豚インフルエンザ(新型インフルエンザ)が世界を怯えさせている。警戒レベルの「4」とは、極めて深刻な事態を想定して出されたものだと思う。「パンデミック」。サーズや鳥インフルエンザの時に懸念していた事態が、今年、このタイミングで訪れようとは。
いま、妙深寺では立正安国論の上奏750年を記念して、「立正安国論」の素読を開始している。老若男女が集って、何とか一度でも立正安国論を通読していただきたいと思って開始した。毎回、原文の書き下しと現代語訳をプリントして配り、9~10回の講座として続けていこうと思っている。今月は第2段の拝読だった。
天下が乱れていく原因、自然界と人間界のバランスが失われ、人々が苦しんでいる原因について明らかにされて行くのだが、あらためて拝読していくと、お祖師さまは努めて「自説」を控え、そこに展開せず、とにかく御仏の御経文を出して、文証を尊んでおられる姿勢を学ばせていただく。「私はこう思う」ということを控えておられるのだ。空海・弘法大師の姿勢と全く異なると思う。これが、「ザ・仏教」といわれる原点。お祖師さまほど、御仏のお経文の全てを尊び、そこをしっかりといただいた上で、御仏の御本意を導き出された。それも、能所・勝劣に迷って経文の山に埋もれてしまった人々に御仏の真意を届け明らかにする、上行菩薩としての使命であられたのだが。
今回の段は、特に文証としての御経文が引かれている。ほぼ、今回通読した部分すべてが御経文であり、お祖師さまのコメントは最後の数行である。そこに挙げられた御経文は、明確に世相が悪化する原因を述べられている。よく、他宗から批判されるが、これは日蓮聖人(お祖師さま)の個人的な見解ではない。御経文に説かれるところなのである。
「客(きゃく)の曰(いわ)く、天下(てんか)の災(わざわい)、国中(こくちゅう)の難(なん)、余(よ)独(ひと)り歎(なげ)くに非(あら)ず、衆(しゅ)、皆(みな)悲(かな)しむ。今(いま)、蘭室(らんしつ)に入(いり)て初(はじ)めて芳詞(ほうし)を承(うけたまわ)るに、神聖(しんせい)去(さ)り辞(じ)し災難(さいなん)並(なら)び起(おこ)るとは何(いずれ)の経(きょう)に出(い)でたるや、その証拠(しょうこ)を聞(き)かん。
主人(しゅじん)の曰(いわ)く、その文(もん)、繁多(はんた)にしてその証(しょう)、弘博(こうはく)なり。」
ここから、御経文が引かれていくのだが、今回拝読した人たちの多くが感じたように、いま報道されているパンデミックが、やはり750年正当の年にあたって「正法を護持しないために、守護の諸天善神がこの世界を離れて、三災七難が起こる」という部分に符合して捉えられる。
薬師経「国民の間に疫病が流行する難、外国からの侵略されるという難、国内に戦乱が起こる難、星の運行が変異する難、日蝕や月蝕で太陽や月の光が失われる難、時ならぬ暴風雨が起こる難、旱魃(かんばつ)が起こる難の七つの災難があるであろう」
大集経「一つには飢饉、二つには国の内外に起こる戦乱、三つには疫病が広く国内に蔓延することである。そして、一切の善神はその国を捨て去り、その国の人民は国王の命令に従わず、国の秩序は乱れ、常に隣国から侵略され続けるであろう。」
あくまで、これらは御経の中にある御文である。再々度になるが、これはお祖師さまの個人的な見解ではない。いま、さまざまな懸念すべき事態の中で、やはり一人一人の心を、正法に沿って正してゆくことが求められていると思う。対処療法ではなく、それが失われた世の秩序を取り戻すために欠かせない本質的な療法であると思う。
不幸中の幸いと言えるか分からないが、未だメキシコ以外での死者は出ていない。弱毒性との見解も出ており、極端な反応は控えるべき。正しい情報の下に、うがいや手洗いをしっかりとする以外にない。
しかし、このタイミングで起きていることに、気づくべきだ。サインに違いない。
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