2010年10月31日日曜日

記憶のなかの部屋

わたしのなかに黒い塊があります。
触れようとすると、逃げます。
わたしが知らん振りをしていると
きちんと心臓のあたりにきて、
わたしの一部始終の動作を見ています。
心臓は躰で一番大事なところだから、
そこに塊が居座っているときは、
わたしは、何をしていても安心していられます。
この塊を造りだしたのはもちろんわたしです。
だから、矛盾していますが、とても孤独でした。
皆が、口にする淋しさではありません。
でも、あなたにあってから、この塊が完全に姿をくらましたのです。
わたしは、でも探すつもりはありません。

ユリ
1953・6

小説「記憶のなかの部屋」の第一章より。ユリからポールへの手紙です。

この部分だけ読んでも、素晴らしい。

是非とも、買って、読んでいただきたいです。

0 件のコメント:

Swallowtail Butterflyと横浜ラグーン

  インフルエンザが猛威を振るっています。コロナ禍の時と同様に、うがい、手洗い、移らないように、移さないように、お気をつけいただければと思います。特に、ご高齢の方々をお守りしたいです。 11月26日の「横浜ラグーン」をお届けいたします。今週は皆さまからのお便りにお答えました。ラジ...