パシュパティナート、バシュバテイナタ(Pashupatinath)は、カトマンズにあるシヴァ神を祭るネパール最大のヒンドゥー教寺院。バグマティ川の川岸に建ち、1979年世界遺産に登録された「カトマンズ盆地」を構成する一つ。
シヴァが滞在したとの言い伝えのあるこの地は、はるか1500年以上も昔から巡礼の地となっており、インド大陸四大シヴァ寺院の一つにも数えられ、近年までヒンドゥー教が国教であったネパールでは最高の聖なる地であり、ネパール国内のみならずインドなど海外からのサドゥや巡礼者が数多く訪問する聖地になっている。
寺が面しているバグマティ川には、隣接した火葬台を複数備える火葬場があり、灰は川に流される。バグマティ川は、ヒンズーの聖地である、インドのバラーナシを流れるガンジス河に通ずる支流にあたるため、その聖なる水で遺体を清めガートで荼毘に付せば母なる大河ガンガーへと戻ってゆくと考えられている。ゆえに、遺灰をこの川に流すのがネパールのヒンズー教徒の願望であり、輪廻転生を信じ墓を作らない習慣のヒンドゥー教徒にとって、この方法が理想的な死の形とされる。バグマティ川の中では火葬が行われている脇で身体を清める者もあれば、洗濯をする女の姿も見受けられる。位の高いものほど上流の火葬台で焼かれる。バグマティ川に架かる橋上は、火葬の最高の見物ポイントになっている。
パシュパティナート寺院はヒンズー教徒以外は立ち入れないが、火葬場は入場料を払えば観光客も立ち入れ撮影も自由である。終日立ち込めるカトマンズの霧は火葬場の煙であるとさえ言われている。魂が天上へ帰る場所にふさわしく、すぐそばの丘に登れば7000 m級のアンナプルナをはじめとするヒマラヤ山脈がはるかに聳え立つ。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
人間が荼毘に付されていく姿を淡々と眺める。多くの説法を聴くよりもこの様子を見つめることで人生観が変わる人が多いともいう。原始仏教教団ではひたすら遺体を眺めるだけという修行があったという。自分の死を当事者として受け止める大事は日蓮聖人の「先ず臨終の事を習うて後に他事を習うべし」という御法門に通じる。
インドの大河に隣接するバラナシ(ベナレス・ヴァーラーナシー)と異なり、静かに淡々と行われてゆく葬送の儀式。オイルの満たされた遺体の口に点火することにより、魂は天に昇ってゆくと信じられている。遺灰はある意味で乱暴に水量の少ない川に落とされてゆく。その遺灰を惜しみ眺める者はない。
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