2011年5月16日月曜日

ブッダの物語

ヒマラヤの山のふもとを流れるローヒニー河のほとりに、釈迦族の都カピラヴァスツがあった。その王スッドーダナは、そこに城を築き、善政をしき、民衆は喜び従っていた。

妃、マーヤ夫人は同じ釈迦族の一族でコーリヤ族とよばれるデーヴァダハ城の姫で、王の従妹にあたっていた。

結婚の後、ながく子に恵まれず、二十幾年の歳月の後、ある夜、白象が右わきから胎内に入る夢を見て懐妊した。王の一族をはじめ国民ひとしく指折り数えて王子の出生を待ちわびたが、臨月近く、妃は国の習慣に従って生家に帰ろうとし、その途中ルンビニ園に休息した。

折りから春の陽はうららかに、アショーカの花はうるわしく咲きにおっていた。妃は右手をあげてその枝を手折ろうとし、そのせつなに王子を生んだ。天地は喜びの声をあげて母と子を祝福した。ときに四月八日(北伝仏教による)であった。

スッドーダナ王の喜びはたとえようがなく、一切の願いが成就したという意味のシッダルタという名を王子に与えた。

しかし、喜びの裏には哀しみもあった。マーヤ夫人は間もなくこの世を去り、太子は以後、夫人の妹マハープラジャーパティによって養育された。

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