2010年10月3日日曜日

人生の勝利 (補足)

先日、ジョン・レノン・ミュージアムの帰りに書かせていただいた記事「人生の勝利」に、コメントをいただきました。返信が遅くなって、申し訳ありません。

「一晩、わるいアタマで考えてみましたが、人生に勝ち負けは、やはりないとおもいます。迷いは、むしろ勝ち負けがあるという錯誤から生まれるようにおもえます。それは小生ら信者のみならず、誓願得度した教務さんとて同じではありませんか。もうすこしわかりやすく説いてください。納得がゆくかもしれません。」

すいません、分かりにくくて。もう少しだけ、書かせていただきたいと思います。

ジョン・レノン・ミュージアムの最後の部屋に、彼の言葉を集めたボードがありました。その中に、「人生の勝利がなんであるかが分かった」という意味のことが書かれており、私は、仏の教え、ご信心をさせていただいている者として、心から共感し、そしてブログに掲載しました。

すなわち、「人生の勝利が何であるか、知らなければならない。それが分かった者は迷いから解放される」と書きました。とても重要なことだと思います。

勝ち負けがない世界が仏陀の世界であるというのはそのとおりで、それを娑婆世界に当てはめても綺麗なのですが、実際に凡夫の私たちが生きているのは、生存競争をはじめとする相対の世界。外界に於いても内面に於いても、相対の中にいて、優先順位を決めて、何事かを為すという選択に迫られます。

佛の教えを学ぶのに「相待妙」「絶対妙」という筋があります。相待(相対)して絶対の妙を知ります。また、絶対の妙から相待の世界に下りてゆきます。相待から絶対、絶対から相対。教弥実位弥下。

悟りの世界とは「涅槃(ニルヴァーナ)」であり、そこには争いはない、勝ち負けもない、というのは間違いではないけれど、どこか厭世的な小乗仏教、禅宗的な世捨て人の世界で、法華経本門の教えではないように思います。

娑婆に入り、娑婆の衆生を寂光へ 帰すは仏の使なりけり。

法華経本門の御法門では、常に、この娑婆が勝負、この娑婆の泥の中に飛び込んで、泥を厭わずに純白の蓮華の花を咲かせようとしますから、菩薩は凡夫と同じ姿をし、同じ生活をしているはずです。

競争の世界で生きてきて、社会的な風潮もあり、内面的な葛藤もあり、優先順位に迷って生きてきた者が、何が最も大切な生き方かに気づいた。それこそが、最も人間にとって尊い生き方だと気づいた、世間の「勝者」とは全く違うが、それこそが本当の意味の勝者である、と。

如説修行抄の「法王の一人は無勢なり。今に至りて軍やむ事なし」とあるのも、末法の娑婆世界で泥を厭わずに生きる本化の菩薩方の姿勢かと思います。
もちろん、ジョン・レノンが、そんなことを言っているとは思っていません(笑)。しかし、私は今までも「人間の本業」とか「損益分岐点」と言って書いてきたのは、このこと、こうした感覚、凡夫の私たちでも到達する「分岐点」があるということだった、この「人生の勝利」も全く同じことを言っている、と思いました。

そして、ここに書いたとおり、損益分岐点を迎えた人、競争の終わらない人間世界だけれど真の勝利とは何かが分かった人は、そもそも、もう、ただの「損得」や、仰せのような低いレベルでの「勝ち負け」にこだわらず、本当の価値(勝ち)に気づいて、そこに立脚して生きるので、迷いがなくなる。

そういう意味で書きました。まだ、言葉が足りないかもしれません。申し訳ありません。

ありがとうございます。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

お忙しいなか、懇切なご説明をいただき、ありがとうございました。でも、最初のシンプルなことばが、こんどはとても難解複雑になって、さらに小生のアタマの悪さと勉強不足が、歴然となったみたいです(苦笑)。それゆえ「よくわかりました」とは、言える筈もありませんが、でも、たとえば「<人生の勝利>の「人生(life)」を「人間の叡智(wisdom)」とおきかえてみたとき、おぼろげながらニュアンスがつかめるような気がしました。凡夫を迷妄から覚ますのは仏陀の真の教え(御法)であり、それを深く認識するところに「人間の叡智」がある、深く認識できたとき、なにものにも怖れずひるまない強い心(負けない心)が生まれる、という意味なんじゃないかな、とおもいました。しかし、それとて具現実践となると大へんむつかしいことです。また、おりにふれお教えください。若いせがれ達のためにも。伊那谷

めだか さんのコメント...

有難うございます。素晴らしいやり取りで、とても興味深く拝見いたしました。とても勉強になります。 照隆寺の一信者。

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