2013年12月19日木曜日

焦げ跡

今月の戸塚教区の御講席は、白川さんのお宅でした。

約2年9ヶ月前、2011年3月11日の、あの時、私はこの白川さんのお宅におりました。

三席目の14時から始まった教区御講で、ちょうどお看経の終わる45分過ぎのことでした。

お看経の次は日月の御文の言上となりますから、妙講一座のそのページを開いていました。

高層階にある白川さんのお宅は、本当に、激しい揺れに襲われました。

突き上げるような、身体が横に飛ぶような、そんな揺れが続きました。

御戒壇が倒れそうになり、立ち上がって押さえました。

ご宝前のお道具が落ちそうで、お下ろししました。

小さな吊り灯籠が揺れて、ガッチャンガッチャンと激しく両脇にぶつかっていました。

ふと、窓の外を見たのを、鮮明に覚えています。

身体を、縦に、横に、揺さぶられながら、この空の下で、同じようにこの大地震に遭っている方々がいるんだ、と思っていました。

恐ろしさ、何ともいえない、大自然の巨大さ、自分たちの無力さを、感じました。

今月、あの時からすれば初めて白川さんのお宅に入り、あの日のことを鮮明に思い出しました。

ご宝前。吊り灯籠が付けた傷。

妙講一座の、日月の御文についた、焼け跡。

あの時、お線香が倒れて、開いていた日月の御文のページに、焦げ跡を付けました。

あの日のことを忘れないように、ずっと同じ妙講一座を使わせていただいています。

御講の度に、日月の御文をお唱えするたびに、あの日のことを思い出します。

そして、白川さんのお宅の窓から見た景色。

何とも言えない気持ちでした。

御法さまは、本当にありがたく、時に恐ろしくもあります。

あの時のことを振り返りながら御講を勤め、御法門をさせていただいていた途中、大きく部屋が揺れたのです。

まさか。

そう、何と千葉県で震度4の地震。あの時と同じように、高層階にある白川さんのお宅がグラグラ、グラグラと揺れました。

背中に戦慄が走りました。

長く揺れました。

久しぶりに強く揺れました。

あの日の記憶が、恐怖が、ドバッと胸に浮かんできました。

仏教に偶然はない。必然。

この日、この場所、このタイミングで、見せるどころか、体験させていただけたということ。

2011年3月11日を、忘れるなと、倫理でも、道徳でもなく、観念でも、教義でもなく、体験で、現証で、教えてくださるから、有難いと思うのです。本物だと思うのです。

時が過ぎれば、忘れてしまうものです。

それが、正常性バイアスなのか、ゲシュタルト効果なのか分かりません。

しかし、多くの人が、時が経つにつれて、自分に都合よく、書き換え、置き換え、それで納得してしまう。

いいことは自分の手柄、悪いことは人のせいでは哀しいし、空しい。

「自然を恨む気持ちにはなれない」

そう教えてくれた人たちが、たくさんいました。

それでも、人は、人を恨んで、憎んで、また分裂し、中傷し、感謝すら忘れてしまう。

あの時、あの頃の気持ちを忘れて、次はないと思う。

それを、実体験させてくれた、ありがたい、あり得ない、白川さんのお宅の教区御講でした。

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