日本では、ゴキブリ一匹で大騒ぎして、蟻が部屋に入っているだけで眠れなくなったりしていました。
そんな自分が、虫に対して何も感じなくなり、不思議と何か一緒に地球の借り物の中に住んでいる身近な同居人のように思えるようになる。
これは「宗教」とか「教え」とかそういう次元の話ではなくて、きっと文化や文明の問題で、この空気の中にいて、みんなと生活していると、自然に受け入れられる命たちとの距離、周りのみんなの所作、生きる速度、生活の流れが、そうさせるのだと思います。
「ムシコナーズ」を躍起になって買うとか、そういう気持ちが全て無くなるというのではありません。蚊に刺されたらかゆいし、デング熱も怖い。ベッドの上に蟻やムカデがいたら嫌。
でも、みんなで地球をシェアして生きてるんだな、という圧倒的な感覚が、こちらに迫ってくるのです。
日本の感覚のままでは、とてもではないけど嫌になるかもしれませんが、僕にとっては、とても勉強になる場所です。
紅茶を入れてくれて、お砂糖の器に蟻が一匹入っています。日本では大騒ぎしてしまう事態なのですが、落ち着いて、むしろ蟻に申し訳なく思ったり、「頑張って探し当てたなぁ」という感覚すら生まれてくる。
不思議ですね。これは、何なのだろう。だから、全てが美しく見える。本当に、キラキラして見えるんです。すべてが。
文明国、日本に戻っても、こうした気持ちを忘れたくないです。
自然からの借り物だったという感覚。陸前高田の佐々木さんからも教えていただきました。これほどの被害を受け、愛する人まで奪われても、海や自然に対する憤りは、なぜか無いのです、と仰った。自分の家、自分の土地、自分のもの、と思っていたものが、実はすべて地球からの借り物だったという不思議な、新しい感覚が芽生えていると仰った。
私たちは、被災した方々を支援しているつもりになっていますが、私たちこそ被災地の皆さんから学ばなければならないのではないか。きっと、学ぶべきことは、心に芽生えた様々なことなのです。そうしたことを、お聞きして、私たちは自分たちの考え方や生き方を変えていかなければならない時を迎えているのだと思います。
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