2011年11月21日月曜日

「御礼の言葉にかえて」

「御礼の言葉にかえて」

 ありがとうございます。

 秋の深みゆく寒露の頃、妙深寺教講の皆さまに於かれては、菩薩の誓いを胸に、日々ご健勝のことと心より随喜申し上げます。

 過日、晴天の本山御宝前、佛立開導日扇聖人の御尊前に於いて、上座講師叙任の栄を賜りました。栄えある妙深寺の歴史、先住日爽上人のご遷化、今日に至る皆さまのご奉公を想い浮かべながら当日を迎えさせていただきました。

 本年開始の「菩薩の建財ご有志」には前回のご奉公を上回るご奉納をいただき、東日本大震災の発生や支援活動、義援金の勧募もあり、お祝いを辞退して参りましたが、京都まで大変多くのお参詣を賜り、申し訳なく、言葉もありません。ただただ、妙深寺教講の皆さまに感謝しております。

 思い返せば、平成十二年六月、恩師・松風院日爽上人のご遷化に伴い、未熟な小僧が、横浜 妙深寺、由緒寺院 京都 長松寺の住職を継承することとなり、現御講有・小山日誠上人をはじめ、末弟に加えていただきました師匠・鈴江日原上人、後見・松本日延化主、尊兄・清水日清化主、妙深寺所属の教務諸師、ご信者各位に、心労やご心配をおかけしながら、先師上人方のお徳を汚さぬようにと、無我夢中でご弘通ご奉公に努めて参りました。

 このような日を迎えられましたことは、ご指導をいただきました皆さまのお陰と思い、感謝の言葉も見つかりません。ただ、ご恩に報い奉るため、今後も死身弘法の想いを以て全身全霊で佛立教務道を歩んで参りたいと存念しております。

 この度の昇叙に際し、院日号を「本化院日桜」と頂戴しました。愚息・愚弟の小僧に、一大現証の御利益を以て佛立信心をお教えくださったのは平成五年四月三日、満開の桜の下で起こった先住日爽上人のお怪我でありました。その現証を「佛立魂」と心得、先住が愛された妙深寺境内の桜を「本化桜」と呼び、その随喜を見失わぬよう、今日まで国内外のご弘通ご奉公に挺身して参りました。

 日爽上人は、
「散りますと
 花のいふのを 聞いてのめ」
という開導聖人の御教句を心から愛しておられました。

 門祖日隆聖人は、
「ちりちり常住、さくさく常住」
とお示しになられて、「無常の中の永遠」「永遠の中の無常」をお教えくださっております。

 長松の「松」は常緑の高木として永遠を表し、「桜」の花は無常を表すといいます。古来、松と桜は「松桜図」等に見られるように人々から愛でられて参りました。

 先住のお怪我は、明日をも知れぬ無常の厳しさと、御仏の永遠の命・上行所伝の御題目の尊さを教えてくださいました。

 小僧清潤、今日までの自身の行軌を振り返り、この一大現証の御利益、松と桜の縁、その教戒を以てその名とさせていただく以外にないと確信いたしました。

 図らずも桜は日本の国花です。京都生まれの横浜育ち。頭の中にも血肉にも西も東も御座いません。東も西も、国境も民族をも超えて、今後さらに国内外、世界各国に飛翔して、「本化上行の流類」に数えていただけるよう、一天四海皆帰妙法の祖願達成、広宣流布のご弘通ご奉公に邁進する所存です。

 誠に勿体ないことに、私たちは「本化上行菩薩・高祖日蓮大菩薩」の御弟子旦那の一分に加えていただいていると申します。その果報の尊さや大きさは、比べることも計ることも出来ません。

 お祖師さまは次のようにお諭しになられています。

「只南無妙法蓮華経、釈迦、多宝、上行菩薩血脈相承と修行し給へ。火は焼き照らすを以て行と為し、水は垢穢を浄むるを以て行と為し、風は塵埃を払ふを以て行と為し、又人畜、草木の為に魂となるを以て行と為す。大地は草木を生ずるを以て行と為し、天は潤すを以て行と為す。妙法蓮華経の五字も又是の如し、本化地涌の利益是れなり。
 上行菩薩末法今の時、此の法門を弘めんが為に御出現これあるべき由、経文には見え候へども如何が候やらん。上行菩薩出現すとやせん。出現せずとやせん。日蓮先づ粗弘め候なり。
 相構へ相構へて強盛の大信力を致して、南無妙法蓮華経臨終正念と祈念し給へ。生死一大事の血脈、此れより外に全く求むることなかれ。煩悩即菩提、生死即涅槃とは是なり。信心の血脈なくんば法華経を持つとも無益なり。委細の旨又又申すべく候。恐恐謹言」(生死一大事血脈鈔)

「故に知んぬ。天台弘通の所化の機は在世帯権の円機の如し。本化弘通の所化の機は法華本門の直機なり」(立正観鈔)

「所謂時を論ずれば正像末、教を論ずれば小大、偏円、権実、顕密也。国を論ずれば中・辺の両国、機を論ずれば已逆と未逆と已謗と未謗と、師を論ずれば凡師と聖師と二乗と菩薩と、他方と此土と迹化と本化となり」(曽谷入道殿許御書)

「此日蓮は本化の一分なれば盛に本門の事の分を弘むべし」(太田左衛門尉御返事)

 混迷の度を深める現代にあって、本門佛立宗、そして、妙深寺こそ、生きた仏教を継承する宗団であり、生きたお寺であり、生きた仏教徒が集う場所であることを高らかに宣言し、証明してゆきたいと存じます。東日本大震災や世界恐慌によって人々の苦悩が増しているとしても、そうした人々を救い導くのが真実の仏教であり、仏教徒、佛立信徒であるはずです。

 一人が見る夢はただの夢ですが、これをみんなで見ることが出来たなら必ず現実になります。妙深寺教講の先頭に立って末法悪世の中に飛び込み、ご奉公させていただきたいと存じます。どうか、今後とも遠慮なく使ってくださいますよう、よろしくお願いいたします。

 つきましては、上座講師に叙任された今日より、終生一介の沙弥僧に甘んじた開導聖人のご遺志を継承し、袈裟衣でも僧階でもなく、ご弘通の姿、実践の中に佛立教務としての真骨頂があると固く信じ、御本意に叶うよう精進いたしますことをお誓い申し上げます。

 末筆となりましたが、皆々さまのご健勝とご繁栄を心より祈念申し上げます。

 ありがとうございます。合掌、

 平成二十三年 秋

 長松清潤 拝、

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