先日来、嬉しいことがある。それは、毎朝のように最近お寺に来られるようになった方とお会いできることだ。
横浜の妙深寺では、寒参詣中は同じ本堂下の大広間で住職も教務部も朝のご供養(朝食)をいただく。各教区の方々が当番に従って前の晩から泊まり込んでご供養を作ってくださっている。ほとんど、毎朝ご飯とお味噌汁だが、これが格別に美味しい。特別な日には、「芋がゆ」や「揚げ餅」を作ってくださる。これら特別なお料理は婦人会さんが大変なのだが、大人気のメニューで止めるわけにもいかない。朝のご供養は格別の味わいなのである。
朝、とにかくご供養はご供養場でいただく。その際、普段はなかなかお話しできない方やお目にかかれないご信者さんとお会いできるのである。私の席は出口の近くなので、申し訳ないが通り道なので皆さんがご挨拶をしてくださる。そうなると毎朝ご供養をいただくどころではなく、お箸を運ぼうにもタイミングが取れずにいるのだが、それでも皆さんと言葉を交わすのは嬉しいのである。
22日の朝、とても嬉しかったのは、ある旅行会社の方がお参詣してくださっており、朝のご供養場で思いがけずお会いしたことだ。これは、本当に嬉しくて、思わず自分の席にも座らずにお声を掛けて、話し込んでしまいたくなった。
当然ながら、団参(団体で地方にお参詣すること)などで妙深寺は旅行会社にツアー企画と運営をお願いする。いろいろな会社があって、真摯にお付き合いをさせていただいる。どの会社も素晴らしい会社ばかり。その方の所属する会社も、大手の旅行代理店だった。
秋田への団参の際、若いH君が旅行代理店の担当者として同行してくれていた。私はブッディスト・トランス・アメリカの収録直後で、成田空港から秋田への団参に直接合流するという、いつもながらの「離れ業」をした。成田から東京、東京から仙台、仙台から宿泊地の松島海岸のホテルへ。去年の佐渡団参でも同じだったのだが、H君がホテルの前で待っていてくれて、とても心強かった。有難かった。
しかし、その時だったと思うが、エレベーターホールでH君と話をした。すると、彼の担当は旅行代理店の中でも団体旅行、特に「宗教団体」が多いそうで、ほぼそっちの分野の担当と言うことで、毎週のように様々な宗教団体の旅行に同行するというのである。「なるほどな」と私は言いつつ、「じゃぁ、信心とか宗教とか、もう見尽くしているんだね」などと言って、彼のような仕事をしている人がご信心するということは非常に難しいだろうなぁと感じていたのだった。
ところが、である。佐渡の団参も終わって、昨年のこと。瓜生さんがH君にお話をして、そのH君がご信心をするというのである。「まさか~、ほんと~」などと、妙深寺の(インチキ)住職らしいコメントをしていた。「だって、H君、いろんな宗教団体を見ているって言ってたし、仕事が欲しいから、瓜生さんうるさいし、とりあえず信心しますって言っとけばいいかなぁ~」なんて思ったんじゃないの~、と、疑心暗鬼の元ヤンキー住職としては思っていたのである。
ところが、H君は、私のいやらしい予測とは裏腹に、夏の開導会には「彼女」までお寺に連れてお参詣を果たしたのである。「なに、なに?!え~、本気か?!?」と、その時点になっても、住職の私は素直に信じていなかったのである(笑)。ご信者さんに、「信心は、素直が一番!」って言いながら、私が一番疑り深かったりして(笑)。
いや、そうして感心していたのだが、12月になってH君が転職することになり、ご挨拶に来られるということで12月の、ちょうど御総講の日に妙深寺にお参詣された。しかも、転職するのだから次なる担当者を連れてこられてご紹介したいということだった。
私は、普段通りに御総講をお勤めし、御法門を拝見した。そして、その後に、本堂裏の御控之間にてH君と、その時はじめてお会いした次なる担当者とお会いしたのであった。「H君、止めるの?寂しいなぁ。でも、転職先の会社、素敵な会社だね。頑張ってね」と励ました後、ご紹介をいただいたので次なる担当者の方にも、優しいご挨拶のつもりで、「これからもよろしくお願いします。でもね~、妙深寺には違う旅行代理店にも親しい方がいるんですよ~」などと、いやらし~い言い方をしてお二人のご挨拶を、右から左に受け流していた(笑)。そして、ほんの僅かな時間、ご挨拶を受けて私はそのまま年末の全教区からのご挨拶にテンヤワンヤだった。
しかし、その数日後、H君に連れてこられた新しい担当者のU氏は、お寺に来て、ご信心をさせていただきたいと申し出て、お数珠を求めたのである。瓜生さんと他の団参計画について打ち合わせをする時とのことだったが、その話を聞いた瓜生さんも驚いてしまったという。「いや、ちょっと待って。まずは団参についてお話ししましょう」と言って打ち合わせを最初にして、その話の後でお数珠を求めようと思った経緯などについて聞いたという。
