2011年1月1日土曜日

妙深寺報 平成23年1月号

 平成23年度1月号、妙深寺報です。
 今年の干支は「うさぎ」なのですね。先住松風院日爽上人は卯年のお生まれで、私たち家族や親しい者はウサギを見ると先住を思い出すほどです。家の中にも、うさぎの描かれたお皿や置物があります。
 ピンク色の寺報の表紙。とっても素敵です。先の見えない不安が広がる社会の中で、ピンク色の妙深寺報を見て、少しでも安心し、あたたかい気持ちになっていただけたらと思います。そして、本当に不安の少ない、ゆるぎないご信心で困難な時代を乗り越えて欲しいと思います。

 つくづく、私たちは右肩下がりの『下り坂社会』を生きていると痛感します。大学を卒業したのが平成4年(1992年)でした。バブルが崩壊した後の社会。「失われた10年(lost decade)」として知られています。バブル崩壊後、1990年代の日本が政治的にも経済的にも改革に対しても停滞した時代に社会に出たことになります。
 いま、バブル期の感覚から抜け切れていない方々との感覚に決定的な違和感を覚えます。

 その世代の方々は、「右肩上がり」の社会の中で、人生の多くを過ごしてこられました。日本という国家も、人々も、宗門も、この時代に於いて成し遂げたもの、得られたもの、挙げられた成果があります。その恩恵の中に今があります。
 しかし、追い風を受けた為された施策には無駄も多く、追い風を受けていたからこそ成功した、何とか成果が上がった、という側面があることは忘れてはいけません。時代は厳しく変化しているのです。
 危機感のない漠然とした感覚、奇妙な余裕や珍妙な自信をもった発言を聞いていると、その時代錯誤というか、ずれた感覚に愕然とすることがあります。「いい時代に育ったのだな」と閨房に育った人に呆れたり、哀れんだりする感覚が浮かびます。

 そうした施策について、実は全く理解できません。社会的な面でもそうですが、ご奉公の上で浄財を投じる大きな事業についても、宗務員として施策に従ってご奉公を進める外ありませんが、実際には違和感を抱きながらご奉公することになります。「下り坂社会」で生きる私たちの感覚からは想像もつかない「緩いこと」が多いです。

 とにかく、今年は、様々な分野で大きな分水嶺を迎えるでしょう。

 若者だけが愚かで浅慮だと批判することは出来ません。むしろ「あほの長生き娑婆ふさげ」という御指南の意味を掘り下げるべきです。将来に問題を先送りする施策、浅はかで拙速な施策に、年齢や地位は関係ない。もっと、こうしたことが客観的に論じられるべきでしょう。

 いずれにしても、未来の幸福のために、今年はそれぞれが自分の眼で見て、自分の耳で聞いて、自分の心で、自分の信心で、判断すべき時でしょう。誰かのせいにして済む時代ではないのです。そういう余裕ある時代は終わったのです。

 分水嶺にある覚悟を。本気でいきましょう。

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