2018年1月6日土曜日

『新しい時代の生きたお寺へ』 妙深寺報 平成30年1月号 巻頭言


本年からちょうど150年前、日本は一大変革の時を迎えました。それは265年間続いた社会体制がひっくり返ったということです。


慶応3年12月9日(西暦1868年1月3日)、王政復古の大号令が発布され、徳川幕府は廃絶、新政府の樹立が宣言されました。約1ヶ月後、京都の鳥羽・伏見で戦端が開かれ、戊辰戦争が始まります。混乱の中、明治への改元は9月8日、西暦1868年10月23日に行われました。


どれだけの人びとがこの変革に備えていたか分かりません。一般の庶民にはなかなか実感が湧かず、当初は混乱も少なかったようです。むしろ彼らは閉塞感の溢れた社会の変革を歓迎していました。


しかし、封建制度の中で地位や収入を保証されていた層は大打撃を受けます。261の藩は解体。藩主も家臣もその家族も、会社が倒産、セーフティーネットなしで世間の荒波に放り出されてゆくのと同じような状況に置かれました。


そして、平成30年。私たちも時代の大きな転換点におります。


天皇陛下のご退位と譲位が閣議決定され、その日は平成31年(2019)4月30日と定められました。翌5月1日、「平成」は終わり、新元号に改元されます。まさに平成という時代、約30年の一時代が幕を閉じるのです。


来たるべき新しい時代は、単に元号が改められるということではなく、これまでの社会がひっくり返るほどの根本的な大変革の時代となるでしょう。


AI(人工知能)やロボット、インターネットとあらゆる「モノ」をつなげる「IoT」は本格的に社会を席巻し始めていますし、この技術革新を「第四次産業革命」と呼ぶ人もいます。


経済の生産性や私たちの暮らしが劇的に向上すると言われる一方、自動運転技術の確立により、2025年前後、日本国内で123万人のドライバーが大量失業危機を迎えるという衝撃的なレポートもあり、今後十数年で人類の90%の仕事が奪われるか、転職を余儀なくされるという予想もあります。


人びとの暮らしも着実に変化をしてきました。平成の初めの頃から比べると共働き世帯数は倍増し、完全に逆転しています。これからさらに一人ひとりの生活が変わってゆくと思うと目が眩むようです。


しかし、立ち止まっているわけにはいきません。どれだけ世界が変わっても、人間の抱える苦しみや悩みが変わることはありません。人間がいる限り真実の仏教の灯火が必要です。その灯火で心の闇を照らしてゆかなければなりません。


佛立開導日扇聖人の御教歌。

「開化して世はあらたまの  はるになれり 旧弊人の  こまる顔見よ」


大変革の時代を生きた開導聖人は、時代の潮流を、変わってゆく人びとの暮らしを、真っ正面から受け止め、真っ先に改良し、真実の教えを伝えるべくご奉公されておられました。


「文明開化が行われ、世は改まり新しい春を迎えた。改良や新時代に対応できない旧弊人(古い習慣や考え方に囚われた者)の困った顔を見てみるがよい」


この精神。時代の先頭に立ち、新しい時代をより良くするという改革者、宗教者、信仰者の気概を、同じく時代の転換点に立つ私たちも見習うべきだと考えます。


「文明の  御代にかなへる  本門の 佛立講は  開化第一」


新しい時代を受け容れ、先頭に立つ覚悟を高らかにお詠みになった開導聖人。本門佛立宗の教講がこれを自覚し、誇りや目標とすべきことは当然のことです。


果たして、新しい時代は明るいものとなるでしょうか。むしろ、暗く、不安が募る予測ばかりです。世界の均衡が崩れて、地域紛争や戦争の危険が高まっているとさえ言われています。


しかし、私たちは積極的に自分自身を改良してゆくことによって、新しい時代を乗り越えてゆけるはずです。


明治維新の社会変革の波は開導聖人の親族にも及び、三井や小野と並ぶ豪商であった島田家は閉店を余儀なくされました。それでも開導聖人は「改良できなかった者の困った顔を見よ」と言われます。


世を恨まず、人を羨まず、率先改良すること。改良できなければ困った事態に陥ることも当然です。


時代に流されることはありません。追従する必要もありません。ただ、ご信心という軸を持ち、御本尊という鏡をいただいている者として、心の感度を上げること。逆に頑固さや怠慢の中に留まっていることなど許されないと思うのです。


日本を代表する経営コンサルタントの一人、大前研一氏の至言に次のようなものがあります。


「人間が変わる方法は三つしかない。一つ目は時間配分を変えること。二つ目は住む場所を変えること。三つ目は付き合う人を変えること。どれかひとつだけ選ぶとしたら時間配分を変えることが最も効果的である。」


人は「決意」を新たにするだけでは変われません。アクションを変え、環境を変えなければ変われないのです。


新しい時代を前に、自分が選択している時間の配分を、心を磨く「信心修行」を中心とした時間配分に切り替えてみていただきたい。


具体的にアクションを変える。時間配分を変えて、実行してみる。年頭からの寒参詣は、時間配分を変える大きなチャンスとなります。それは即ちこれからの自分の人生を変えることになるはずです。


新しい時代に、困った顔をする人は誰か。それは変われない人、改良できない人です。新しい時代を前に、改良を決意し実行すればピンチはチャンスに変わります。人のせいにせず、時代のせいにもしない。今生人界の最後の最後まで挑戦し続ける人、改良し続ける人が佛立教講であり、真に豊かな人生を送る人だと確信しています。


厳しい時代だからこそ、家族を大切に、家族とご信心を語り合い、法灯相続を成就して参りましょう。そして、揺るぎない心、ご信心で人とつながり、人びとの力となれるよう、生き抜いて参りましょう。


改元前夜。新しい時代の生きたお寺を目指して妙深寺はスタートいたします。


ご信心のある人たちに囲まれて、心のすみかを変えて、人生の時間配分を功徳の積める信行ご奉公に切り替えて、みんなで厳しい時代を乗り越えてゆきたい。


今年一年、全員がご信心の自己ベスト更新を目指して、改良精進してゆきましょう!

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