2009年1月21日水曜日

オバマ氏の就任演説

 1月20日、アメリカに新大統領が誕生した。
 アフリカ系アメリカ人、つまり黒人としては初の米国大統領である。当初、私はオバマ氏が大統領になることなどあり得ないと考えていた。そこまでリベラルな国であるとは信じていなかったからだ。自分の息子も米国民として生きる権利を得ていながら、近年のアメリカの傲慢さに嫌気が差し、ついには米国民を傲慢で保守的であると決めつけていたからかも知れない。
 ブッシュを選んだのもアメリカ国民であり、オバマ氏を選んだのもアメリカ国民である。オバマ氏を選べる素晴らしさをアメリカに感じると同時に、ブッシュを選ぶアメリカを危惧する。彼は団結を呼びかけているが、政治とは選択の連続である。誰かに支持されることを行い、支持されないことも行う必要に迫られる。それは、万民に期待される政治は徐々に万民の支持を失っていくことを意味する。多くの支持を得ている現在、万民に応えられる真の政治とは何かを追求する「旅(journey)」になるだろう。彼には、類い希な雄弁の才を持って、常に国民、あるいは世界市民と向き合い、それらとの対話を維持し、一部の人々に強いる忍耐を受け入れるよう説得を試みて欲しい。47才のリーダーシップに心から期待したい。
 もちろん、全幅の期待を寄せているわけではない。世界が歓喜した昨夜の就任式には、約4,100万ドルの献金が集まった。 大統領選の献金と同じように、大企業やロビイストの影響力を排除しようと試みてきたオバマ氏だが、実際には金融・保険・不動産業界を筆頭に、小売業界から広告業界まで幅広く献金を集めており、ロビイストからも300万ドルほど受け取っているという。
 選挙戦に於いて既に約600億円以上も出費し、就任式に41億円もの資金を使うアメリカ。それは、国威の高揚を目指し、危機を乗り越えるために必要な国家的なマーケティング・プロセスとも受け取れる。その背後に、やはり大企業からの献金と思惑がうごめいていることを注視しなければならない。国威を高揚させ、世界にアメリカのメッセージを発信し、国民に団結と義務を呼びかけた背後に、である。政治が、国民や大統領によって動かされているものではなく、金の掛かる政治という世界の背後で献金を続ける企業によって動かされている、動かされざるを得ないということにも、監視の目を光らせて欲しい。
 演説の中で彼が呼び上げた宗教名の中に「Buddhism(仏教)」や「Buddhist(仏教徒)」が無かったことを、仏教徒や仏教に関わる者は恥じるべきではないか。彼は「われわれはキリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教、ヒンズー教、そして無信仰の人々の国である」と言った。いつから仏教はヒンドゥー教に吸収されたのか?世界三大宗教の中の一翼を担ってきた仏教が、この世界から期待される米国新大統領の就任演説から外されてることに、何とも歯がゆいものを感じている。もちろん、それらと肩を並べることだけがいいのではない。なぜなら、真実の仏教は、相対の世界で各宗教と対峙するものではなく、彼が演説で述べた、本当の団結、本当の平等、本当の普遍的な価値と義務を与えるものなのだから。
 つまり、真実の仏教とは、彼の目指す世界の先にあるものに違いない。新文明と新文明生活をもたらすために、新しいパラダイムは真実の仏教から学ぶべきものだと思う。それを世界最強のリーダーに認識してもらえるように、地道なご奉公を続けてゆきたい。

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