2014年9月2日火曜日

班長さん、ありがとうございます。 役中テキスト 平成26年9月1日号

 ありがとうございます。

 あっという間に季節は夏から秋となりました。毎年、そして季節毎に、「想定外」「まさか」の大災害が起きています。気候は極端から極端へ、激化の一途です。油断せず、注意するしかありません。

 お祖師さまは「末法の今の学者」の無益をご指摘です。災害や天候不順を前に、専門家の方々が原因を語っても、ほとんどが目先の原因で「本当の原因」は語っていません。そこを指摘しなければ、すべて対症療法に過ぎないはずですが、誰もきちんと向き合おうとしませんし、ほとんどの人が「専門外」と言って逃げています。

「対症療法」は別名「姑息的療法」とも呼ばれ、「根本的な対策とは離れて、表面に表れた状況に対応して物事を処理すること」です。そんな原因を聞いて納得していたら本質を見失いますし、関心を逸らすためだけの説明もあるのです。恐ろしい災害も、今や公共事業を行うための説得材料や宣伝材料になっています。

 先人が付けた名前を変えて、危険な場所を開発して売り出すのも人間の欲望の為すところです。

 津波対策として海が見えなくなるほどの超巨大な防潮堤を築き、市街地を丸ごとかさ上げすることが賢明で妥当である対策や計画であるとは思えません。

 土砂災害が起きた広島県安佐南区の一角は、古名を「八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくじあしたに)」としていたと伝えられています。古文書を確認したわけではありませんが、一説には「八木」は「八岐」と書き、「八岐大蛇(やまたのおろち)」の伝説と関連があるとされます。いずれにしても、悪路も厭わぬ蛇が落ちるほど峻険な谷が続き、土砂災害が絶えず起こるという警鐘を込めた地名が残されていたと言うのでした。

 しかし、先人たちの知恵や警鐘は伝わらず、災害現場は新興のベットタウン、駅からほんの数百メートルの場所となっていました。不動産価値の上下、既得権益の保護、大手開発業者の利益が交錯して、本当のことが語られず、本当に大切な対策は行われず、結局は一般庶民が不利益を蒙っているように感じるのです。

 手前の原因ではなく、対症療法でもなく、本質的な原因や問題、本当に有効な、根本的な対策について考えなければ、もっと危険な世の中になってゆきます。一〇〇〇ミリを超す雨が降り、土砂の津波「深層崩壊」が住宅街を呑み込むことすら予想されているのです。

 今年は8月19日が「アース・オーバーシュート・デー」と認定されました。地球が1年間で生産できる資源の量を、人類が使い切ってしまった日ということです。この日以降は全て借金となります。酸素も動植物も水産資源も、まだ4ヶ月を残して本年分を使い果たしてしまいました。

 物理学には「エネルギー保存の法則」というものがあります。何かをしたら何かに必ず影響が及ぶ。当たり前のことです。しかし、人間は空間軸としての自然が大き過ぎることと、あまりに短い時間軸しか見られないために、この法則を忘れてしまうのです。ですから、自然が勝手に猛威を振るって暴れているのではなく、その根本的な原因に私たち人間がいるということが分からないのです。

 やったことは必ず返ってきます。冥の照覧。因果の道理。これに間違いはありません。

 お祖師さまは、
「佛法と申は道理なり」
とお示しになられています。道理から外れ、当たり前のことが分からなくなる。残念ながら、それが今の世の中です。

 根本的な問題は私たちの心にあります。その間違いや過ちに気づき、実際に行動を変えてゆかなければなりません。

 実際に人間の心と行動を変えてゆくのが本当の仏教であり、事実変わるのがご信心です。ですから、お祖師さまはみんなでご信心をする以外に安穏な世界に至る道はないと明言されています。

 大きな意味で、個人から家族、家族から近隣、社会、世界の調和を取り戻すことが仏教の目的であり、取り戻せるのが本当のご信心であると確信します。

 先般、太平洋の深海の温度が上昇し続けていることが判明しました。ここ数年間、地上の温度は変化が少なかったようですが、実のところ、それは私たちの地球が、母なる海が、この急激な変化を吸収してくれていただけで、それも限界に達し、ここから本当の気候大変動が起こるというのです。本当の本当に、恐ろしいことです。

 その時に人類は生き残れるでしょうか。

 家族は大丈夫でしょうか。

 現世安穏は、ご信心でしか得られません。

 世界がぜんたい幸福になることと、個人の私の幸せは、矛盾せず一つになります。その生き方、そう確信できて生きてゆくことが、生きた成仏の姿とも言えるのですが、まず、私たち一人ひとり、身近なところから、仏教の実践、菩薩行の真似事でも、させていただかなければならないと思います。

 9月も油断なく、生きている一日一日を大切に、噛み締めて、ここにある間のご信心、させていただける喜び、できるかぎりのご奉公で、功徳を積んで参りましょう。

 ありがとうございます。

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