2019年11月24日日曜日

ローマ法王と「焼き場に立つ少年」




 ローマ法王(最近「教皇」と表記変更されたようです)が来日中です。今日は長崎を訪問したことが大きく報道されていました。
核兵器からの解放を訴えるスピーチ。現場には「焼き場に立つ少年」の写真が掲げられ、ジョー・オダネル氏のご長男と面談されたとのこと。
来日のきっかけは長崎に原子力爆弾が投下された直後に撮影された幼い兄弟の写真と紹介されています。
私たちのことは全く報道されませんが、法王の影響はすごいですね。日本のテレビやラジオは一気にジョー・オダネル氏や「焼き場に立つ少年」のことでもちきりでした。先ほどの報道番組では「トランクの中の日本」の内容まで朗読されていた。すごいことだと思います。
終戦から70年。私たちは小さなミュージアムで「トランクの中の日本 戦争、平和、そして仏教」展を開催しました。「焼き場に立つ少年」を中心とした写真展。4年前のことです。
この時、本当にたくさんの方々のご協力をいただきました。その中に天正遣欧使節団顕彰会の方がおられ、ローマ法王への献上品に私たちの企画展の資料を入れてくださいました。
ご丁寧に献上品の写真まで送ってくださいました。私が持っていた青い帯の『トランクの中の日本』や京都佛立ミュージアムの企画展のリーフレット、名刺などを入れていただきました。
この4年間、このようなことは何度も書いてきましたね。私たちは、本当の意味で宗教を超えて、この写真に注目が集まり、ハチドリのひとしずくでも、平和へ一歩でも近づけばと願っています。
私たちの企画展は、この兄弟の写真だけを取り上げたものではありませんでした。
日本上陸から帰国まで、オダネル氏の撮影した写真を見て、彼の心の変遷を追体験していただこうとしました。帰国直前、彼の心を変化を決定づけたのが、長崎の焼き場で出会った、息絶えた幼い弟を背負うこの少年だったのです。
人間が作り出す「敵」と「味方」の境界線は、妄想や幻想に過ぎないということ。私たちが考える「正義」というものすら、妄想に過ぎないのではないか。
オダネル氏の体験、焼き場に立つ少年との出会いは、このことを教えています。
私はこれこそが平和への礎であると確信しました。
私は、日本やサンマリノ共和国、世界各国でこの写真展を開催したいと考えています。
そして、「焼き場に立つ少年」の写真を、第二次世界大戦、特に原爆の悲惨さを象徴するものとして、「世界記憶遺産」に登録するために力を尽くしたい。
しかし、それだけではダメだとも思っています。この少年たちと同じような悲惨な子どもは、今でも世界中に満ちているから。
人間が作り出す「敵」と「味方」、「正義」。そうしたものの境界線が幻想であること、人間というものの愚かさと可能性を知らなければ、戦争は決して無くならない。
このボーダーを超えること、人間そのものを学ぶことが、平和への道と考えます。
とにかく、ローマ法王の来日と多くの報道、「焼き場に立つ少年」の話題が溢れる中で、このことをそっとお伝えしたいと思います。
ありがとうございます。

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