ABSOLUTE PEACE
トランクの中の日本~戦争、平和、そして仏教~
NAGASAKI BEYOND
京都佛立ミュージアム 館長 長松清潤
1945年8月、長い戦争の果てに、広島と長崎に原子力爆弾が投下され、人類は史上最大の殺戮を目の当たりにしました。被爆地は地獄と化し、多くの人が愛する人を失いました。
幸い、第二次世界大戦後、このあまりにも悲惨な経験から核兵器を使用した戦争は起きていません。しかし世界各地で戦争は止むことなく、ついにロシアはウクライナにおける核兵器の使用も示唆しています。
21世紀。IT技術の進歩は世界をフラットにしました。しかし、人類は一つになるどころか、逆に分断と対立を深めています。欧州で起きている戦争はその顕著な実例です。
私たちは今こそ長崎原爆の投下直後に撮影された幼い兄弟を中心とした写真展を開催すべきと確信いたしました。この兄弟の写真は世界遺産に匹敵する価値と力があると信じています。この写真の持つ無言の真理と愛を感じていただきたい。
そして、何よりも私たちの写真展は撮影者・ジョー・オダネル氏の心の変遷を追体験していただくものです。敵愾心に燃えて日本にやってきた彼は、多くの日本人と触れ合い、被爆者と面談し、長崎の爆心地で幼い兄弟と出会った頃に別の心境に到達していました。
「敵と味方の境界線は幻覚や妄想に近いものだ。」
私たちはここに仏陀の教えに通じる真理があると考えます。
仏教は人間の真の自由を説きます。多くの人が常識や政治的なプロパガンダや宗教によって思考や価値観を限定される中、仏陀はそれらの呪縛から逃れて人間性と生命の尊厳に目覚めることを教えています。
ジョー・オダネル氏が敵と味方の境界は幻想に過ぎないと気付いたことこそ、戦争と平和を考える上で最も重要な点であると思われます。
仏教では人間の中にこそ仏や菩薩、鬼や悪魔がいるとします。仏陀はそれを可能性と見、危うさ、恐ろしさと見ました。つまり人間は菩薩にも悪魔にもなるのです。
この写真展を通じて、死んだ弟を背負う少年の姿を心に刻み、敵と味方の境界が幻覚や幻想に過ぎないことを知っていただきたいと思います。
戦争は何ももたらしません。勝利の喜びも幻想であり、子どもたちに禍根を残すのみです。負の連鎖が彼らの未来を呪縛します。
ジョー・オダネル氏は次のような言葉を残しました。
「歴史は繰り返すと言うが、繰り返してはいけない歴史もあるはずだ」
絶対の平和を訴える。過去から現在、現在から未来、あらゆる方向から、ABSOLUTE PEACEを求めるべきです。今こそ私たちの価値観を進化させる時であり、進化できると信じます。
幻覚や幻想を離れて真の自由を獲得し、人間性に目覚めて平和を追求、実現しましょう。
ABSOLUTE PEACE 『NAGASAKI BEYOND トランクの中の日本 ~戦争、平和、仏教〜』の開催にあたり、リミニ カートゥンクラブ、イッショニ サンマリノ ジャッポーネ文化協会をはじめ、ご協力いただいた全ての皆さまに心から感謝申し上げます。
ありがとうございます。
京都佛立ミュージアム 館長 長松清潤
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