アーカンソー州の州都、リトル・ロックの手前。森と湖となだらかな山に囲まれたホット・スプリングスという伝統のある温泉地があります。私たちは余りにもハードスケジュールだったので、そこに寄って休むことにしました。もともと、アーカンソー州のニックネームは「ナチュラル・ステイツ」と呼ばれ、紅葉の素晴らしい森林、石灰岩の地層に浄化された水をたたえた湖、全米屈指を誇る川、肥沃なミシシッピデルタと、大自然が最も豊かです。大地もダイヤモンドをはじめ、鉱物や農産物にも恵まれ、驚くことにコシヒカリの名産地としても知られているのです。その大自然の恩恵を一身に受けられる場所が、ホットスプリングスという歴史ある温泉場。
ここは、1541年に発見されたと言われています。これは、アメリカ大陸の発見が1492年ですから、大陸発見からほんの50年足らずしか経っていない頃から湯治場として人々に愛されてきたのです。南北戦争当時の兵士達も傷を癒したと言われています。全米での有数の水晶の産地であることから、無色無臭のさらりとした湯はその水晶が二酸化珪素の形でたっぷりと溶け込んでいるそうです。バスハウスといわれる湯治場では、独特の入浴方法で入らなければなりません。アル・カポネ、ベーブルース、ルーズベルト大統領が湯治していたホットスプリングス。
私たちは、深夜に到着し、ホテルを探す時間がなかったので、「アーリントンホテル」に入ってしまいました。「入ってしまった」というのは、ここが非常に由緒正しいホテルで、ちょっと高いホテルなのでした。そして、次の日の朝、7時からみんなで湯治場に入りました。白いタイル張りの、本当にレトロなバスハウス。古いタイプのサウナの機械などがあります。左右に1人用のバスタブが6コづつ並んでおり、真ん中に1人用のベッドがあります。そして、一人一人がバスタブに入るのです。それを案内してくれるのはウィル・スミスという俳優さんに似た黒人の青年でした。そこで15分間お湯につかり、ジェットバスのスイッチが入れられます。汗が噴き出てきて、さっきの黒人の方がなんと身体を洗ってくれるのです。その間に、温泉のお湯を注いでくれて、2杯くらい「飲め」といわれるのです。言われるままに飲むと、本当に無色無臭でおいしい。
「ウェイカップ。フォローミー(起きて、付いてきな)」と言われて上がると、次はサウナ室に入ります。サウナ室は45度くらいの温度で全く熱くないのですが、ここに5人で15分。さらに汗が噴き出します。また、彼が入ってきて案内されます。次は中央にあったベッドに寝ます。また、彼が来て、熱いタオルを、腰、背中、首に3枚ほどで巻いてゆき、白いシーツでくるまれる。そこでまた15分。苦しいくらい、汗が噴き出ました。そこで、最後のシャワーに案内されて終わり。シャワーを出た後は、また丁寧に彼が拭いてくれます。申し訳ないくらいでした。
マッサージも受けたのですが、これは20分で、黒人の60才くらいの方が腕をふるってくれます。指圧というよりも、オイルマッサージに近いのですが、香りの良いオイルで血行をよくしてくれる感じです。
とにかく、これがベーブルースやアル・カポネ、ルーズベルト大統領までが体験したというホットスプリング式の湯治方法なのでした。これが効くのかどうか分かりませんが、何となく疲れが取れたようです。いよいよ、メンフィスに向かいます。
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