瓜生さんから「お仕事が欲しいからとか、そういう気持ちでご信心すると言っているんじゃないの?」と私と同じように突っ込まれたが、聞いてみると全く違うという。旅行代理店を退職し、異なる業種へと転職するH君からU氏に対して、「このお寺だけは違う。できたらU氏もお数珠を求めて、信心した方がいい」という話があったというのだ。そして、U氏本人も、一番最初に妙深寺にご挨拶に来た際、偶然に私の御法門を聴聞して大変感銘してくださったとのこと。瓜生さんは早速本堂にお連れして、一緒にお看経をされ、彼の大きな声で、はっきりと唱える姿に感激したという。
私はといえば、この段階でも、まだ心底は信じられずにいたのである(どこまで疑い深いねん)。「まぁ、そうは言っても、今年の妙深寺は大きな海外団参もあるし、旅行会社の営業の方も大変なんだろうなぁ」「やるなぁ、U氏は。そこまでされるとU氏の会社に心が傾くなぁ(笑)」などと言っていたのである。
しかしながら、妙深寺では日々に寒参詣がある。その22日の朝、大広間のご供養場でお会いしたのは、一人でご供養をいただかれているU氏だった。1月、瓜生さんの御講席で彼の御本尊拝受願いについて言上させていただき、瓜生さんからもその経緯についてご披露があった。その中で、座間市に住むU氏に、寒参詣に気張りなさいとお話ししていると聞いていた。しかし、座間市から妙深寺までは2時間弱もかかるではないか。とてもじゃないが、ご信心したての、しかもちょっと変わった経緯でご信心するようになった彼には、とても無理ではないか、と思っていたのである。
ところが、彼は素晴らしい笑顔で、しかも昔からご信心に励んでおられるご信者さんであるかのようにご供養場でご供養を召し上がっているのであった。お声を掛けてみると、やはり座間からのお参詣で、もう何日も続けておられるとのこと。もちろん、会社は横浜にあるから通勤途中ということだが、三ツ沢まで来て、しかもあの心臓破りの「功徳坂(森谷吏絵ちゃん親子が数えたところによると200段ある階段)を上ってお参詣するということは大変なことだ。U氏はそれをしておられた。
「もう、朝参詣が気持ちよくなってきました。ありがたいです」とU氏。その言葉を聞いて、心から感動した。もはや、旅行会社とか何とか関係ない。ご信心を、しっかりと自分のものとして励んでおられる。そう、ご信心修行というのは遠くにあるものではなく、ごくごく身近にあるものだから。山に登ったり、峰々を歩き回ったり、滝に打たれることも必要ない。日々の生活の中で、出来る。それが本当の仏道修行だ。一時期、一瞬、特別の修行をしたって、そんな功徳はすぐに消えて無くなってしまうのだから。U氏は自分で修行をはじめ、それを我が身のものとしてくださっていた。
それにしても、先日の光薫寺の団参から、旅行代理店の方が本門佛立宗のご信心に感動し、ご信心をはじめるというケースが続いている。光薫寺の団参に九州から同行していたツアーガイドの方も、妙深寺の本堂で高祖会第一座にお参詣、その後の交流会にも参加していた。参加していたというよりも、最初は柱の陰に立ってツアーガイドとして見守っていようと思っていたようだが、みんなに声をかけられて一緒に交流していたようだ。私もお声をかけて、本門佛立宗のご信心について少しお話しした。「次に会う時は、○○旅行会社の○○さんではなく、光薫寺の○○さんとしてお会いしたいなぁ」などと笑っていた。
高祖会から数日後、信翠師から深要師に連絡があって、その方がご信心を始められたと聞いた。すごい、ありがた~い。しかも、ご家族全員で朝参詣に励んでおられるという。どんだけ~、である。
最初にも書いたとおり、旅行代理店には「団体旅行」などのセクションがあり、その中でも「宗教団体」への営業セクションもあるようである。そこでお仕事をされている方々は、毎週のように様々な宗教団体のツアーに同行する。先週は○×会の本山参り、先々週は△◇宗の団体旅行、などというように、様々な宗教団体のツアーを見ているし、そこに参加する人たちを見ているのである。
そうやって、たくさんの宗教団体を見続けている人たちが、「この宗旨は違う」「このお寺だけは違う」「ここの住職は違う」「この宗派のご信者さんは素晴らしい」「このご信心だけは、自分もやるべきだと思えた」と言ってくれていることが、どれだけ価値があるか。本当に嬉しい、素晴らしいことではないか。
一気に書き上げてしまったので、スリランカ前にちょっと疲れてしまった。でも、どうしても書いておきたかった。スリランカへの準備もしなければならないのに。若い人たちも、是非是非自分のこととして、お参詣に励み、修行を実践していただきたい。「受けるは易く、持(たも)つは難し」である。Keep chanting, keep visiting」である。
あー、ほんとーに、ありがたい。
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