2009年12月18日金曜日

筋の通った男の言葉

 昨日は午前中に書斎でウェブ会議。京都と横浜を結んで参加させていただきました。
 本来は、細かな資料もありますし、面会の予定もありましたのでface to faceの必要がありましたが、今回は申し訳ありませんが失礼しました。しかし、少しの時間でしたが有意義な会議が出来たと思います。
 昨夜と今日、妙深寺でコツコツとご奉公してくださってきた大切なご信者さんのお通夜と告別式のご奉公をさせていただきました。93才で帰寂されるまで、初代日博上人から先住、そして小僧の私までお給仕の誠を尽くしてくださいました。真っ白い、穏やかなお顔でした。ご家族が新横浜の式場を借りられて、盛大にお見送りが出来ました。ありがとうございます。
 大きな大きなホールでしたが、私の前にお焼香台が並べられており、私がお焼香させていただいた後にご家族、そして参列くださった大勢の方々も祭壇近くの焼香台まで出て、霊前へお焼香、弔主へご挨拶、という流れでした。
 先日、岩城さんのお宅でのお話を思い出しました。岩城さんはお父さまの葬儀の時のことをお話になり、みんなで当時を振り返っていました。そのお話が、本当にありがたく、筋の通った男の人というのは、ご信心があるとかないとか、知っているとか知らないとか、そういうことではないんだなぁと、頭の下がる思いでした。
 楽しくお話をしている中で、唐突に岩城さんが、「ある古い友人が、せっかく行ったのに顔も見れなかった。ありゃ、どーなんだ、と言われたんだ」とお話になりました。それを聞いてドキッとしました。妙深寺での葬儀で何かトラブルがあったのかな。住職として心配になります。
 そりゃそうです。岩城さんほどの方ですからお仕事の関係で大変大勢の参列者があることが予想されました。「妙深寺で」ということになりましたが、東京からも遠いですし、会場は限られたスペースです。ご依頼を受けた私も色々と頭を抱えるような思いでした。しかも、大切なお父さまをお見送りするご回向の法要です。単なるセレモニーではなく、常日頃お教えいただいている仏教の筋、ご信心の筋も通させていただきたい。しかし、同時に、参列の方々にも失礼のないようにしなければなりません。
 大勢の参列者が予想されましたが、弔主の岩城さんをはじめご家族は、何より御本尊に向かい、お父さまを前にして御題目をお唱えいただくことが第一義。このことをお伝えして、そのように奉修させていただいたのでした。ですから、岩城さんは参列者にご挨拶できず、それをご友人に指摘され、困ってしまったのではないか、と思いました。
 そう考えていると、続けて岩城さんが「だから、俺は、冗談じゃない、と言ったんだ。お前、何のために来たんだ。俺は、大事な父親のために、しっかり、別れを惜しみたい、弔いたい。それを、なにもお前の顔を見るために通夜や葬式をやってんじゃない。だったら来るな。そう言った。それ以来、もう付き合いがなくなっちゃったよ。でも、俺は本当にそう思うよ。全然かまわない」とお話になりました。本当に、このお話には、感激しました。そうです、そのとおりです。
 もちろん、参列の方々を蔑ろにしてもいいということを言っておられたのではありません。大切なことはなにか。それを知る人、知らない人がいるということです。その「筋」を知るということが大切で、それは「筋」の通った人にしか分からないのではないか。筋の通った男には、自然と分かるものなのではないか、と思いました。やはり、すごい方だと思いました。
 セレモニーだけでやっているというのでは意味がありません。本当のお通夜、告別式というもの。そこに一貫して流れる、本当の仏教、信仰がなければなりません。本当に、このお話には感激しました。昨日と今日のご奉公でも、ご家族が一緒に御題目をお唱えし、声を合わせてお見送りしてくださっていたことが嬉しかったです。
 本当に、ありがたい。ありがとうございます。

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