2005年、アメリカ大陸を横断してラジオ番組の収録を行いました。
タイトルは「ブッディスト・トランス・アメリカ」。博さんがプロデュースしてくださり、「お坊さんが見たアメリカ」というコンセプトで、Los Angelesのラジオ局で放送しようとしたものでした。
博さんをはじめ、スタッフの皆さまには素晴らしい経験を与えていただいたと今でも心から感謝しています。
住職就任直後の2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生。冷戦終結後の新しい世界が最も恐ろしい形で始まりました。
ジョージ・W・ブッシュ大統領は、アフガニスタンの事実上の支配者であったタリバンに、オサマ・ビンラディンの引き渡しを要求。タリバンがビンラディンの引き渡しを拒否したため「不朽の自由作戦」が開始されました。
以来、20年。米軍がアフガンからの撤退を開始し、同時にタリバンが多くの都市を制圧。首都カブールも包囲され、すでに陥落直前との報道もあります。米軍が現アフガン政権に譲渡した最新兵器はタリバンの手に渡ることになります。
この20年が虚しい。人間は、つくづく愚かなものだと思います。凶悪なテロリストが始める戦争。愚かな為政者が始める戦争。互いに正義を掲げて戦闘を繰り返し、多くの人命が失われ、多くの貴重な人生が狂わされて今に至ります。
突き詰めて、結局アメリカはアフガニスタンまで侵攻し、何を得たのか。イラクの石油プラント?勝利とは何だったのか?ビンラディンの首?
アルカイダの代わりにIS(イスラム国)を生み出し、20年前と同じようにタリバンがアフガニスタンの政権を掌握して恐怖政治を敢行する。
本当に、虚しい話です。人類が宗教をアップデートしなければ中東の紛争は終わらないと思っています。宗教を宗教が救えるか。これが自分なりの課題でした。
2003年、一人でイスラエルに行き、テルアビブの夜を徘徊し、ガリラヤからゴラン高原、エルサレムからパレスチナ自治区のベツレヘムを訪れました。それも、これも、自分なりの問題意識、責任や使命について答えを見出そうとしていたからです。
2005年、アメリカを横断する機会を与えていただき、オクラホマ、ダラス、メンフィス、リトルロック、フィラデルフィア、ニューヨークと巡りました。テロの現場、暗殺現場、墓地を巡りながら、仏教徒の目で見て、深く考えることが出来ました。
特に、スミソニアン航空宇宙博物館でエノラ・ゲイを目の当たりにしたことも、忘れられないことです。広島に原子爆弾を投下したB29。
私たちがその前に立った瞬間、スミソニアン航空宇宙博物館の電気が一斉に落ち、停電したことは忘れられません。
これをシンクロニシティと呼ばずに何と表現したらいいのか。すべては起こるべくして起こる。多くの犠牲者の方々、戦争が生み出す全ての悲しみを実感し、追悼の想いを深くしました。
その後、何度もインドを訪れ、スリランカでご奉公させていただき、ネパールでご奉公するようにもなりました。
人類が抱える問題を意識しながら、ブラジルをはじめ、世界中でご奉公させていただけることを、何よりもありがたいこと、幸せなことだと思っています。
混沌とする世界の中で、今後さらに、宗教者として、佛立仏教徒として、普遍的な価値観を胸に、仏教という心のワクチンが世界中に広がるように、ご奉公させいただきたいと思います。
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