック危機」。その舞台がセントラル高校でした。
アーカンソー州で最も有名な人といえば、ビル・クリントン米国前大統領です。私たちは、アーカンソー川沿いに最近建てられたクリントンセンターを横に見ながら、ダウンタウンから3マイルほどの高校を目指しました。そう、クリントン大統領は、このセントラル高校の卒業生でもあります。
「アメリカで最も美しい」と絶賛されたセントラル高校の校舎。当時のアメリカ社会は奴隷解放令が出ていたとはいえ、特に南部では根強く人種差別が残されており、この美しい高校は事実上「白人のためだけ」の高校となっていました。ダンバー高校という黒人専用の高校もまた開校されましたが、その建設費はセントラル高校の4分の1でした。
1954年、最高裁で「人種分離教育は違憲」という判決が出され、全米黒人地位向上委員会(NAACP)はダンバー校から成績優秀な9人をセントラル高校に転入させる手続きを取ったのです。
黒人の生徒を受け入れることに反対した市民とPTA。その高校に入学することを許された黒人の高校生9人。市民評議会は「彼らの入学を許したら、いずれ我々の子供と結婚する黒人が現れることだろう。異人種間の結婚は病気が懸念される」というものでした。わずか50年前のことですが、この現実に歴史に刻まれている恐ろしい言葉が信じられないくらいです。この男子生徒3人、女子生徒6人の黒人生徒は、数千人規模で集まった反対派が囲む中、プレッシャーと命の危険もかえりみずに登校しました。州知事は州兵を動員して、実力で黒人の生徒の登校を拒否。その後、白人至上主義者とNAACPとのにらみ合いが続き、緊張の度は増すばかりだった、と。その中で勇気ある行動をし、平等に教育を受ける権利を表明した黒人生徒9人は、今でも「リトルロック・ナイン」と呼ばれ尊敬されています。
結局、アイゼンハワー大統領は州知事に指導をしましたが、それも功を奏さないため、1200人の武装兵士を校内に駐留させ、黒人生徒が学校に通えるようにしたのでした。現在、フィリピンがイラク戦争に派遣した兵士の数が200人。それでも撤退を考えているというニュースもありますが、その6倍の兵士が学校に駐留していたのです。アメリカにとって、どれほど大きな「危機」だったか分かります。
テレビを通じて、彼らが多くの群衆に罵られ、押し戻されながら登校する姿が全米に放送されていました。その衝撃が全米中に伝わり、公民権運動はさらに加速していくのでした。今のリトルロック高校の芝生の上からは想像もつきません。過ぎた日の恐ろしい出来事も穏やかな空気に包まれて夢のようです。
この9人の中の1人が卒業する際、かのキング牧師も卒業式に参列し、心からお祝いをしたそうです。
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