「火に入る者を助けんとするには共に火に入り。水におぼるゝ者を救はんとするには、共に水に入て救ふなり。高祖も此の如く、乃至、仏一切衆生をすくはんが為に浄土をすてて娑婆世界に入り来たり給ふ。」
「さればとて、きのうけふ法華経を信じそめぬる身は、漸く火中水中を逃れいでたる身のみにして、我はたすかりつれど人をたすくる力なし」
「此の位の信者は、追々信心口唱して、法門をも一句二句聞きおぼえて、己が教化を蒙りたる仏の御慈悲の事を思ひ出でて、われもかやうにして謗法の火の中を逃れたり、かやうにして御利益は蒙りたりと人にも語り、力に応じて慈悲をさきとして深切に人にさとし、水の中、火の中を出さんと心がけたるが、男子も女子も随力演説と云ふ経文の如く也」
この御指南では、自分も救い出されたばかりであれば、自分は助かったけれど、人を助ける力はとてもじゃないけどありません、という人もいるだろう、とお示しです。
その上で、そのような人は、まず、お看経に精を出して、お参詣に気張って、御法門聴聞を重ねて、
「われもかやうにして謗法の火の中を逃れたり、かやうにして御利益は蒙りたりと人にも語り、力に応じて慈悲をさきとして深切に人にさとし、」
というご奉公に努めなさい、とお示し。
「学文は下根、折伏は臆病、人はたすけたし。如何せんと云ふに、信心経力御利生即無難の折伏也」扇全十巻一四七頁
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